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「どういう事ですか?」
「さっき説明した通りあんたほどの魔力の持ち主を知らないって事は、そんな規格外の魔力を使ってホムンクルスを作った事が無いって事さ。通常出来上がる時の倍かかったからね。どうなってるのか分からないって事さ」
「それって使えるんです?」
「さてね。まともに育つのかも分からないね」
「えー、それは困るんですけど!」
「そんな事言ったってね、まあ大丈夫じゃないかい?内包された魔力が多かっただけの違いさ」
ササリさんは面倒臭くなったのか何なのか投げやりな言葉で言い放った。
だけの違いって言われましても・・・すっごい不安なんですけど!!俺は再びフラスコ一杯に膨らんでいる物体を見つめた。
グリフォンと狂大熊の魔石を使った訳だが、どっちがどっちだか分からない。両方黒いからね!
「覚悟はいいかい?出すよ?」
覚悟も何もあれだけ脅されてすぐにハイとは言えない。
しかしじっと見ていてもどうなるもんでもない訳で、俺は深呼吸し覚悟を決める事にした。
「お願いします」
「はいよ」
ササリさんがフラスコの口に捻じ込まれていたコルクのような栓を外す。
すると中の物体がウゴウゴとフラスコの口から出て来た!?これはあれだな、ドライアイスの煙がモクモクした感じの物体版だ!
そして全ての物体が外に出ると机の上でまたもウゴウゴしだした。それは次第に形を作って行き、角が1本ある熊とグリフォンになった!!あれ?狂大熊って角あったっけ?
大きさは熊がチワワ位で、グリフォンが成長したパグって感じかな?二回り位違うな。これも元の魔物の強さが影響しているのだろうか?
「熊に角が付いてますけど?しかもホムンクルスって黒だけじゃないんですね!」
「いや・・普通は黒なんだよ?それと角があるのは、まあちょっとした手違いさ」
「え?でも色付いてますよね?しかも手違いって?」
「・・・ちょっと手が滑っちまってね、あんたに貰ったグリフォンの爪を磨り潰した粉が入っちまったのさ。まさか角が出るとはねー」
そう言ってササリさんは視線を明後日の方に向けた。つまりグリフォンの爪が変な作用を及ぼしたって事か?まあ角ぐらいいいですけどね。
色についてはササリさんのホムンクルスが黒い狼で影に潜むと言っていたから黒一色だと思っていたが、熊は赤黒くグリフォンは紫黒だった。どちらも黒の方が強いがよく見ると赤と紫が入っているのが分かる。
2体とも俺の事をじっと見ている。・・・・これはどうすれば?
俺は恐る恐る2体の方に手を差し出してみた。
すると熊は当然4足歩行でノタノタと、グリフォンはトテットテッと若干跳ねるように近寄って来て一度タメを作ったのち俺の肩に飛び乗って来た!?
おおっ!?おも・・くない?大きさの割に重さを感じないな?
「ホムンクルスって重くないんですね!」
「まあ魔力の塊だからね。それにしても、ほんとに規格外だね!最初からそんな大きさにはならないんだよ?普通は何年も育ててその大きさになったら成功なんだ。もっと小さい状態で止まっちまう方が多いんだからね」
「そうなんですねー」
「はぁ。あんたには何を言っても通じないねぇ」
ササリさんは疲れたように椅子に腰かけた。何だかすいませんね!
しかしこうして自分の肩の上に乗っている姿を見ると可愛く思える。俺は2体を交互に撫でてみる。するとさらに身を寄せて身体を擦り付けてくる。
何これ!?めっちゃ可愛いんですけど!!
お読みいただきありがとうございました。




