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丁寧に手入れされて新品のような姿で返って来た装備一式。本来ならピカピカ装備に気分も上がるはずなんだが、重たい足を引きずって嫌々冒険者ギルドに向かって歩いて行く。
いつまでも休んでる訳にはいかないし、遅くなり過ぎると気分転換に当てる時間も無くなるからな。
ギルドの受付でギルド長と王宮からの連名で出された依頼書を受け取りざっと確認していたら、受付嬢さんから下の欄にギルド長からの伝言が書かれているので目を通しておいて下さいと言われた。
その言葉に依頼書の下方に目を移すと、確かに書かれていた。できれば余分に魔法玉を確保しておいてほしいと。モルザット国から追加分を要求されるかもしれないからとも書かれていた。
うへぇ。下がっていた気分がさらに下がった。だだ下がりだ。
問題は風の魔法玉だよな~。こないだまとめて渡したから今手元には数個しかない。他はまだ100近くあるからいいけどさ。採取する数はこの風の魔法玉を基準にしないとならなくなる。
普段よりのんびりした足取りでトンネルまで向かい、亜熱帯ゾーンからこれまたのんびりと道花で移動し魔法ゾーンに入った。
魔法ゾーンに入ったら人に戻ろうかと思っていたが、何とっ、ついに冒険者達を発見した!?やっとか、やっとここまで来てくれたのかっ。俺、感涙。
もしかしたら俺が気付かなかっただけで去年から進出していたのかもしれないが、こうして直接目にすると感動もひとしおだ。
最初は合同パーティーで1体ずつ誘き寄せて対抗するしかないだろうが、慣れてくれば個々のパーティーで対応できるようになるだろう。
魔法武器を持っているのが何人かいるな。だからこそ戦えるんだろうが、奴らのスピードに慣れるにはまだ時間がかかりそうだな。こればっかりは仕方ない。
豚が1番足が遅いんだが亜熱帯ゾーンの境界線付近にはいないんだよな。自分の弱さを自覚してるからかオアシスのある森を中心に活動している。森の外に出ているのがいたとしたら西奥や北奥にいる元から強い個体だけだろうしな。そうすると羊かな~。感電にさえ注意したら馬やユニコーンよりは対処しやすいはずだ。
頑張ってくれよっ、俺の為に。などと勝手なエールを送りながら北奥に移動して行く。ここまでくれば大丈夫だろうという所でハクとギンを外に出し、俺も人の姿に戻る。
ギンが走り出し、手近にいる魔物に襲い掛かってるのを眺めながら後を追う。この辺はもういつもの事だから俺もハクも慣れたものだ。
「ハクも行ってきていいよ」
「良いのか?」
「ここで発散しといてもらわないとね」
「うむっ」
嬉しさを抑えきれずにギンの後を追っていくハクを見送り、ギンが弾き飛ばしてきた魔物に止めを刺しドロップ品を回収しながら歩いて行く。
この先の事を考えると気が重いけど、俺以上にギンとハクの方が辛いだろうからな。つかの間の自由を満喫してくれたまえ。
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