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リーリンの花のように  作者: きみあきつき
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『陸、準備は出来てるの?』

『出来てる!大丈夫だよ』

『朝ご飯はちゃんと食べて行くのよ。準備してあるからね』

『ありがとう』


 ・・・・これは何だっただろうか?


『陸ちゃん、お山の神様にちゃんとご挨拶せないかんよ』

『挨拶?』

『そうよ、これからお山に登らせて頂きます、言うて挨拶するんじゃ。そしたら神様がええようにしてくださる』

『何それ?』

『ちゃんと見ていてくださるって事よ』

『ふ~ん、分かった』

『忘れんようにね。気を付けていってらっしゃい』

『行ってきます!』


 ああ、これは登山に行く日の朝だ。母さんと祖母ちゃんと話した最後の記憶だ。


 夜中にぽっかり目が覚めた。懐かしい記憶、しばらく見なかったのにな。

 目元に違和感を感じて触れてみる。俺は、泣いていたのか?

 この世界に来てから魔の大森林を独りで過ごす夜、何度も思い出していた。誰にも会えず寂しくて何度も何度も思い返していた家族との最後の会話だ。ロイとメルと出会ってからは見る事が無かったのにな、何故今頃思い出すのか。

 バージ君に、ドスさん親子に会ったからだろうか?


「は~~~っ」


 深く深く息を吐いて気を静める。もう大丈夫だと思ってたんだけどな・・

 自分が一度死んだことを理解して、戻れないのならこの世界で何とかやって行こうと覚悟を決めたけどやっぱり会いたいよな。


 隣のベットを見ると、ロイとメルがくっついて眠っている姿が目に入る。俺は2人に出会えて幸運だったよな。2人のご両親には申し訳ないけど、ロイとメルと一緒に居られて良かった。そうでなければ俺は耐えられなかったと思う。

 ロイには同情していると思われてたが全く違う。独りに耐えられなかったのは俺の方だ。2人が居てくれるからこの世界で生きて行こうと思えた。


 ドスさん親子を見て羨ましかったのかもしれないな。

 家族の事、忘れようとは思わないし忘れたいとも思わないけど、今を大切にしないとな。

 皆はどうしているだろうか?突然居なくなった俺を怒っているだろうか?兄貴も姉ちゃんもいるし父さんも母さんも寂しくないよな?

 そう言えば・・祖母ちゃんに言われた言葉を思い出す。お山の神様が見ていてくれたから、俺はあのまま死なずにこの世界に来る事が出来たのかもしれない。ん?俺ちゃんと挨拶したよな?した気がする、多分。


 ロイとメルの寝顔を見ていたら眠くなってきた。まだ夜中だもう少し休もう。

お読みいただきありがとうございました。

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