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収穫祭を存分に楽しんだ俺達は辺境に帰る事にした。
久しぶりの我が家ではマイルズさんとマトさんが出迎えてくれた。
「「お帰りなさいませ」」
「「「「ただいまー」」」」
「お疲れでしょう?すぐにお風呂のご用意をしますね」
「急がなくてもいいですよ、マトさん」
「旦那様、商業ギルドより伝言を預かっております」
「え?伝言?」
「はい。戻られましたらすぐに商業ギルドまでお越しいただきたいとの事です」
「すぐに?」
「はい」
え~~。今帰って来たばっかりなのに!?でもすぐにって事は急ぎなんだよな?商業ギルドで急ぎって何だ?冒険者ギルドなら分かるけどさ。
俺は仕方なしに商業ギルドへ向かった。
ギルドの中へ入ると待ち構えていた職員さんに案内され、ギルド長室に連れて行かれた。
「こんにちは。何か御用ですか?」
「ええ。お疲れのところご足労頂いて申し訳ありませんね」
「そうですね。急ぎの用なんですか?」
「はい。物凄く急いでおります!リクさんは色々な事をお考えになりますね?」
「・・?何の事です?」
「何でもモグラ捕りなる物を開発したとか?」
「ああ。開発なんてしてませんよ!モグラが多くて困るって言うんで、罠にかけてみたらどうかと言っただけです。箱を作ったのも農家さんですし」
「ですがアイデアをお出しになったのですよね?」
「まあ・・。何か問題でも?」
「ええ。農業都市ルースルの商業ギルドから早く商品登録して欲しいと催促の連絡がありました。モグラ捕り箱の効果が凄いようで、農家からの問い合わせが殺到しているそうですよ」
「へー。そんなにですか?」
「そんなにです!今は先行して箱を作っているそうです。リクさんが商品登録してくれないと、何時まで経っても売る事が出来ません」
「そうですか。でもすぐに効果が無くなると思いますよ?」
「どういう事ですか?」
「モグラだって馬鹿じゃないって事です。今まではそんな罠が無かったから引っかかっているだけで、その箱は危ないと分かれば入りませんよ」
「なるほど。そこは向こうのギルドにも伝えておきましょう。ですが商品登録はして下さい。まだ暫くは効果もあるでしょうしね」
「分かりましたよ。あ、これお土産のハムです」
「これはありがとうございます!因みに、箱の効果が無くなったら次は何がいいですかね?」
「う~ん?後は毒団子くらいしか思いつきませんね」
「毒団子ですか?」
「ええ。ただ他の動物が食べたり、万が一人の口に入ったら危ないので難しいと思いますよ。モグラだけが食べる毒団子なんて作れないでしょうし」
「それは確かにそうですね」
「だから箱と、モグラの嫌いな薬草を燃やす事を地道に続けていくしかないんじゃないですかね?」
「分かりました。貴重なご意見ありがとうございます。もし他に良い方法があったらその時は是非我々に教えてください」
「無いと思いますけどね?その時は教えますよ」
「よろしくお願いしますね」
こうして何時ものように渡された書類を記入し、ついでにお土産を渡して回り家に帰った。
お読みいただきありがとうございました。




