小さな道案内人
不思議な力が使えたことがよほど嬉しかったのだろう、中身が10歳幼くなったような雪上を眺めながらクッションにされた痛みが引くのを待つ。
にしてもさっきから、何かに監視されているような視線を感じる。
ガサっ
ふと聞こえた草が揺れる音。
はしゃいでいる雪上には聞こえなかったようだが、確かに聞こえた。
木の上…音がした方に目線を向ける。
誰かいる。
小さいな、子供か…
「ね、何をやってるのさ。」
ドサっ
俺らが危険じゃないと判断したのか、その子は木から降りてきた。
「僕、さっき木の上で昼寝してたのさ。そしたら、空に人がいて何してるのかなって思ったらさ、その人が真っ逆さまに落ちてくのが見えてさ、ここら辺かなって様子を見にきてみたのさ。」
そう、特徴的な話し方をしながら僕らに話しかけてきた。
緑の瞳にくるっくるの茶色の髪の毛、ちょこんとした鼻は可愛らしくて背も小さい。
喋り方も見た目も幼い子供だ。
一つ違いを挙げるとしたらその子の背中に羽が付いていることぐらいだろう。
「わぁぁ!君めっちゃかわいいね!何歳?。」
男の子に気づいた雪上は警戒のけの字も知らないのか近づいて話しかけた。
「僕は、112歳なのさ。まだ生まれたてさ!。」
ヒャ、ヒャクジュウ二…え?
まさかの歳に驚き固まってしまった。
いやいや、こんな見た目で112歳はありえないって..
笑うしかない。
「え、あ、あははそうなんだ。な、なるほど。」
雪上の方を見ると笑ってはいるが口元がピクピクしている。やはり信じがたい。
「僕は妖精のフォリアって言うのさ。この森の守り人なのさ!森に誰がいるかとかこの森のことなら僕はなんでも知っているのさ!。」
フォリアの歳に未だ納得してない俺らを置き去りにおしゃべりなのであろうフォリアは無邪気に話し始めた。
「そうさ!僕、初めてみたのさ。二人とも異世界から来た人みたいなのさ!この前、僕の友達が異世界の人みたって言っててさ、僕も会ってみたいって思ってたのさ!だから、会えて嬉しいのさ!。」
そう言いながら雪上に抱きつく様子は本当に幼い男の子だ。
だが、フォリアは妖精だ。
妖精は長い時を生きると聞くし、112歳なのも妥当な歳なのかもしれないなと少しだけだが納得したような気もする。
「君の言うとおり俺は他の世界から来た。八神優だ。」
よろしくと手を差し出せばよろしくねと両手で握り返してくれた。
「フォリア。俺らあっちの方にある街に行こうと思ってるんだ。道を教えてくれないか?」
この森のことをなんでも知っているのならと思いフォリアに問うと、初めての仕事なのさ!と大喜びで道案内をしてくれることになった。
ウルって呼んでね。フォリアは妖精さんなんだ!その羽綺麗だねぇなんて言いながら雪上はフォリアと手を繋いで歩き出す。
その姿はまるで姉と弟のようで微笑ましい。
しばらくその姿を見ながら森のでこぼこ道を歩いていけば大きな荷物を乗せた馬車や、商人のような人たちとすれ違うようになった。
木々の間を抜けると、200メートルほど先に大きな巨大な門と塀に囲まれた大きな街が姿を現した。