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あれから半年、すでにランクはEに上がっている。受けられる依頼も増えて順調に収入を増やしている。
ロイは今でも剣術教室に通っていて、メキメキと力を付けてきている。
冒険者仲間も出来たらしく楽しそうだ。
メルはいつの間にやら『熊のねどこ』の看板猫娘になっている。宿のお客さん達に可愛がられて、お菓子を貢がれているようだ。可愛いから仕方ない!
「リクさん、ちょっといいですか?」
「モリーさん何ですか?」
依頼書を見てたらギルド受付嬢のモリーさんに声を掛けられた。
「ちょっとお願いがありまして、奥の部屋でお話したいんですけど」
「いいですよ」
何の話だろうな?俺なんかしたかな?今までの事をざっと思い出してみるが、心当たりがない。もしかしてあれか!告白的な!?いやいや、早まるな!モリーさんはまだ仕事中なんだから、いくら何でもそれはないだろ・・・ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ期待しながら付いて行く。
「こちらに座っていて下さい。今お茶を入れてきますね」
通された部屋は6畳ほどの個室だった。中に入ると椅子とテーブルがあるだけだ。
「お待たせしました。どうぞ」
「ありがとうございます」
出されたお茶を飲んで一息つく。あれだな、ハーブティーに近いな。
「それでですね、今回お呼び立てしたのはリクさんのギルドランクについてです」
「は?ギルドランクですか?」
全然違った・・全く甘酸っぱさも何もなかった・・
ちょっと恥ずかしい。俺のドキドキをかえしてっ!
「リクさんをDランクに上げてはどうかという意見が出ているんです」
「はぁ・・」
「リクさんはロイ君が剣術教室の日、魔の大森林の奥に独りで入っていますよね?魔の大森林に単独で入れて安定して魔物を狩れる人がEランクでいいのか?と言う話なんです」
「なるほど」
「Dランクまででしたら試験なしで上がれますから、如何ですか?」
「俺としては問題ありませんよ。ギルドで認めてもらえるなら」
「そうですか!良かったです。リクさんがロイ君に合わせているのは分かっていましたから、断られるかもと思っていました」
「いえいえ、ランク外の素材持っていくとザックさんに睨まれるので助かります」
「ふふっ、そのザックさんなんですよ!強く推しているのが」
「そうなんですか!?」
「ええ、あいつのランク上げてもっと依頼受けさせろって。今のままランク外ですと依頼料も付きませんしね。ではギルドカードをお貸しください。手続してきますね」
なるほどねー、まさかザックさんとは。まあ、依頼として受けた方がお得だよな。
俺はギルドカードを返してもらって、宿に戻る事にした。
お読みいただきありがとうございました。
 




