異世界転移してしまった
ーーどこだよ、ここー
目を開けると、あたり一面草だらけの場所に俺は寝ていた
「いったぁぁい!もう、さっきからなんなの!」
後ろから聞き慣れた声が聞こえる
振り向くとあごを痛そうに手で擦りながら若干泣き目になってるやつがいた
同じような服に身を包んでいる俺らは今、
ちょっと小高い丘の上にいるみたいだった。
周りを見渡してもこの近くには何もない。
ちょっと遠い場所に街みたいなのが見えるだけか。
やはりこの場所は、俺らがいた世界と何か違う感じがする。
ほら空にでっかい翼持ってるやつが優雅に飛んでるしさ…
空を見上げると
黒光している鋭い爪と元の世界では見慣れない頑丈そうな翼で空を飛んでいる生き物が見えた。
…は。あれ竜じゃね?本物かよ。
はぁ。なんなんだ。
さっきまで隣にいるこいつとコンビニでアニメのクジの取り合いをしていたはずだろ。
なんとも嬉しいことに異世界に飛ばされたのかよ。
珍しいこともあるものだ。
手と服についた汚れを払いながら立ち上がる。
異世界に飛ばされたのであろうこの現実を冷静に喜んでいる自分はやはり変わり者なのであろうな。
俺の横にいるこいつはさっきまで、痛いだのお前のせいだのぐちぐち言っていたはずだが…自分が今いる場所に気付いたのだろう。
口を開けたまま呆然としている。
こいつの名前は雪上潤
俺と同じ高校で一応クラスメイト。
陽キャにしては暗めな髪色の髪をオシャレにアレンジすることもなくいつもポニーテール
クリッとした目にはいつも紫のカラコンをつけてそれが似合う。
色白で華奢だが胸はcカップはあるであろう程よい体つきをしている。男が好きなボン、キュっ、ボンだ。って俺は何言ってんだ。まぁとにかくすごいモテる。
陰キャな俺なんかと、陽キャでクラスの人気者なこいつとの間に接点なんかないはずなんだが、趣味が同じってので意気投合した過去がある。
「おい。雪上。」
声をかけるも反応は無し。
いつまでもこんな何もない所にいるわけにもいかないし置いていくか。
異世界にきたらとりあえず街に行ってここがどんな世界なのか確認するのが妥当だろう。
少し離れている場所に荷物が転がってるのが見えた。
ご丁寧に荷物まで異世界に飛ばしてくれたらしい。
サッとリュックを背負って、
さっきここから見えた街らしい場所の方向へ歩き出す。
そうすれば横からいなくなった俺に気づいたのだろうアイツはハッとして慌て出す。
「え、え?ちょっと何よ!置いていく気!?まじ、信じらんないんですけど。だから外見だけはいいのに女の子にモテないんだわ。」
なんかすっげームカつくこと言われたような気もしなくはないんだが、アイツをここに見捨てるほど心は汚れてない…はずだ。
「んなことするかよ。(いや、置いてくつもりではあったか…まぁいい。そう思っただけだ。)」
めんどくさそうに髪をくしゃっとさせながらため息をついた。
「来るなら早くしろ。」
「何よ。その命令口調。まるで仕方なく面倒を引き受けるみたいなさぁ。 もう少し優し…。」
口を尖らせながらまた長々と文句を言ってくる。
聞き続けるのも面倒だ。
こいつの話はいつも通り無視して行こう。
「あっ!だから待ちなさいってばー!ほんとに優しくないんだから。」
キーホルダーのたくさんついたスクールバッグを拾ってパタパタと急いで後を追う。
私を置いていくなんてほんとにひどいんだから。
最低最悪なこの人の名前は八神優
名前にそぐわない優しくない人よ。
同じクラスの陰キャ男子だけど私は何気に八神のことを気に入ってる。
人と関わるのがめんどくさそうなのに人を避けようとはしないし、ほんとはいいやつなんだと思う。
あと、前髪で隠れてて見えないけど、私は知ってる。
すっごいイケメン。
くっきりした目にスッと通った鼻筋ほんとにハーフみたいにカッコいいんだわ。
「って八神歩くの早すぎ!。」
いつのまにか50メートルくらい間が開いていた。
前言撤回。
それでも止まらずにスタスタと歩いていくアイツはやっぱり優しくない!