621 ホムンクルス達の宴
ある日の屋根裏部屋、あるもの達が横一列に並んで壁を眺めていた。
ただの壁ではない。自分達の主から贈られた絵がかかっている壁だ!
『ふふふふふっ・・』
『俺はこんな姿をしているか?』
『うむ!なかなかよく描けているぞ!』
『そうか?もっと凛々しいと思うが?』
『『・・・・・・ぷぷっ』』
『おい?今笑ったか?』
『笑ってない』『ない』
『レツはどうだ?気に入ったか?』
『はい!』
『そうかそうか、レツも可愛く描けてるぞ!早くクウにも見せてやりたいのう』
『へへへっ。そうですね、クウ早く帰って来ないかなあ』
『我が主は粋な事をするのう』
『何時頼んだんだ?気付かなかったぞ?』
『うむ?』
『ライ、どうだ?』
『ん~?分かんない』
『あの時ではないか?我らにダイの子守を頼んだ時があったであろう?あの時、我らはみなダイの傍に居て主に付いていなかったのではないか?』
『あったな、そんな日が!あの時か』
『その日しか考えられん。あとは大体誰かが付いていたからな』
『ハクさん格好よく描けてる』
『そうか?我もそう思う!』
『飛んでる姿が格好いい』
『であろう?ふふふっ』
『ふんっ!よく見えてなかったんだろう』
『どういう意味だ、ギン?』
『飛んでるからな、近くで見れば違うさ』
『ギンよ、自分が格好良く描かれてないからと言って我の絵を悪く言うでない!』
『事実だ』
『何だとっ!』
『どっちもどっち』
『ぷぷっ』
『『ライ!ラン!』』
『しーらない』『ない』
自分達の姿絵を見てワイワイと騒いでいるホムンクルス達だが、まさかここまで喜ばれるとはプレゼントしたリクも予想外である。
ハンコの絵を頼んだ事をきっかけに、エミール家へと久しぶりに顔を出しに行ったのだ。
エミールさん一家は皆元気で、今でも達磨落としとオセロの色付けをしているそうだ。最初ほど注文は多くないようだが、それでも十分にやっていけると言っていた。
商業ギルドとパイプが出来た事で、それ以外の仕事も細々と頼まれているらしい。その切っ掛けを作ってくれた俺に今でも感謝していると言われた。
いや、ちゃんと頼まれた仕事をしているから評価されたんじゃないですかと返しておいた。あれから何年も経っているのに、ずっと仕事を頼まれるって言うのはそういう事だと思うからね。
ミール君とエミーちゃんは結婚したらしい!ミール君は今でもパン屋さんに勤めているんだって。エミーちゃんは家を出ているが、エミールさんの手伝いに通って来ているそうだ。
目出度いのでサイクロプスの肉と魔石を5つお祝いとして渡しといた。
まあその時に何となく思い付いて、ハク達の絵を頼んだんだよな。本当にただの遊び心と言うか悪戯心と言うものだったんだ。
あんなに喜んでくれるなら、ぬいぐるみチックな絵じゃなくてもっと格好よく描いてもらえば良かったかな?
『ふふふふふっ、何度見てもいいのう』
『ん、飽きない』
『気に入らん』
『ギンよ、いい加減自分の姿を受け入れるがいい』
『そっくり』
『煩いぞ、ライ!お前だってぐぅたれてる姿がそっくりだ!』
『うむ、良く表現されておる』
『気に入ってる』
『ほれっ、ライは受け入れておるぞ』
『ふんっ』
夜が更けようともホムンクルス達の宴は終わらない。自分達の姿絵を肴に何時間でもしゃべっていられる。見入っていられるのだ。
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