表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第二次日中戦争  作者: 畠山健一
15/27

尖閣諸島沖海戦

 原子力空母「ロナルド・レーガン」はミサイル巡洋艦および駆逐艦15隻を従え、慶良間諸島付近を航行している。全長333メートル、排水量8万トンもの世界最大級の空母は80機の艦載機を搭載し、その主力FA-18E/F「スーパーホーネット」が出撃準備を整えている。

 沖縄の米軍機も台湾空域は行動圏内に入る。100機が駐留する嘉手納飛行場は、極東最大の空軍基地であり、海兵隊の普天間飛行場、空自那覇基地を含めた航空兵力の支援を受けることができる。

 激しい外交的駆け引きが、公の場でも、水面下でも始まっている。アメリカは中国に対し、台湾包囲を解くよう強硬に要求する。軍事侵攻は決して許容しないと・・・

 NATO諸国も中国を一斉に非難し、イギリスはいち早く空母部隊の派遣を決定した。

 一方の中国も、引き下がるつもりは全くない。アメリカは本気かもしれないが、台湾に向っている空母打撃群は米海軍の一部にすぎない。ハワイやサンディエゴから主力艦隊がやってくるだろうが、最短でも十日はかかる。ヨーロッパからの加勢はもっと先だ。

 人民解放軍はその大部分を台湾へ集中投入する準備ができている。台湾は九州と同程度の面積にすぎず、いかなる区域も射程圏内に入る。中華民国国軍は頑強に抵抗するかもしれないが、戦力差は歴然であり、一週間ももたないだろう。

 主要都市を制圧してしまえば、国民を人質にとったのも同然だ。欧米諸国は軍事的に手出しできなくなる。

 中国は国際社会から孤立するかもしれないが、それも長くは続かないだろう。それほど中国の政治的・経済的影響力は絶大であり、発展途上国をはじめ、多くの国々が中国なしでは生きてゆけないのだ。


 自衛艦隊三十五隻も台湾へ向かっていたが、その進路上に尖閣諸島があった。日本の領土が奪取されている状況にあるが、まずは米軍と共同歩調をとり、台湾問題への対処が最優先となっている。

 しかし行く手に中国海軍の北海艦隊が待ち受けていた。尖閣諸島では彼ら自身の手によって、味方の潜水艦を失わせてしまったが、自衛艦にその責任を負わせた。そして自衛隊の大艦隊が目前に迫ってきている。彼らの目的が尖閣諸島だろうが台湾だろうが、彼らへの武力行使の名分は立っている。

 空母「遼寧」をはじめ、駆逐艦15隻、フリゲート艦7隻は接近する海自護衛艦隊に戦闘態勢を整えた。空母からはJ-15艦載戦闘機二十機が発艦する。さらに武漢基地から飛来した空軍のJ-16戦闘機五十五機が合流する。新鋭機の投入は那覇基地から飛来するであろう空自のF-15に対抗するためだ。

 彼らは共通の命令を受けていた。魚釣島沖で戦端が開かれた場合、対日戦は徹底的に、対米戦は待て、という内容だった。幸い両国は二手に分かれて行動している。

 一方の自衛艦隊も中国側の動きを察知し、迎撃態勢をとっていた。本国から先制攻撃の許可は下りていない。自衛艦隊は行く手に展開する中国艦隊と航空機によるミサイル攻撃、更には中国本土から飛来する弾道ミサイルにも備えなくてはならない。

 先頭を航行するイージス護衛艦「あしがら」は、新たな脅威を探知していた。

「複数の潜水艦を確認!宋型と思われます」

 艦長は対潜迎撃準備を命じた。

「海中にも敵がいるか・・・少々負担だな」

 つぶやきながら対潜ヘリコプターが飛び立つのを眺めた。さらに上空を空自のF-15が飛び回っている。

 脅し合いにも限界がある、と艦長は感じた。護衛艦隊は大艦隊であるが、これでは十分ではない。こうなると十隻を引き抜かれたのは痛手だ。

「なにかのきっかけで日中全面戦争勃発だ・・・」

 そのきっかけは、予想に反して急激に訪れた。

「魚雷接近!」

 十二本の誘導魚雷が護衛艦隊を襲った。

 各艦は自走式デコイを海面へ発射し、回避運動で魚雷を避けようとする。デコイは妨害音響で魚雷を引き付けたが、中にはそれをすり抜け、護衛艦を捕らえた魚雷もあった・・・

 二隻の護衛艦に水柱が上がった。

「『ふゆづき』被弾!」

「『ゆうだち』に火災発生!」

 十本の魚雷がデコイにより誤爆し、二本が命中した。五千トン級の護衛艦にとって、一本の魚雷でも深刻な被害となる。船体は傾き始め、浸水を食い止める必死の作業が行われている。二隻とも火災を併発し、人的被害は避けられない。

 第二派の魚雷攻撃を待っているわけにはいかない。対潜ヘリコプターは魚雷を投下した。正当防衛としての攻撃許可が下ったのだ。

 2隻のDDH護衛艦から飛び立った8機のヘリコプターは三隻の潜水艦を捕捉している。ヘリはそれぞれ二本の誘導魚雷を搭載し、次々と潜水艦に向けて放たれた。

 いくつもの水柱が海面から上がった。潜水艦の放ったデコイへの誤爆もあった。しかしヘリの投下したソナーは、音響反応の中から船体の破壊音を探知した。潜水艦への魚雷命中は致命傷であり、撃沈確実である・・・

 つまり六十名の乗員もろとも、一隻の潜水艦を海中へ葬ったことになる。

「ミサイル接近中!中国軍機からです!」

 護衛艦の迎撃用ミサイル・セルが開かれた。空自のF-15は上昇して中国軍機に向った。日本と中国の艦隊はまもなく双方の対艦ミサイル射程圏に入る。

 報復の連鎖により、空と海の本格的な戦闘へと突入した・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ