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────生きるという事。


食べて、それから寝る。


言葉にしてしまえばそれだけなのに、たったそれだけの筈なのにとても難しく感じる時がある。なんだか…苦しくて痛い、生き苦しいのだ。


苦しさを止める方法は一つしか思い付かない。


でも死ぬのは怖いから、今日も今日とて

生きてるふりをする。


生きていたく無いくせに死ぬのが怖いのだ。

なんてワガママな奴だと我ながら思う。死んでいるように生きたくて、生きているように死んでいたい。誰からも迷惑をかけられず誰の迷惑にもならなければ本望だった。



けれど考えてみれば、全く地獄の様な人生だった。

ずっと誰かの八つ当たりを受けているような人生だった。


いっそ何も知らずに幸せを幸せとも知らずに生きてる大勢の人達を巻き込んで、盛大に死んでやろうと考えたこともあった。そうでもしないと、とてもとてもこの恨みなんて晴らせそうにもなかった。


でも、あんな日々があったから僕はあの子に出会えたのだと思う。そう思うと地獄も案外悪くない。もし、もう一度人生を選べたとしても僕は迷わずに地獄を選ぶ。


永遠のように感じたあの日々は、振り返ってみれば一瞬で、かけがえのない日々だった。


きっとそれを、人は"青春"と呼ぶのだろう。


僕は決して忘れない。




始まりは夏が終わりそうな日の事だった。



※※※※※※※※※※※※



8月、鬱陶(うっとう)しいくらい生ぬるい雨。


「この人達どうするつもりなの?」


女の子が地面で血を流して倒れている人を指さして言った。


「さあ…」


「何か罰則とかあるんじゃないの?」


「まあね」


鬱陶しい…1人になりたいから早くどこかに行ってほしいのに。そう思って視線を向けたら女の子と目が合ってしまった。


「ねえ、どうして泣いてるの?」


「雨だよ」


僕は答える。

全部、嫌になってしまいそうだ。

何もかも捨てて、面倒な事も悲しい事も全部忘れて…


「もしかしてさ、死のうと思ってる?」


心を読まれたみたいでドキッとした。


「…さっきからうるさい」


「まあ結局いつかは死ぬんだから、それまで生きてみようよ」


切なそうに女の子が笑った。

一体どんな風に生きてきたらそんな悲しい顔で笑えるのだろう。


「…よく言うよ」


さっきまで死のうとしてた癖に。

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