もつ焼き居酒屋 決起集会
「くは~っ! たまんねー!!」
ふたりジョッキをガチャン!とぶつけて一気に呷る。
千客万来のもつ焼き居酒屋
中にあぶれた私たちは表の立ち飲み席…ビールケース2個積みにベニア板の簡易テーブル…で、ちょうど今、おねーさんがもつ焼きの皿を届けてくれた。
すぐそこの高層ビルで行われていた、久しぶりの見本市も(感染拡大による中止にはならず)無事に終わり、こうして打ち上げが出来た。
コロナは今だ渦中だけど…お母さんの店を継ぐお許しがようやく出て…私は会社を辞する準備を内々に始めていた。
三人目にして、ようやく見どころのある部下にも恵まれた。
この子に私の仕事を引き継げるのなら安心だ。
願わくば、前のへたれた二人のように、そしてこの私のように…会社を辞めないで欲しいのだが…
「オレ! ここ一度来たかったんですよ! でもずっとweb見本市だったから…」
「そうね。キミが入社した年からwebだったものね。それまでは見本市の打ち上げはここって決まってたの。私も上司やセンパイによく連れて来てもらった。だからようやくキミを連れてこられて嬉しいよ。ここヘはキミから言われなくても来るつもりだったし、ちゃんと自腹で奢るつもりだったのに…」
「スミマセン…あの、そう言われると、ちょっと言いづらいんですが…今日、お誘いしたのは…実は主任に相談があって…」
「ん?! 私の売り上げは回さないよ(この子、今月も達成するはずだけど…何か目算狂ったのかしら…とにかく今は厳しく自分の数字を追及させなきゃ!! せっかく私から得意先引き継いでも実績落としたら却ってこの子の為にならないし!! でも…今日の見本市分は付けてやってもいいか)まだ10日もあるんだから、まずはなにができるかを…」
「いえっ! 売り上げは達成します! 問題ありません!! 今日の相談内容は…プライベートな事で…主任ならいいアドバイスがいただけるかなと…」
「どうかな…私は仕事以外はダメダメなんだよ…」
これは本当にそうなのだ。
自慢じゃないけど私、文字通り“女の腐ったヤツ”…腐女子で…大学時代は半分引きこもり状態のBL三昧!!
…『就職?? ウチはお母さんがお店やってるから後を継いで…客が来た時だけ1階の店舗に下りて行けばいいや』
なんて“お花が咲いた”コだった。
それがお母さんの逆鱗に触れて
「お前なんかに継がせる店どころか食わせるメシもない!!働け!!穀潰し!!!」と尻を叩かれた。
でもって、不器用な私はニートから一転して仕事人間になるしかなかったのだ。
でもこの子の目、ちょっと切羽詰まってる。とにかく話だけでも聞いてあげなきゃ
「…まあ、私なんかで良かったら…」
香坂くん(あ、これ、カレの名前ね)頷き、話し始めた。
「ずっと付き合ってたコがいたんです。オレはその子の事、カノジョだって思ってたし…この会社で頑張って主任に昇格したらプロポーズするつもりだったんです」
なるほどねえ~早く実績が欲しいんだ…
「私の言えるのはこれだけ、『キミの今の頑張りじゃまだまだ道のりは遠いよ』」
カレ、一瞬、グッ!と来たみたいだが頷いた。 オイオイ簡単に肯定するな。抵抗しろ!気概を見せろ!!
「自分がダメダメだと言うのはよく分かっています。『ああ、きっとカノジョには相応しくないんだ』って、だからカノジョから『今度、婚約者を紹介するね』って言われて…」
えっ???
私、声に出した。
「ちょっと待った!! 一体どうなってる?? 浮気されたんじゃなく、キミが浮気相手みたいな感じ??」
「いや…多分…その婚約者の方が後です…付き合い始めたのは…」
「じゃあ…(心の声→二股掛けられ、棄てられたパターンじゃん!!)」
カレ、頷く。
「それは仕方ないと思っています。」
あっさり認めるんかい!! それはちょっと!! 納得しかねるなあ…
「問題は…」
どこの問題だよ??!!
「婚約者を交えた会食にオレが出ていいものかどうか…」
私、思わず口走る
「そんなの出たら、お前、バカだよ」
ついでにジョッキをイッキ飲みした。
「おねーさん! ナマ…『大』お願いします!!」
おねーさんがすかさず持って来てくれた1.5倍の大きさのジョッキに私は口を付けながらチラリとカレを見る。
“オンナの腐った”のをしている。
「ねえ! 香坂くん!そのカノジョの写真とかある?」
カレ、スマホを立ち上げて、そのコのプロフィール写真を表示した。
うわっ!! 盛りだくさんの砂糖菓子!!!
「ふたりで撮ったのってある?」
カレ、今度はそのコと腕を搦めている写真を呼び出した。
「やってるね!! スケベだねえ~」
そう言いながら“オネーサン”は彼の手からスマホをもぎ取りピンチアウトしてそのコの手の甲とか首回りとかを検証する。さすがだ!! モリ処理に負けない若い肌!! アラサーの私とは違うわ…このカラダで蠱惑的に迫られたら普通の男は落ちる…
「まっ! いいんじゃない。こんな若い可愛いコとできたんだから。『僕はアナタと兄弟で~す』って会いにいけば」
香坂くん。一瞬『?』な顔して
「ひょっとして…」と聞いて来た。
「オレがカノジョと…その…」
なんか照れて横向いた
「エッチしたって思ってます?」
「だって…『カノジョだって』思っていたくらいの付き合いだったんでしょ?」
「そうは思ってましたけど…エッチはしてません。手を繋いだり抱き合ったり…キス…は…しましたけど…」
なんじゃこりゃ!!
私がジョッキを握ったままガックリと果てていると、香坂くんはますます切羽詰まって聞いて来る
「こんな事をオレに言って来るカノジョ…いったいどういうつもりなんでしょうか…主任ならお分かりになるかなと…」
知るかー!!! 私は腐女子の上に『ほぼカニ女』なんだぞ!!!
こんなの私の一番の不得意分野じゃねえか!!!
うう!! しかし可愛い部下をここまでコケにされて!!
私、一人っ子だけど
なんだか弟をバカにされた姉の気分!!
マジ!腹立って来た!!!
私、香坂くんの背中をパシッ!!と叩いて
「とにかくもつ焼き食いな! あ、それ、ここでは“ほるもん”って言ってるけど“睾丸”!! だから…キミにとっては共食いだね! なに、『ウェ!!』って顔するなよ!私だって今食べるの“こぶくろ”だから共食いだよ」
とにかく笑い飛ばして!!
それから
戦略を練る!!
一矢報いる為の!!
意外と長くなりそうなのでキリのいいところで切りました(*^^)v
“ほぼカニ女”とは何か??
気になる方は1票を!!!<m(__)m>
ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!<m(__)m>