白黒の姉妹
街には活気が溢れていて、カフェのような場所でお茶をしていたり買い物をしていたり、子供達が石を蹴って遊んでいたり、元の世界と何も変わらないような世界が広がっていた。
変わっていることといえば、その人たちが猫耳らしいものを頭から生やしていたり、トカゲのような尻尾を持っていたりすることだけだろう。
元の世界で異世界もののアニメにハマっていた俺たちにとってこの世界があまりにも魅力的すぎる。
思わず見入ってしまっていれば突然聞こえてきた慌てた声にここが現実なのだと意識が引き戻された。
「と、と、止まらないですぅ!!」
横から聞こえてきたであろうその声の方に顔を向けるや否や目の前にあったはずの果物屋に馬車が突っ込んで行って、見るも無残な光景が出来上がってしまった。
「イテテ……って、あわわわっ!ど、ど、どうしましょぉ!」
馬車を走らせていたのであろうその子は頭を押さえて泣き目になりながらバタバタと慌てている。
怪我はしていないようでホッと胸を撫で下ろすが、突然の出来事に周りに人だかりができてしまっていた。
しばらくすると、あれま。と拍子抜けするような声が2つ馬車の近くから聞こえてくる。
「これはやっちゃったわ…」
「に、兄様に知られたらまた怒られるよね…」
馬車の扉がバタンッと音を立てて開けられると、そこからあまりにも顔がそっくりな二人の女の子が出てきた。
一人はキリッとした目にストレートの黒色の髪を一つに束ね、全身を黒色で統一させたワンピースを身につけていて、
その子の背中に隠れるようにしているもう一人は、ウルウルとさせた目にくるくるな白色の髪を二つの三つ編みにして、正反対の白色ワンピースを身につけていた。
「シェアネ。ちゃちゃっと直しちゃってちょうだい。」
黒の子がそう言うと、シェアネと呼ばれた白の子はオドオドしながらメチャクチャになってしまったお店だったものに近づいていって、ポケットからキラキラとしている杖のようなものを取り出した。
そして、座り込んで目の前にある木の板にその杖を当てて何やらポツリとつぶやくと、お店だったものを光が包み込んで、瞬く間に元の姿へと変えてしまった。
目の前で起こった異世界の世界らしすぎる出来事に2人は思わず、声を出すのを忘れてただただ目を見合わせて気持ちを共有しだした。
「ねぇ!そこのふたり!」
またまたいきなり聞こえてきた声に振り向けば、先ほどの黒の子が二人の目の前に仁王立ちしていた。
「あ、えっと…その。」
白の子も黒の子の後ろに隠れながらこちらをみている。
「ちょっといいかしら!あなた方が道のど真ん中にいたおかげで、ルビーが誤って店を壊してしまったじゃない!」
黒の子はキリッとした目をもっとキリッとというか、こちらを睨みながら文句を言ってきた。
「そ、そうですぅ…。ルビーにごめんなさいしてくださいぃ…!」
白の子も負けじと声を上げる。
「えーっとなんかごめんね?あまりにもこの街が素敵すぎてちょっとぼけっとしちゃってて…えへ」
雪上はそう双子の女の子に謝ると、黒の子と白の子は顔を見合わせて目をぱちぱちとさせるとまぁそれなら仕方ないよねと言って許してはくれた。
「ところで、あなた達。ここではあまり見慣れないものを身につけていらっしゃるようですけれど、もしかしてプラネの方達ですの?」
初めて聞く単語になんだそれ?みたいな顔をすれば、
「プラネは、この世界でプラネット・ワールドと呼ばれる別の世界から来た人たちのことを呼ぶのですが…」
と、わからないことを察したであろう白の子が説明を付け足す。
多分俺らはそれだと思うぞ。
と質問に答えれば、また来てしまいましたのね。
と黒の子がつぶやいた。
「あ、そういえば、お尋ね者屋ってどこにあるか知ってる?私たちそこにいってみようと思ってて、もし知ってたら教えてくれない?」
先ほど迷惑をかけたばかりだと言うのに、雪上は遠慮を知らないと言うか、とても図々しいというか…
そう白黒の子達に道を尋ねると、馬車でそこまで連れていってよとまさかのそこまでの交通手段までお願いしてしまった。
まぁ仕方ないわねここで出会った縁ですしと黒の子に了承を得れた二人は馬車に乗せてもらい、
門番に教えてもらったお尋ね者屋まで連れていってもらうことになった。
雪上の行動にはもう呆れてものも言えないよ…。