494 ギルド長ダグナス
兎の受付嬢さんに3階にある部屋へ案内された。ここがギルド長室かな?
中に入ると1人の獣人がソファーに腰かけて俺の方をじっと見ていた。
俺がソファーの前まで来るとその男が立ち上がって近づいて来る。
デッカっ!?俺の頭2つ分は高いぞ!?2メートル越えてないか?
手を差し出して来たので握って応える。
「俺がリーザス国冒険者ギルド長ダグナスだ。お前がSランク冒険者リクか?」
「はい。初めましてリクです」
「・・・そうか。報告書の通りだな」
報告書?Sランク冒険者が誕生すると情報が他国に伝わると言っていたな?それの事だろうか?
握手した手を離され、ソファーに座るよう促された。
さっきの兎の受付嬢さんがお茶を用意してくれたので、遠慮なく頂く事にする。一口口に含むと何とも言えない味がした。つい眉間にしわが寄ってしまう。何だこれ?お茶にしてはスカスカする?ハッカ?俺がお茶を凝視しているのに気付いたギルド長が笑い出した。
「ぐははっ!ハオの茶を飲んだのは初めてか!!」
「ハオの茶ですか?初めて聞きました」
「その茶はな、眠気覚ましによく飲むんだ!俺はよ、書類仕事が苦手でなーすぐ眠くなっちまうんだ。だからその茶しかここには置いてねーんだ」
「へー、眠気覚ましのお茶なんですね。確かにスカスカしますもんね」
「そうだろう?それにしてもお前がね~。まさか人族からソロのSランク冒険者が出るとは思わなかったぜ!?しかも魔法使いだって言うじゃねーか!エルフでもねーのによっ」
そう言ってまた大笑いしだした。そっか、エルフは魔法が得意って認識なんだな。ササリさんやウッカ様が宮廷魔導士長を務めているからだろうか?他のエルフも魔法が得意って事だよな?人里に出て来ないだけで。
ギルド長ダグナスさんだっけ?は獅子族なんだろうな。だって立派な鬣をしているもん!毛の色は焦げ茶だな。でも所々に白い毛が混じっているから相応の年齢なんだろうな。それと何と言っても特徴的なのが顔に傷がある事だな!?目の少し上から斜めに口元辺りまでがっつり傷跡が残っている。
辺境のギルド長と一緒で冒険者上がりなのかもしれないな。
「げほげほっ。すまんな、あまりに予想外だったんでよ。この目で見るまで信じられなかったんだ」
「いえ、お気になさらずに。それで依頼内容は魔物を500体討伐でいいんですよね?今もまだ狂った魔物が出ているんですか?」
「おう!最初は狂大虎が1体でよ、冒険者総出で相手して倒したんだよ。そん時は大した怪我人も出なかったんだがよ、その後立て続けに2体も狂大熊が出てよ、結構な被害が出たんだ。で、冒険者達が復帰するまで軍が出てたんだがまた出てよー。流石におかしいってんでお前さんを呼んだんだ。魔の報告は受けてたからな、報告者もだ」
「そうですか。魔が溜まり過ぎているのかもしれませんね・・」
「やっぱそう思うか?魔物を倒せばいいんだろう?」
「ええ、より強い魔物を倒した方が効果があるそうです」
「だがよ、こっちじゃ数年に1回軍総出で巨人1体倒すのがやっとだったんだ。お前の穴に嵌めるやり方はよ、俺ら獣人には合わねーんだ。魔力が少なくて魔法使いがほとんどいねーからな」
「そうですか・・・。穴に嵌めないやり方だと物量で押すしかないですかね?魔法使いがいないんですもんね」
「ああ、だから苦戦してんだ。出来れば巨人以上の魔物を中心に狩ってくれねーか?俺達はまだその先へ進めてねーんだ」
「分かりました。これから魔の大森林へ入ります。巨人ゾーンまでどれ位の距離がありますか?」
「巨人ゾーンまでだと10~15日だな」
「そうですか。では取りあえず2ヶ月後に帰ってきますよ」
「おうっ!頼んだぞ!」
「はい。では失礼します」
必要な話を終えて俺はギルドを後にした。俺が階段を下りてきた時も皆が凝視していたなー。
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