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第二次日中戦争  作者: 畠山健一
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越境作戦

 韓国陸軍第一野戦軍司令部は東部戦線から東海岸一帯を統括している。そこへ密かにスーツ姿の日本人が訪ねている。

 司令官の丁大将との会見は、副官の李中将を介して行われた。彼の父は旧日本軍の少佐で、李中将自身も日本語が堪能だった。

「竹永一等陸佐、君と手を組むかどうかは条件次第だ。丁大将が全軍を掌握するにはいくつもの障害がある」

「分かっています。その人物の情報さえ頂ければ、あとは我々が手を下します」

 竹永陸佐は、統合幕僚長の特使として、韓国軍を取り込む工作の命を帯びている。

「断っておくが、我々は中国との戦争に加担しない。邪魔をしないだけだ」

「北への道を開けて頂ければよいのです。北の敵を一掃した後で、あなた方が入ればいい。我々の最終目的は北京です」

 丁大将は大笑いした。

「これはまた、随分と威勢の良いことだ。戦力比で全く勝負にならないと思うが・・・一体その自信はどこからくるのかね?」

「正面切って戦いを挑むのは愚か者のすることです。我々は上陸軍を撃退し、反撃に転じました。そして我々は世界各国から膨大な兵器を含む、物資の供給を受けています。何故だか分かりますか?周りの連中は、勝算ある側に投資したがるものです・・・分け前を得るためにね」

 竹永は、巧みに相手の野心を呼び覚ますことへ全神経を集中した。

「朴正熙に全斗煥は、何れも軍事クーデターを見事に成功させました。しかし、朴は側近にあっけなく暗殺されました。全は死刑を逃れましたが、虐殺、汚職の汚名を着たまま全てを失いました。今は全く意味が違います。誇り高い民族は、大国の支配を拒絶し、真の統一と独立へ導く英雄を待っているのです。手を汚す役目は我々がひきうけましょう」

 李中将は竹永の言葉通りに通訳し、丁大将の顔をうかがった。丁は副官の意見を求めた。

「この男は、私が真に受けると本気で思っているのかね?」

「敵国の使者として、単身で来たわけですから・・・それなりの覚悟はあるのでしょう」

「ではここで処刑するか、中国側へ引き渡すか・・・」

 丁はピストルを取り出して言った。

「この男に伝えろ。貴様らが沈めた駆逐艦に、私の友人が乗っていたとな」

「ここで彼を撃つつもりですか?この『暗殺リスト』の十二名を彼らが請け負うと言っていますが?」

 そのリストには、いずれも親中派の実力者たちの名が記されていた。

「そんなものは見たくもない・・・君が勝手に作ったのだろう」

 李は丁大将の目の前にリストを差し出した。

「見てもらわなくては困ります・・・初めにあなたの名があるでしょう?」

 サイレンサー付きの拳銃は、丁大将の心臓へ銃弾を撃ち込んだ。

 待機していた数名の兵士が入り、遺体を速やかに運び出した。銃を撃った李中将は、リストを竹永陸佐へ手渡した。

「残り十一名だ・・・直ちに実行したまえ」


 中国の丹東は北朝鮮の新義州へ通じる橋がかかっている。劉軍団長配下の部隊がこの要衝を守っていた。

戦車に装甲車、上空を武装ヘリが旋回し、厳重な警備態勢が敷かれている。

 隊長はひっきりなしに橋を渡るコンテナトラックの行列を眺めていた。

「今日はやけに多いな・・・北はまだ戦場になっていないはずだが」

 北朝鮮の経済の動脈であるとはいえ、ここ数日は異常に交通量が増えている。

 隊長はふと、道路わきに停車している40ftコンテナのトラックに目が留まった。

「あいつは何をしている?」

「パンクしたようです」

 不審に思った隊長は部下に命じた。

「一応積荷を調べろ。密入国者が紛れ込んでいることもある」

 難民流入の監視が彼らの任務だ。十数名の中国軍兵士がトラックに近づき、コンテナを開けるよう運転手に命じた。

 運転手はなにやらわめいて拒んでいるようだった。兵士たちは構わずコンテナ後部の観音扉をこじ開けた。

 機関銃弾で兵士たちは吹き飛ばされた。中から装甲歩兵が次々飛び出している。

「敵襲!」

 異様に素早い、見慣れぬ敵兵の姿に、兵士たちは戸惑った。

「何をしている!応戦しろ!」

 隊長の命令に数百名の兵士が駆けつけた。装甲歩兵は身を潜め、正確な射撃で中国軍歩兵をなぎ倒していく。

 武装ヘリ二機が携帯誘導弾で撃墜された。既に装甲車、戦車数両が燃え上がっている。突っ込んでくる装甲歩兵に、あらゆる火器が狂ったように火を吹いている。

 壮絶な白兵戦の後、二十名の装甲歩兵隊は全滅した。この僅かな敵の攻撃で、中国軍部隊は大損害を被った。

 累々と横たわる敵味方の死体の中、隊長は一人の装甲歩兵の屍の前に立った。

「とんでもない連中だ・・・誘導ミサイルまで持っている」

 隊長は無数のコンテナトラックが、中国国内へ向かう様を呆然と眺めている・・・

 一台のトラックの敵に、この有様だ・・・一体、どれだけの敵が中国へ侵入したのか?

 入国したコンテナトラックは数百・・・いや、ひょっとしたら数千かもしれない・・・


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