二人の職業2
「…使い契約人」
聞きなれないものに気持ちが更に高ぶるのがわかる。
マフィルさんは何百年ぶりかなぁ!と1人で飛び跳ね、下に置いてあった書類たちを舞い散らかす。うん、きっと私と同じタイプね。
(一応、自覚はあるらしい)
もうほんっとに私この仕事辞めなくてよかったよぉ…
なんて言い始めるマフィルさんの頭にこぶしが落ちてきたのは言うまでもない。
「おっ新入りかー。ごめんなー担当がコイツで。」
そうマフィルさんの背後から現れたのは、高身長の厳つい男の人。叩かれた頭を押さえながらマフィルさんはその男の足を踏んづける。
それでもケロッと何もなかったかのようにこちらに顔を向けた。
「ギルドマスターのルイドだ。よろしくな新入り!」
ルイドと名乗ったその人は厳つい見た目にそぐわないニカッとした笑顔を見せた。
それでもギルドマスターなだけあって強者のオーラが半端ない。
「初めまして。八神…じゃなくて、ユウです。お世話になります。」
ペコっと頭を下げれば、よろしくな!と頭をバシバシ叩かれた。
地味に痛い。
「おう!で、そっちの嬢ちゃんは…」
チラリと顔を向けられた。
「あっ。ウルです!ルイドさんすっごい筋肉ですね〜板チョコみたい。」
毎度思うがアイツの頭の中は食べ物しかないのか?
筋肉を褒められたルイドはまぁな!と、満更でもなさそうにドヤ顔をした。
「…で、使い契約人が現れたみたいだな。」
ゴホンっ。と逸れた話題をもとに戻す。
ギルドマスターが出てくると言うことは、相当珍しい職業なのだろうか…?
「それ、どんな職業なの?使いだから動物とかを使役するみたいな?」
異世界ものでそれらしいものといえば使役系なんだろうけど、それはいつも最弱な職業だったよな…。
なんて思っていると、マフィルさんが
ウオッホッ!ゴッヘー!!
なんて、どこのおっさんかという咳をしながら顔を歪めて、奥の部屋から分厚い本を持ってきた。
長年使用されてなかったのであろうその本は、咳き込むことが予想できるくらい埃まみれだ。
「全く。掃除もまともにできないのかここの奴らは…。まぁいい。俺も使い契約人に出会うのは初めてだからな、詳しいことは知らん。とりあえずここに情報が載ってはいるんだが、あんまり詳しくは書かれてないと思うぞ。」
そう言ってギルドマスターは埃を払い、本を開く。
使い契約人について簡単にまとめればこうだ
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
・契約職(使役とは少し違う)
・あらゆるものと契約を結び、力を借りることができる。
・最も高位な契約は、5大聖霊と呼ばれる、火、水、風、闇、光の聖霊との契約。
・契約できるものはその人の神聖力によって変わる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ということだろう。
滅多にいないからなのか、契約の仕方が一つも書かれておらず、俺も、雪上…じゃなくてウルもポカンとしてしまった。
「それでー…私はどうしたらいいの?」
誰もが持つであろう疑問をウルが問う。
「ふむ…………。まぁ頑張れ!新入り!」
長い沈黙の後、グッジョブポーズと共に発された回答はギルドマスターなのか?と疑いたくなる軽い言葉だった。
…俺、普通の職業でよかった。
と胸を撫で下ろしたのは言うまでもない。




