503 招待状
「お前、本当にSランクなんだなー」
ギルド長室に入って聞こえてきた第一声がこれだった。言うまでも無くギルド長ダグナスさんの言葉だ。
ソファーに座すように促され、出されたお茶を頂く。
「おらぁよ、顔を会わせてギルドカード見ても信じられなかったんだよ・・」
「ああ、だから監視ですか」
「気付いてたか。そうだ、どの程度かと思ってよ。気に障ったなら悪かった!」
そう言って頭を下げてきた。
「いえ、構いませんよ。さっきも倉庫で同じ事言われましたからね。魔法使いでソロ、しかも人族は珍しいって」
「ああ、お前が初めてだろうな。本当にスゲーんだな、お前。見てた奴ら全員が口を揃えて化け物だって言ってたぞ!あんなの見た事ねーってよ!」
「そうですか?そんなに変わった事してませんけどね?」
「あのよぅ。俺達は元々魔力が少ねえ。だがよ、魔法使いが全然いねえわけじゃあねーんだぜ?ちゃんと分る奴を付けたんだよ。その結果がありえねえ、信じられん、化け物ってんだ」
「そうですかー。どう思われてもかまいませんけどね」
「そんでな、王族から会いたいと言われたんだが・・・」
俺が露骨に嫌な顔をしたせいか、ダグナスさんがその後に続く言葉を呑み込んだ。会う事になるかもと思ってはいても、実際会うとなるとやっぱり避けたいよな~。
「そのよう、まさか冬になるギリギリまで帰って来ねーとは思わなくてな。向こうからいつ帰って来るんだってせっつかれてな・・」
ダグナスさんが言いづらそうに続ける。
「帰ってきたらすぐに伝えますって言ってな。さっき連絡入れちまったんだよ」
俺の眉間のしわがさらに増えていく。さっき軍人達がざわざわしていたのもこれが原因か?面倒臭せ~。
ドアがノックされ、職員さんが入ってくる。ダグナスさんに手紙を渡して壁際に控えている。
ダグナスさんが受け取った手紙を読んでいる。そして俺と同じように眉間にしわを寄せていた。すっごく嫌な予感!
「あ~、あのよぅ。国王陛下から食事会の招待状だ」
「・・・いつですか?」
「今夜だ」
ダグナスさんが渋い顔をしながら答える。俺はさらに眉間のしわを深くした。2人して天を仰ぎ見る。
職員さんがその様子をじっと見ている。何でそこにいるのかと思ったが、もしかして返事待ちなのか?
「俺1人で行くんですか?」
「いや、俺も招待されている」
「そうですか。断れませんか?」
「無理だろうな。宿に押し掛けると思うぞ?」
「そうですか」
「諦めてくれ」
どうやら大人しく付いて行くしかないようだ。迎えが来るそうなので、時間になるまで休んでいてくれとギルド内にある部屋を用意してくれた。
俺はソファーに座り一息つく。そういうの苦手なんだよなー、とは言ってももうどうしようも無い。
腹をくくって行くしかないだろう。なんとかなるの精神だ!!
俺は諦めて準備を始めた。クリーンをかけて、防具姿で行く訳にもいかないから黒いスーツに着替えた。後はローブを羽織ればいいだろう。
迎えが来るまでしばし休憩だ。
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