332 トンネル工事
魔の大森林でのトンネル工事が本格的に始まった。
今回は護衛を辺境伯領主軍が務めるため冒険者は俺しか参加していない。あとは王都から来た土魔法が得意な宮廷魔導士とドワーフ達だ。前回調査に参加した人達と新たに参加している人達がいるようだ。
正直何となく見た事あるなぐらいで全く覚えていない。辛うじて調査団のリーダーのバディスさんとドワーフのリーダーのドッドさんだけは覚えていた。
今回もこの2人がそれぞれのリーダーを務めるようだ。
ラデス殿下もたまに見に来ている。流石に魔の大森林の奥、それも巨人ゾーンの手前だからね、なかなか頻繁には来られないようだ。何かあったら一大事だもの!
俺はここで雪が降るまで缶詰めになる。はぁ、皆に会いたいよ。
リズさんとロイの事も気になるし。何なら『月にてらされし竜』の子達と一緒に行動してもいいですよと提案したが、ちゃんと気を付けるから大丈夫だと言われた。分かってはいるけど不安は消えないんだ。まだホムンクルスも出来上がっていないし。今も俺の影に入っている。
俺はもっと強くならなきゃいけないな。力じゃなくて心の方ね。気持ちの持ちようだとは言うけれど、ついつい不安な気持ちが芽生えてくるんだ。大丈夫大丈夫、なんとかなる、なんとかなる。そう何度も言い聞かせているんだけどね。
このトンネル堀りって完全に俺頼みだな!?
穴を掘り進めているのは俺だけだ!以前にザザの街の鉱山でやったように太い土槍を横向きに出してドリルのように回転させて掘り進めている。但し今回は土槍を6本出して屈まなくても通れる高さに掘っている。
じゃあ他の人達は何をしているかと言うと、俺が掘った穴を宮廷魔導士達が綺麗に整えて進んでいるんだ。俺がガリガリ削った所を滑らかにする作業を交代しながら行っている。
ドワーフ達は俺のすぐ後を付いて、俺が粗く削った場所で出っ張り過ぎた所をつるはしで叩いたり方向を指示したりしている。
何ともまあ、効率的ですね。工事参加者が口を揃えて俺が居てくれて良かったと言ってくれる。そりゃそうだろうなー。
宮廷魔導士達の魔力量を考えると、俺が1日で掘り進める距離を多分交代で行っても3日以上かかるんではなかろうか?
でもこの調子なら雪が降る前に終わるんじゃないの?亜熱帯ゾーンの入口付近までなら。そうドワーフのリーダードッドさんに聞いたら、俺もそう思うって言われた。
あくまで終わるのはトンネル掘りだけだけどね。
トンネルの側面を綺麗に整えた所に宮廷魔導士達が魔法陣を描き込んでいくんだ。強化と魔物避け、灯りそれと風魔法の陣だと聞いている。風魔法は空気の循環だな!この魔法陣に関してはササリさんも協力するそうだ。元宮廷魔導士長だもんね。
魔の大森林の魔力を直接取り込むようにする事で、魔石の交換をしなくて済むようにするらしい。
今はまだトンネルの入り口にいるんじゃないかな?トンネルの入口をかまくらで囲っていて、そこに魔道具を設置して入れる冒険者を選別するらしい。トンネルの深さは建物2階分位でなだらかな下り階段にしている。
入口には領主軍の為に大きめのかまくらを3つ作ってある。そこを拠点に魔物狩りを行うと言っていた。
あとはトンネルの所々に広場を設けて冒険者達の休憩所にする予定でいる。そして工事の間は俺達が寝泊まりする所でもある。風魔法陣はまだ描き込まれていないけれど、そこは魔道具で補っている。風が出る魔道具は風魔法陣を描き込んだ後もそのまま残すそうだ。万が一の時に魔道具か魔法陣、どっちかが残るようにだそうだ。
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