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交易都市ラードンから帰ってきてそれほど経っていないと思っていたんだが、季節はもうすっかり秋も終わりに差し掛かっている。
何か1年があっという間に過ぎて行くな。色づいていた葉がはらはらと地面に落ちて行くのを見ながら黄昏ていたら、背中を叩かれた!
「いてっ!」
「何してるんだ?そんなところに突っ立って?」
「リズさん。いや、もう秋も終わるんだなぁとね」
「何だそれは」
呆れたように嘆息しながら、今日の依頼報酬の半分を渡してくる。お金を受け取りつつ2人で歩いていく。ギルド近くの喫茶店に行くためだ。
リズさんとの調査依頼を受けてから、何故かロイが休みの日は2人で依頼を受けるようになっていた。
俺が依頼を見繕っていたら声を掛けられて、お互い独りなら一緒に行こうとなったのだ。俺としてはリズさんの事を嫌いではないし、知らない事を色々教えて貰えるから助かる。リズさんの方は2人の方が魔の大森林の奥まで入れるし、生存率も上がるので助かるそうだ。ロイのいる日は普通に独りで依頼をこなしていると言っていた。
喫茶店に入りメニューを見ているリズさんの目は真剣だ。魔物に挑んでいる時より真剣かもしれない。2人で依頼を受けた日は大体喫茶店に寄っている。リズさんは甘いものが大好物らしい、女性は皆そうなのかな?
「よし、決めた!すいませーん」
やっと決まったようで、リズさんは店員を呼んで季節のプレートセットと言うのを頼んでいる。俺はコーヒーとマフィンを頼んだ。この世界にもコーヒーがあったのは嬉しい誤算だった。海を越えた先にあるガーシット大陸からの交易品らしい。
デザートの種類も思っていたよりあったが、ケーキはない!と言うかここ辺境では高級店にしかない。砂糖は農業都市ルースルからの交易品になるんだがあまり量が取れないそうだ。なので辺境で代わりに使うのが蜂蜜なんだが、これも魔の大森林の奥に取りに行かないといけないのでそこそこ高い。
「次は蜂蜜取りに行こう!冬になる前に取れるだけ取るぞ!」
「え~、またですか?泊りですよね?」
「そうだ。泊まり掛けじゃないと辿り着けないだろう?ある程度は森に入らず川沿いを移動すれば行けるが、結局魔物が出てくるしな」
「それ依頼じゃなくて、単にリズさんが食べたいからなんでしょ?」
「何を言うかっ、こうやって美味しいお菓子となって皆の為になっているんだぞ!」
此処まで開き直られると、開いた口が塞がらないと言うか呆れてものも言えない。リズさんの中では行くのは決定事項のようで諦めるほかないだろう。
泊まり掛けで依頼に出る事も増えているのだが、ロイもメルも何も言わないどころか喜んでいる。当然、お土産の蜂蜜目当てである。
リズさんはあっと言う間に2人と仲良くなって、いや、お菓子で篭絡してしまったのだ!?
そんなこんなで俺に決定権など無いのである。
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