お尋ね者屋のお兄さん
ーカランカランッ
お店の扉を開くと、部屋の中から甘い紅茶の匂いが漂ってきた。
「わぁ!いい匂い!なんかお腹空いてきちゃった…エヘヘ」
和みまくっている顔で雪上はそう言うと、その甘い匂いに釣られるようにお店の中へと入っていった。
木でできたこのお店は、小さな机が窓際に一つと部屋の真ん中に少し大きめなのが一つ、ドライフラワーなんかが飾られていて、お洒落なカフェのような心温まる雰囲気の場所だった。
お店の中に入って少しするとガチャと扉が開かれる音が聞こえた。
「いらっしゃい。どんなお尋ね者が来たのかな。」
奥の扉から入ってきたその人は、高身長で痩せていて、長い髪の毛を後ろにひとつ結びにさせメガネをかけている。いかにも好青年で優しいお兄さんのようなその姿に思わず見惚れてしまう。
「お尋ね者屋へようこそ。」
ニコッとはにかんだ笑顔もまた数々の女性を虜にしてきた罪な男なんだろうなと思わせるものであった。
「はじめまして。えっと、俺は八神優です。こっちは雪上潤。さっきこの街に入る時に大柄な門番からここに行ってみるよう言われてきてみたんです。あなたも別の世界からこの世界に来たって本当ですか?」
とりあえず立ち話はなんだしと、イスに座るよう促された。
「自己紹介がまだだったね。この異世界でお尋ね者屋をやっている宮田広大だ。宮田でも広大でも好きなように呼ぶといい。僕も君たちと同じ世界の人間だよ。にしても、君たちは幸運だったね。すぐにこの街に来れてさ。」
宮田と名乗ったその人は、あ、そうだと何かを思い出したかのようにキッチンの方へ入っていった。
しばらく経つとトレーにカップとお茶菓子を乗っけて戻ってきた。
「紅茶は飲めるかい?僕特製の紅茶なんだ。」
そう言ってカップに紅茶を淹れていく。
紅茶特有の甘い香りが部屋の中を満たしていく。
この店に入った時に漂ってきた匂いはこの紅茶の匂いだったのか。
「ありがとうございます。」
この世界で初めて口にするものが元の世界と何も変わらない味でホッとする。
「さてと。二人はこの世界のことを知りたくてここにきたんだよね?」
カップを机に置きながら話をし始める。
ーーーーーーーーーーーー
この世界にはいろんな種族が存在しているらしい
獣人族に竜族、エルフにドワーフとか異世界らしい種族たちがそれぞれ別の国を持って共存しているらしい。
そしてこの国
ビタ・リエド王国には、そのすべての種族が存在するいわゆる異世界のグローバルな国であり、九つある国の中で2番目に大きな国だと言う。
ビタ・リエド王国には、ゼイルという王様がいて、この国の平和をビタと言われる守護神と共に守っているという。
ーーーーーーーーーーーー
まぁこの世界についてはこれくらいだろうと宮田さんは一息つくと、紅茶を一気に飲み干してしまった。
ガタンっ
と椅子が倒れそうになる勢いで立ち上がると、それじゃあ街を案内してやる!
と急いで奥の部屋の方へ戻って行ってしまった。
なんか、見た目にそぐわない慌ただしい人だなぁ…
とりあえず、この後俺たち二人は宮田さんに連れられて街に行ってみることになった。




