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第二次日中戦争  作者: 畠山健一
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台湾進攻作戦

 日本との海戦勃発で、和平への道は遠のいた。その発端が北海艦隊の一部の独断によってもたらされたことを共産党指導部は知らなかった。しかし始まってしまった以上、その追及は何の意味もなさない。重要なのは次の段階である台湾攻略が自動的に決定したことだ。

 膨大な軍用車両の車列が福建省沿岸の道路を埋め尽くしている。台湾の対岸に集結した人民解放軍の地上部隊は偵察衛星に確認される。台湾を守る中華民国国軍は、米軍から中国軍の詳細な情報を得ていた。

 上陸可能地点として侵攻が予想される台北市周辺、台南市および高雄市沿岸の防備は増強されている。中国が保有する揚陸艦は百隻以下と全く不十分で、せいぜい三万人を運ぶのがやっとだろう。それも激しい防御砲火でたちまち撃退されるかもしれない・・・

 台北市全域に空襲警報が鳴り響いた。初めに飛来したのは十数発の弾道ミサイルだった。台湾空軍のパトリオット部隊はPAC-3弾で大部分の迎撃に成功した。桃園空港に二発命中したが損害は軽微だ。

 第一波のミサイル攻撃は、世界でも屈指の台湾防空網の把握だ。工作員の情報で五個旅団からなるおよその主要防空施設を把握していたが、実戦により機能するレーダー網を絞らなくてはならない。

 ロシア軍はウクライナ戦において、初期の防空網破壊に失敗し、制空権を握ることができなかった。強力な地上部隊をもつ敵に対して制空権の把握は絶対条件だ。

 中国は上陸作戦に必要な強襲揚陸艦の戦力も乏しく、経験もない。しかし、その能力を過小評価されていたのは中国にとって幸いだった。彼らのとった、いくつかの意表を突いた作戦行動は、台湾を混乱に陥れた。

 ほぼ台湾全土にわたって、内陸部の村落にまで、いたるところで小グループの中国軍兵士が目撃された。

 そればかりではない。突如として、中国軍の軍用車両を含む地上部隊が台中市と基隆市に出現した。基隆市は台北から二十キロ以内だ。96式戦車の他、155mm自走榴弾砲まで現れた。

 台中市は上陸作戦に適さず、想定外の地点で防御は十分でない。慌てた台湾陸軍は台南の部隊を移動させた。

 空軍もレーザー誘導爆弾を装備したF-16を出撃させた。しかし市街地の中で目標を発見できず、沿岸に接近した中国駆逐艦の対空ミサイル攻撃を受けた。

 駆逐艦はその130mm砲で地上への艦砲射撃を行った。現代戦の主役であるミサイルに破壊力と命中精度は及ばないが、三十キロの射程距離で毎分四十発撃てる。誘導ミサイルと違い、ジャミングや迎撃される心配もない。

 中国人工作員は主要なレーダー基地付近に潜み、ドローンで着弾観測を行い、修正指示を駆逐艦や上陸した自走砲へ送っている。

 中国軍は攻撃前夜、五十か所を超える地点に空挺部隊を降下させていた。さらに民間船舶の定期航路を利用し、小規模ながら戦車を含む軍用車両を秘密裡に揚陸させた。目的は敵の撹乱と、防空システムの破壊にあった。

 彼らは生きて帰れない覚悟の中、任務を遂行した。空挺部隊は銃撃戦で大半が全滅しつつも、防空レーダー及びミサイル発射台を破壊した。

 攻撃二日目、中国本土からの弾道ミサイル攻撃は激しさを増し、防空システムの弱体化から迎撃率が低下していく。空軍の桃園飛行場と台南飛行場は大損害を受けた。

 混乱の中、台湾軍司令部は敵主力部隊の上陸地点を探っていた。しかし台湾西岸一帯は中国海軍の勢力下にあり、空と海からの監視は容易ではない。空軍は対空兵器を恐れ、海軍の僅かな艦艇は身動きできないでいる。

 三日目、台湾の防空能力がほぼ無力化したところで、中国空軍の大編隊が台湾上空に現れた。台湾空軍のF-16が果敢に迎え撃ったが、数で圧倒された。

 

 国際社会は中国への避難一色だ。台湾軍司令部は日米の援軍を心待ちにしていた。日本は中国と戦闘状態に入り、名実ともに台湾の軍事的同志になったのも同然である。そこへ衝撃的なニュースが飛び込んできた・・・

 日本艦隊が反転した!

 自衛艦隊は激しいミサイルの応酬の中、北海艦隊に大損害を与えたものの、彼ら自身十二隻の護衛艦が大破した。元々中国との全面対決に乗り気でなかったことも相まって、決定的なところで退却を決断してしてしまった。

 ではアメリカは?日本と同盟関係にあり、参戦の義務があるはずだ。しかし今のところ、彼らは中国と一戦も交えていない・・・

 米軍は何をしているのか?


「我々の結束は固い。NATOおよび日米同盟は不動であり、中国はロシアと同じ運命をたどるであろう・・・」

 アメリカ大統領は強気の声明を繰り返しているが、内心は中国軍の手際の良さに肝をつぶしている。

 情報部の分析では、人民解放軍はこのところ共産党のコントロール下にない。北京での動乱からみても明かだ。中国は核大国であり、一歩間違えると取り返しのつかない事態を招く。

 しかも中国軍は米軍に一切手出ししてこない。むしろそれまで頻繁にあった米軍への挑発行為がピタッと止まっている。空母艦載機をわざわざ彼らの射程圏内まで進出させたが、全く無視状態だ。

 制空権を失った台湾が陥落するのは時間の問題だ。米軍が総力を挙げて攻撃すれば、情勢を変えうるかもしれない。しかし彼らも深手を負う上、戦いはそれで終わらないだろう・・・

 冷静に状況の推移を見守るのが最善である。他国の為に血を流すのは昔の話だ。中国の台頭は気に入らないが、彼らは米国と対決するつもりはないらしい。

 台湾断念の考えは米国政府内で支配的になりつつあった。


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