門番
「ほらさ!あれが君たちが行きたがってた場所さ!」
真上にある木の枝から街を指差してフォリアはそういうと、僕は森から出られないからさ。森にきたら僕のことを呼んでさ、と森の中に戻っていった。
街の巨大な門は開かれていて、大きなお城を中心に人で賑わう街並みが見える。
どんな街でどんな出会いがあるのだろうか…
不安感より未知のものに対する好奇心が俺の気持ちを高揚させている。
今にも走り出してしまいたいくらいだ。
「雪上。早くいってみようぜ。」
「え、あ。うん!」
「……八神も意外に子供っぽいとこあるんだね。」
そうそっぽを向いてポツリと呟いたその顔はほんの少しだけ微笑んで見えた。
・・・
門の前には街に入るための列ができている。
門の近くでは門番達が慌ただしくしているみたいだ。
にしても、巨大な門には細かすぎるほどの装飾がされてあったんだな。
なんて、この世界の技術に感心していると、さっきまで横にいたはずの雪上の姿が見当たらないことに気がついた。
「・・・は?あいつどこいったんだよ。」
呆れながら周りを見渡すと、門のすぐ下の場所が何やら騒がしくしている。
気になって見に行けば、なんとなくそんな気もしていたが…門番と予想通りのあいつが睨み合っていた。
「だからぁ、ちょーっとだけ街を覗いてみようと思っただけだってば!」
「困るでな!ちゃんと列に並んでいてもらんと」
「少しくらいいいじゃない。ちょーっと小指一本分くらい足入れちゃっただけなんだしさぁ。もう、どの世界にも心の小さい人っているのね!どケチ!どヘンタイ!」
いや、その最後の単語は関係ないだろ。
ってそうじゃない、異世界に飛ばされて早々に…
全くあいつはどこにいっても騒ぎを起こす天才だな。
「あ!ちょっと八神どうにかしてよこの人!」
(いや。お前が悪いようにしか聞こえなかったんだが…)
「俺の連れがすみませんした。ほらお前もやれ。」
絶対に認めませんみたいにふくれっ面しながら仕方なくぺこっと頭を下げる。
門番は、いきなり出てきた俺に戸惑いつつも、いやいや俺も厳しすぎたなっ!ってガハガハ笑いながら頭を掻いた。
その姿はとても大柄でいかつく、さすが異世界の門番なだけある姿をしていた。
「ところでオメェら、異世界人か?」
異世界人はどこかにつれてかれるのか?と一瞬不安が頭をよぎり少し身構えれば
「ガハハ!いやいやそんな身構えるな。この街にはよく異世界人がやってくるもんでな。
ついこの前も異世界から美人なねぇーちゃんが来たってこの街で噂になっとって。」
「え、私たちみたいな人が他にもいるってこと!?」
さっきまでふくれっ面だった顔は満面の笑みに変わっていた。気持ちの切り替えが早すぎるだろ。
「おう。確かこの街に8人くらい来てるんでねーか?」
俺たちの他に何人もこの世界に来てる人達がいるのか。会ってみたいな。
「その人達はまだこの街にいるんすか?」
「おう、いるぞ。なんなら後からくるオメェらみたいんために色々教えてるやつもいてな。街入ったらギルドの隣んにあるお尋ね者屋ってやっちゃにいってみるとええぞ。オメェらに役立つだろうからな!……
そのあともいろんなことを話してくれた門番に街に入る手続きまでしてもらい、すぐに街に入ることができた。
門の中に入ると、異世界らしい街並みが俺らを迎え入れた。