783 赤竜狩り
連続攻撃は出来ない。今残っているすべての魔力を込めたこの一発で決める。
相手を起こさないように殺気を出さず、静かにそっと確実に、だ。
ふぅ~、緊張するな。お昼寝中で油断しているとはいえ相手はドラゴンだ、威圧感が半端ない!実体がない状態なのにじっとり汗ばんでくる気がするのは気のせいじゃないだろう。
でも狂緑竜のように殺気立ってない分遥かにマシだな。息苦しさを感じさせるほどの重苦しい圧、血走った目、あれを経験してなかったらちょっと厳しい。気絶していてもおかしくないレベルだわ。
イメージはギロチン。研ぎ澄まされた大きな氷の包丁、魔力を最大限込めて赤竜の首筋目がけてザクッと落とすっ!!
「グガッァ・・・」
氷のギロチンが首筋にめり込んだ瞬間、赤竜の目がカッと見開き口を大きく開け小さな悲鳴を上げて絶命した。氷の刃は赤竜の首をゴロッと落としていた。
『リク急げっ』
「おぉ」
ギンに急かされ人の姿に戻ると魔力回復薬を3本飲み、すかさず辺り一帯をかまくらで覆う。そして空気穴をいくつも開け、安全を確認してから更に魔力回復薬を追加で飲み干す。そして俺は座り込んだ。
『どうしたのだ主?』
「いや、何か手が震えてさ。足にも力が入らないんだ」
『何?怪我でもしたのか?』
「違う違う、ほんとにドラゴン倒しちゃったんだって言う実感がね、今更だけど感じてきちゃったんだよ」
『何言ってるんだ?前にも倒しただろ?』
「そうだけどさ、通常の状態のドラゴンは初めてだろ?白竜の時は死にかけてて殺気も出てなかったし、緑竜の時は狂ってて何とか街に被害を出さないようにってそればっかり気にしてたしさ」
『うむ、そうであるな』
『つまりこれが普通のドラゴン相手の初陣って事か?』
「そう言う事。あ~まだドキドキしてるよ」
『だが簡単だったな。一撃で決めてあっけなく終わった。俺達が止めを刺す必要があるかもと考えていたんだ』
『我は主なら出来ると思っておったぞ。主の魔力を持ってすれば油断しない限り問題ないと思っておった』
「ギンもハクもありがと」
『・・我もいる』
「勿論分かってるよ!ライは俺の命綱だからね」
『ならいい』
『今頃出てくるのか・・ずっと寝てたくせに』
『ふん』
『まあ良いではないか、ライもちゃんと起きていたのだし』
「なあ、頼みがあるんだけどいい?」
『何だ?』
「他のドラゴン来てないよね?でも何があるか分からないから魔力回復させたいんだ。だから回収お願いできない?」
『・・・はぁ、仕方ない』
『うむ、任せておけ。ライもだぞ』
『えぇ~』
『お前ずっと休んでただろ。少しは働け』
「ライもできたらお願い。俺は少し休ませてもらうよ」
収納ボックスを開け皆にドロップ品の回収を頼み、俺は端に寄って眠りに就く事にした。危険が迫れば叩き起こしてくれるだろう。
赤竜のドロップ品は特大魔石と大量の鱗、爪と牙だった。角が無かったな。そして肉は今回も出なかった。ドラゴンの肉も食べてみたかったんだけどな~、それは流石にハクが嫌がるかな?
お読みいただきありがとうございました。
 




