450 雑談
「ササリ様、先ほどのリクさんのお話なのですがリクさんの魔力量はどれほどあるのですか?魔の大森林の奥地を独りで攻略できるほどの力とはどれほどの物なのでしょうか?」
「そうさねー、あたしとあの子の差はきっと果てしないほど違うだろうね」
「果てしないほどですか?どれ位か分からないと言う事でしょうか?」
「そういう事だね。ただまあ、知らない方が良い事もあるからね」
「・・・ササリ様は陛下、父上達にもリクさんの事を詮索しないように仰っていましたよね?ササリ様は何を知ってらっしゃるのですか?」
「それを聞いてどうするんだい?知ったら引き返せなくなるかもしれないよ?」
「それはどういう意味でしょうか?」
「あたしはね、好奇心旺盛なのさ。でもね、知らなきゃ良かったと思ったのは初めてさ。そういう存在さね」
「知らない方がいい存在ですか?リクさんは?」
「そう思うね。あの子は特別なのさ、全てがね。だが、今この時にあの子がこの世界に現れたのには理由があるはずさ」
「今この時にですか?魔と言う物の存在をもたらしたという意味ですか?それとも今回の魔法玉を我々の手にもたらしたという意味ですか?」
「そういう事も含めて全てだね。これからもあの子がもたらしてくれる情報、素材、知識、あらゆるものさね」
ササリ様はローブのフードを深く被っているから、その表情は読み取る事は出来ない。それでも時々遠くを見やる仕草を見ていると、これ以上踏み込んだ事を聞いてはいけないのだと思った。
だがその一方でその何かを知りたいと思う僕もいるんだ。ササリ様に知らなければ良かったと思わせる存在とはいったいどういう人なのだろうか?
クルスルス国、いや、この世界で初めて魔の大森林の奥地を攻略できる存在。新たな情報を、素材を、新たな商品を生み出すリクと言う1人の冒険者。
リクと言う優秀な冒険者がいる事は早い段階から王宮でも知られていた。ササリ様が新たにリーリンの花採取を任せる冒険者として。だがいくら素性を辿ってもこの辺境の街ラットルで初めて存在が確認された人物だった。
クルスルス国では例え孤児でも孤児院に入れば行政がその存在を把握する事が出来る。全く知られていない国民などほとんどいないと言っていい。
突然辺境の街に現れ、あっと言う間にAランク冒険者にまで上り詰めた人物。
王宮が更に詳しく調べようと動き出した時、ササリ様からくぎを刺されたと父上からお聞きした。あの子の事はあたしに預けてくれと言われたそうだ。
父上が理由を尋ねたら、国のためだと一言言われたとそう言っていた。
今までのリクさんの活躍を思えば確かに国の為に、世界の為にあらゆる物をもたらしてくれる存在となっているが。
「ラデス殿下、あの子の事が知りたいかい?」
「正直に言えば、知りたいです。僕も好奇心が旺盛な方なので」
「そうかい。なら救世主とでも思っておけばいいさね」
「救世主?」
「今のあの子はまさにそうだろう?」
「それは、はい。そう思いますが・・」
「知らなくていい事もあるさね。知らない方が幸せな事もね」
「はい」
どうやら僕もくぎを刺されてしまったようだ。これ以上はいけないよ、とやんわり線を引かれてしまったな。
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