357 ハク
俺は白竜のホムンクルスを受け取りにササリさんのお店を訪ねた。事前に連絡したら出来上がっているからいつでも取りに来いと言われたのだ。
「時間かかりましたねー」
「そうさね、ドラゴンのホムンクルスなんて作った事が無かったからね。より慎重にもなるってものさ」
「ありがとうございます」
差し出されたフラスコを受け取り、何時ものように栓を開ける。中から黒い物体が出て来て形が出来上がるのを眺めていたんだが、様子がおかしい?
基本的にホムンクルスの色は黒いんだが、形が出来上がって来るにしたがって白く色が変わってきているんだ。完全にドラゴンの形になった時には真っ白になっていた!?白竜のホムンクルスだから白くなったのか?
俺も驚いたが、ササリさんなど途中から微動だにしていない。完全に固まっているな!!
ホムンクルスドラゴンはきょろきょろと辺りを見渡し、俺を見つけて見上げてくる。あれだな、元の凶悪なドラゴンの面影は全く無いな。どちらかというと、よくぬいぐるみにされているような丸っこいフォルムだ。大きさは双子羊よりも小さい?何でだ?魔物の強さによって大きさが変わるんじゃないのか?
俺はそっとドラゴンに手を差し出す。いきなり触れたら食われそうだと思ったのだ。フォルムは愛らしくても元はドラゴンだからね。
ドラゴンが首を伸ばして俺の手に触れてくる。俺の手のひらに顎をのっけて見上げてくる。うむ、可愛いな!!
「ササリさん、羊より小さいのは何でですかね?」
「・・・・」
「ササリさん?おーい!!」
「はっ!?なん、何で色が白いんだい!?」
「いや、俺に聞かれても。白竜だからじゃないですかね?」
「そういう事じゃないんだよっ、どんな素材を使ったって普通は黒いんだよ!?あんたに作ったもんばかりなんで色が入るんだい!?」
「さー?俺は何もしてませんよ?」
「はぁ。何なんだいあんたはっ」
「えー」
そんな事言われてもな?俺だって予想外なんだし。
「大きさだって普通はもっと小さいんだ。最初からこれ以上大きかったらその方がおかしいさ。それに内蔵されている魔力は強大だよ!」
「そうなんですか?ならいいかな」
俺はドラゴンを抱き上げてみる。やっぱり重くないな。
「お前の名前はハクだよ。これからよろしくな」
白竜の「白」からとってハクと名付けた。
『うむ。主よ、よろしく頼む』
「・・・・・」
今まで出来上がってすぐからこんなにはっきりしゃべった奴がいただろうか?双子羊だって数日かかったぞ?しかも見た目に反して重低音な響きだな!?丸っこいフォルムとのギャップが凄い!!あの銀狼の王より低い声だな。
『主よ、先客がいるようだな』
「先客?ライの事か?」
俺はライを影から出してハクに会わせる事にした。だが呼び掛けてもライが出てこないのだ。何度か呼びかけたがうんともすんとも言わない。
「ササリさん、ライが出てこないんですけど?」
「そんなの知らないよ。大方ドラゴンにビビっているんじゃないかい」
「ああ!でも一緒に影に入る訳ですし大丈夫かな?」
『主、我リズに付く』
やっと出て来たライがそんな事を言い出した。
「リズさんには既にランが付いているだろう」
『交代する』
「それはランに聞いてみないとなー?」
『ライとやら、よろしく頼むぞ』
ハクの言葉にライがビクリと身体を震わせる。やっぱり怖いのか?見た目のフォルムとか関係ないんだな。
暫く固まっていたライだが、首をカクカクと動かして影に戻って行った。今のは頷いたと言う事だろうか?ハクが来た事で双子羊の態度が大人しくなるかもしれないな。
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