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俺が返事をするまで頭を下げ続けるんだろうか?話しづらいから早く頭を上げて欲しいよな。
「それって双子ちゃんも連れて行くの?」
「勿論です。あの子達のお披露目の場でもありますからね」
「そうなんだ」
「即位式が秋に決まったのもメルの妊娠が分かったからです。出産直後に長旅をさせる訳にはいきませんからね」
「なるほど。そう言う事なら出席しますよ。あの子達の安全は俺がしっかり守ってみせますとも!」
「こちらからも王国軍と宮廷魔導士が同行しますが、リクさんにご一緒いただけると心強いです。リクさんだけでなく御家族の皆様にもご出席いただければ幸いです。すでにリズさんからもご了承いただいております」
「そうなの?リズさんが了承してるなら俺に否はないよ」
「ありがとうございます」
「ロイは行くって?」
「ロイ君はお仕事の調整がつかず欠席の返事をいただいております。依頼が入っているそうで抜けられないと言われました」
「へえ~。リザロ達は招待されてるの?」
「『銀狼の牙』として招待する予定でしたがこちらも忙しいと言うお返事でした。リーダーのガロさんが冒険者ギルドに入りましたからね」
「そっか」
「ですからリクさんには是非とも出席していただきたかったのです。有力な冒険者の方がどなたも出席しないというのはその・・」
「外聞が悪い?」
「有り体に言えばそうです」
言い淀んだラデス殿下の言わんとしてる事をズバッと聞いてやった。そりゃそうだよな。新国王の即位式だ、他国に舐められる訳にはいかないもんな。
『銀狼の牙』が出席しないとなると残るSランク冒険者は俺しかいない。
「話は変わるんだけどさ」
「はい?」
ラデス殿下に近づき肩に腕をまわす。がっちり肩を抱きお互いの顔がくっつくほどに引き寄せる。ふふふっ、逃がさないよ。
いきなりの暴挙に困惑を隠せないラデス殿下が恐る恐る聞いてくる。
「あの・・何でしょうか?」
「うん。ミユもルルも可愛い女の子だよね?」
「はい」
「まさかとは思うんだけどさ、そんな可愛い娘を利用しようなんて考えてないよね?結婚相手を強要したりしないよね?」
「な!?まさかそんな事っ、産まれたばかりですよ!」
「その時になってからじゃ遅いでしょ?だから今聞いてるんだよ」
「リクさん、僕は王族です。ですが娘を政治利用しようとは考えておりません。何か問題が生じたとしても他の解決方法を最後まで模索します」
「いい心がけだね。その言葉忘れないからね」
「メルに誓ってそのような事は致しません。大切な娘達ですから」
「そうだよね!自分はずっと一途にメルを追いかけ回して娘には相手を強要なんて出来ないよね」
「追いかけ回した訳では・・」
「ん?」
「いえ、何でもありません。兎に角そのような心配は無用です」
大丈夫だろうと思ってはいても一応ね、確認はしとかないと。ロイだけじゃなく俺にとっても初めての大事な姪っ子達だからね。
お読みいただきありがとうございました。




