376 げんなり
王都に出発する早朝、6頭立ての馬車が家の前に停まっていた!?しかも馬車に王家の紋章がはっきりくっきり刻まれていた!これは目立つなー・・・
馬車の前と後ろには護衛の兵士達が5人ずつ付いている。
馬車から降りてきたラデス殿下に促され、俺はいやいや、メルはニコニコで馬車に乗り込んだ。
外で見送ってくれているロイの顔が怖いです。メルはロイの様子に気付きもせずに無邪気に馬車の窓から手を振っている。
昨日ロイにライ入り魔石を渡しに行ったらしつこく念を押されたんだよね。メルとラデス殿下をこれ以上近づけるなってさ!でももう手遅れの様な・・・
メルは完全にラデス殿下を信頼しているというか、よく家に来ていた事で最初の頃のように緊張もしなくなっているしな。今も楽しそうに話している。
そう言えばラデス殿下っていつまで辺境にいるんだ?このまま王都に帰って戻って来ないのかな?
「ラデス殿下、このまま王都に帰って辺境には戻らないんですか?」
「いえ、まさか!ちゃんとトンネルが出来上がるまで見届けなければいけませんからね。また皆さんと一緒に辺境に戻ってきますよ」
「そうですか。トンネルはいつ頃出来上がるんですかね?」
「報告では秋頃の予定ですね。冒険者の皆さんが本格的に利用できるようになるのは来年からになるでしょうね」
「そうですか」
そうかー、一緒に戻って来る事も決定済みなのかー。俺の意見とかそう言った事はやっぱり聞かれないんだな。
辺境から暫くは野宿になるんだけど、そこでちょっと揉める事になった。
王家の馬車もササリさんの馬車同様中で眠る事が出来るような仕様になっているんだけど、ラデス殿下がメルに使って欲しいと譲らなくてね。
いくらなんでもそれはマズいので丁重にお断りしてもなかなか納得してくれなくてさー。護衛兵の隊長?さんがラデス殿下を何とか説得してくれて、俺とメルはかまくらの中で寝る事が出来たんだ。
説得してくれたお礼に護衛兵の人達の分もかまくらを作ってあげたら凄く喜んでくれた。こちらこそありがとうございますだよ!
ご自分の立場というものをちゃんと分って欲しいよなー。いくらなんでも王族を差し置いて馬車の中で寝る訳にはいかないんだからさ。
交易都市ラードンに着いた時にはホッとしたよ。ここからは毎日宿場町があるからね、揉める事ももうないだろう。
だがしかし、やっぱりと言うか何と言うか俺達は王都に着いてそのまま王宮に連れて行かれた。
ガロさん達と同じ宿に行く予定なんですけどって言っても、母上も待っていますからとか部屋は用意してますからとか言われてさ。
そりゃメルはアネッサ王女に会わせたくて連れて来たけど、それと王宮に滞在するのはまた違うでしょうにっ。俺はただの冒険者なんですよ!!
何なんだろうね?この王族もしくは権力者特有の押しの強さと言うか、物腰は柔らかいけど拒否できない圧と言うかさ。どうにも苦手だわ。
ガロさん達に合わせて早く王都に着いた事で、王族と関わる時間も多くなりそうで気分も落ちるというものだ。
救いがあるとしたらメルが喜んでくれている事だろうな。ゆらゆら揺れる尻尾を見ていると癒される。
お読みいただきありがとうございました。




