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ケリー君とレミちゃんが持ってきてくれたバスケットの中にはパンとビーフシチューが入っていた。これにサラダを追加で作って出せばオーケーだな。
「マレさんご飯ですよ~」
声を掛けてから数十分後にマレさんがリビングにやって来た。毎回時差が生まれるから料理を温める前に声を掛けるようにしていた。そうすれば準備が整った頃に丁度良く下りて来てくれるんだ。
「ではいただきます」
「・・いただきます」
「あの子達が来たのかい」
「あら、分かりましたか」
「食べ慣れた味だからね」
「そうですか。ケリー君もレミちゃんも可愛らしい子達ですね」
「・・・・」
その後マレさんが口を開く事はなく、黙々と食事を食べ終える。
「マレさんコーヒー飲むでしょ?今用意しますから座っててください」
「あぁ」
「どうぞ。甘い物も食べますか?」
「いらないよ」
「そうですか」
「・・あんたは何も言わないんだね」
「何がですか?」
「あの子達に聞いたんだろう?他の奴らは気を落とすなとか、何時までもそうしてても仕方ないとかいろいろ進言してくれたよ」
「言って欲しいんですか?」
「はんっ、冗談じゃないよ」
「今まで頑張ってきたんですから少しくらい休んだって罰は当たりませんよ。それにマレさんの性格なら何もしない状態に苦しくなってくるんじゃないですか?」
「別に」
「じゃあ好きなだけ休んでればいい。他人の言葉なんて気にする必要ないですよ」
「言うじゃないのさ」
「所詮みんな他人事ですからね。自分の事として捉えられないし、人の事なんて分かりませんから好きに言わせておけばいいんですよ」
「・・・・」
「俺はね、人は何度でも生まれ変わると思っているんですよ。何百回も何千回もね。だからまたいつかどこかで出会える日が来る、そう思っているんですよ」
「・・あんたがそんなにロマンチストだったとはね」
「え、そうですか?そんなロマンチックな話じゃないんだけどな~。誰もがどこかのグループに属してるって話なんですけどね」
「グループ?」
「ええ。ソウルメイト、ソウルファミリー、ソウルグループとか言い方は色々ですけどね。簡単に言えば同じ経験、時を過ごした魂、同じ目的をもって生まれて来た魂とかそう言う意味です」
「それが何だって言うのさ」
「だからね、自分と近しい存在はそれだけ近しいグループの魂である可能性が高いんです。つまり、またいつかどこかで巡り合える可能性が高いって事なんですよ」
「あんた馬鹿だね。そもそも何度も生まれ変わるかどうかなんて証明できないだろう?同じ魂かどうかも分かりゃしないのさ」
「いいじゃないですか。だってその方が楽しいでしょう?」
マレさんが話題に食いついてきた。研究者にとってそれを証明できるかどうか分からない雲をつかむような話には反論したくなるものだろう。
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