72 特訓
「おいっ、もっと集中しろ!視線を逸らすな!!」
「ちょっ、ちょっと待って!?」
「ほらほら、まだまだいけるだろ!」
「ロイはいいぞ!そのまま続けろ!」
「はい!」
「はぁはぁ・・」
「さっさと起きろ!まだ始めたばかりだぞ!」
練習用の木剣を突き付けながらリズさんの怒声が飛んでくるが、息が上がって返事が出来ない。始めたばかりなんて言ってるがもう2時間は経っているはずだ。
「リクはだらしが無いなぁ、ロイを見ならえ!」
「・・・俺、魔法使いなんですけど・・はぁはぁ」
「いくら魔法使いとは言っても、身を守るすべは持っていて損は無いだろう。一緒に依頼を受けてて思ったんだがな、魔物に接近された時に反撃手段が無いのはどうなんだ?」
「持ってますよ、短剣」
「全然使いこなせてないじゃないか!ただ所持しているだけじゃ意味ないだろ」
呆れたように言われるが、痛い所を突かれて言い返す事が出来ない。痛む身体に何とか力を入れて身体を起こす。まだ立てそうにないな。
迫りくる剣先から逃れ、追い込まれ、何度も転がされた結果全身泥だらけだ。薄く降り積もった雪のせいで足場が元々ドロドロなのも原因だが。
リズさんは素振りをしていたロイの方へ向かい相手を始めた。元気だな・・
ここはギルドの裏にある訓練用広場だ。いつもロイが参加している剣術教室が開催されてる場所でもある。
すでに雪が降り、冬越しの資金が足りなかった冒険者以外は休業している。もちろん俺達も休業中だ。
そしてさっきリズさんが言っていた、俺の接近攻撃手段を得るために稽古を付けてもらっている。確かに攻撃をかわす事は出来るが、ある程度距離を取ってからでないと反撃出来ないのは確かだ。魔法しか使ってこなかったからね。
ロイといる時は、ある程度獲物から離れた位置から魔法で先制攻撃して後はロイに任せているし、俺単独の時は道花しながらの奇襲で済ませていたから接近戦とかほとんど縁が無かったんだよね。
リズさんと行動するようになってからだな、接近戦が必要になったの。俺が先制攻撃する前に飛び出していくから、俺も近づかざるを得ないんだよな。リズさんが動き回ってると遠距離から狙い辛くて、近づくと相手の反撃に巻き込まれるんだよな、当たり前だけど。
相手の攻撃をかわしつつ魔法を打つのはタイミングが難しくて苦戦する事が多い。
そんな訳で休業中の間、リズさんからの提案で腰に下げてるだけの短剣を有効活用すべく特訓を受けている。
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