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リーリンの花のように  作者: きみあきつき
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『主、主、起きろ!?』

「ん~・・・」

『主~~~~!?』

「うわっ!?なにっ!?」

『何ではないわっ、起こしてくれと頼んだのは主だぞ。ほれ、この針がこの位置にきたら起こしてくれと言ったではないか』

「あー、そうだった。ありがとうハク」

『うむ、よいのだ』


 爆睡してしまったな。時計は7時を差している。夕食は5時から夜中までだと言っていたからこの時間まで寝ようと思ったんだった。この宿の食堂も酒場を兼ねているんだろうな。だから夜中までやっているんだろう。


 俺は部屋を出て階段を下りていく。階段を下りた左側が食堂になっているんだ。受付に居る狸さんに一声掛けて食堂に向かう。

 さっきの狸さんは宿に入った時に出迎えてくれた狸さんだろうか?この宿の従業員さんはみんな狸さんなんだろうか?


 食堂に入ると中にいた客達が一斉に見てくる。ここでもか・・・

 ドアを開けた時はガヤガヤ騒がしかったのに今は静まり返っている。

 寝る前に装備はみんな外して来たからローブのみだ。強そうだと喧嘩を吹っかけてくるらしいが魔法使いは別だと思いたい。腕自慢じゃないしな。

 皆に注目される中、食堂の中を見渡し空いてる席を見つける。テーブル席はみんな埋まっていたからカウンターだ。

 椅子に座り注文を聞きに来た狸さんにお勧めを聞いたら、大虎と大猪のステーキですと言われた。だから大猪のステーキにしといた。

 寝起きだからもっとあっさりした物が良かったけど、お勧めを聞いたのはこっちだしな。


「よう、兄ちゃん!こんな所に人族がいるとは驚きだな!その恰好は冒険者か?護衛依頼で来たんか?」

「ええ、依頼で来ました」

「ふ~ん。その恰好は魔法使いか?」

「はい。魔法しか使えませんね」

「そうなんか・・・」


 近づいてきた獅子族っぽい男性に魔法使いだと言うと、興味を無くしたように席に戻って行った。多分獅子族だよな?犬族みたいだけど、(たてがみ)って言うの?頭のてっぺん辺りのフサフサ毛がリーゼントみたいになっている。

 俺が魔法使いと言うのが聞こえたのか、こっちを向いていた客達が興味を無くしたように自分達の会話に戻っていった。

 事前に話を聞いていて良かった!下手な事は言えないな、これは。


 気になるのは鎧を付けている冒険者達だろうか?腕や足に包帯を巻いている人達が多いな。狂った魔物がどれぐらい出ているかは分からないが、被害が発生しているのは本当のようだ。

 メラットさんも最近は武器防具類がよく売れると言っていた。それに魔法薬もだ。今回ユダンさんが持ってきた商品も魔法薬が多いと聞いた。

 普通は武器防具をうちの店で買う人は少ないのに去年からよく売れるようになったと言っていたな。消耗が激しくてドワーフ達が作るのが追い付いていないのかもしれないな。

 俺が狂った魔物が出ている話をしたら驚いていたな。魔の大森林がすぐ傍だし、魔物が出るのが当たり前だからあまり気にしてなかったのかもな。

 それにこの国は強者主義らしいから魔物に苦戦したとかそういう話はあまりしないのかもしれない。冒険者同士とか軍人同士とかなら話すだろうけど。


 出て来た大猪のステーキとサラダ、パンを出来るだけ急いで食べて部屋に戻る事にした。

 もう話しかけられる事は無いと思うけど、落ち着かないんだよな。

お読みいただきありがとうございました。

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