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「あんた誰だよ」
突然背後からかけられた声に振り向くと、背の高い男の子とその半分位の背をした女の子が手を繋いで立っていた。男の子の方は高校生くらいか?女の子は中学生くらいかな?長い髪を二つ結びにした可愛らしい子だ。
「こんにちは。この家に泊めてもらってるリクと言います。君達は?」
「泊めてって何だよ、祖母ちゃんがいいって言ったのかよ」
「え!?マレさんのお孫さん!?」
「だったら何だよ」
「そっかそっか。お子さんがいるとは聞いてたけどお孫さんもいたんだね~。俺はマレさんの研究者仲間のダントさんを介してマレさんと知り合ったんだ。あ、ダントさんは知ってる?」
「知ってる。よく話に出てたから。ね、お兄ちゃん」
「ああ」
「そっか、良かった。ダントさんに会いに来たらフィールドワーク中で会えなくてね、それでマレさんの所に顔を出したんだ」
「ふーん。で、何してんだよ」
「一宿一飯の恩義じゃないけど、泊めてもらったお礼に雑草抜きしてたんだ。裏庭は畑になってたんだねー。雑草だらけだけどもう止めちゃったのかな?」
「畑はお祖父ちゃんが野菜を育ててたの。でも死んじゃったから・・」
「レミっ、余計な事言うなよ」
「ごめんなさい」
「そうだったんだね。知らなくてごめんね。えっとレミちゃんと、君の名前を聞いてもいいかな?」
「・・ケリー」
「ケリー君とレミちゃんね。改めてリクです、よろしくね」
レミちゃんは隣で厳しい顔をしているお兄さん、ケリー君の顔色を窺いながらもはにかんだ笑顔を見せてくれた。ケリー君にはまだ不信感を持たれているようだ。
祖母の家を訪ねてきたら知らない男に出くわした、そりゃ警戒するわな。
「あの、お祖母ちゃんは?」
「部屋に居るよ」
「ご飯とか・・」
「朝は食べないって言うから昼と夜だけ用意してるよ」
「それってあんたが?」
「お兄ちゃん!リクさんだよ」
「っるせぇな」
「気にしなくていいよ。食事は俺が作ってる、自分の分のついでだからね」
「あの、ありがとうございます!お祖母ちゃんに会いに来てくれて。お祖父ちゃんが死んじゃってからずっと元気が無くて、それで・・」
「そっか」
「あのこれ、お母さんが作ったご飯届けに来たの」
そう言って手に持っていたバスケットを俺に渡してきた。
なるほど、こうやって食事を届けてくれてたんだな。マレさんのあの様子では自分で料理とかしてなさそうだし、買い物にも出てないのにどうやってと思ってたんだ。心配して様子を見に来てくれる家族がいて良かった。
「じゃあ中に入ろうよ。マレさんも喜ぶよ」
「「・・・・」」
「ん?」
「お祖母ちゃん、私達にもあんまり会ってくれなくて」
「そうなの?でもせっかく来たんだからお茶でも一緒に飲もうよ」
「何だよそれ、自分家みたいに」
「あ、ごめんね。大丈夫だよ、後数日で帰る予定だし」
俺の言い方が気に入らなかったみたいで睨んでくるケリー君を宥めつつ、レミちゃんを促し家の中に連れて行き、お茶と常備していた手作りクッキーを差し出す。
お読みいただきありがとうございました。




