529 魔法玉の価値
ギルド長室に行くと、ドアが開いていた。何で開いているのか知らないが、中をひょいっと覗くとギルド長がソファーに座って待っていた。
俺が覗き込んでいる事に気付いて手招きしてくる。
「遅かったな?報告を受けて待っていたんだ」
「そうだったんですね、ちょっと話し込んじゃいまして・・・これお土産です。コーメッコ酒なんですけど飲めます?」
「おおっ!?あれか!?滅多に手に入らないが美味いよな!」
「ついでにはハオの茶もどうぞ」
「悪いな!リーザス国のギルド長から感謝の連絡が来たぞ。よくやってくれたな!長期依頼ご苦労だった、ゆっくり休んでくれ」
「はい。・・・何か言って来ませんでした?」
「何かとは何だ?」
ギルド長が首を傾げて見てくる。
「王宮に何度か招かれて、国王陛下と王太子とお茶したんですよね。その時にトンネルがあれば的な事をにおわされたんですよ」
「どう答えたんだ?」
「面倒なんで誤魔化して帰りました」
「それでいい。変に言質取られては厄介だからな。一応こちらからミグス様に報告はしておこう」
「お願いします。他に何かありますか?」
「そうだな、今魔法武器の製作に取り掛かっているのは聞いているか?」
「はい、試行錯誤していると聞いてますね」
「そうだ。ザザの鉱山から見つかった魔鉱石の事もあってな、苦戦しているようだ。だが試作品がもうすぐ出来そうだという話だ。それを踏まえて魔法玉を一部買い取っておこうと思う」
「分かりました。どれくらい必要ですかね?」
「こちらの資金にも限りがあるからな~、先ずは全種類50個ずつかな?」
「今出していいですか?」
「おう!支払いは振り込みでいいな?」
「構いませんよ。ちょっと待ってくださいね」
収納ボックスから種類別に分けた袋を取り出し、各50個ずつ魔法玉を出していく。壁際に控えていた職員さんが袋を持ってきてくれて、その中にちゃんと数があるか確認してもらいながら入れていく。
「これ1つでいくらになるんですか?」
「1つ金貨100枚だ」
「高っ!?高すぎませんか?」
「いや、これでも抑えた方なんだぞ?本来ならこの10倍してもおかしくないんだ。だが冒険者に行き渡らせたいというお前の意向を汲んでこの値段にしたんだ。これ以上下げるのは難しいぞ」
「え~~」
「あのな、全ての冒険者に行き渡らせたいという気持ちも分かるがそれじゃあ駄目なんだよ。基礎も出来ていない、自分の実力も分かっていない奴らに魔法武器なんて渡したらどうなるか分からんからな!無謀な事をする奴も出て来るだろう」
「それは・・・・そうかも?」
「だろう?だからAランクがちょっと頑張れば手に入る位の設定の方がいいんだ。武器の貸し出しも行うし、貸付制度もある。後は冒険者自身がどうするかの問題だ」
「分かりました。その辺はお任せしますよ」
「ああ、そうしてくれ」
「他に何かありますか?」
「うちの分はこれでいいが、領主軍の方はまた別だからな。試作品が出来たと知ったらこっちにもと言うかもしれん」
「分かりました。一旦ギルドに売ると言う事でいいですよね?」
「そのつもりだ。追加が必要なら連絡する」
「分かりました。じゃあ、失礼しますよ?」
「いや、待ってくれ!まだあるんだ」
そう言ってギルド長はさっきまでとは違い、視線を泳がせて言いにくそうにしていた。
何か嫌な予感・・・こういう勘ってよく当たるよね。
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