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坑道の中をドワーフ達の案内に従ってどんどん進んで行く。既に分かれ道をいくつか入ってここがどの辺なのか見当もつかない。
「おい、そろそろじゃねーのか?」
「そうなんだがよ。何の音もしねーんだ」
「確かに静かすぎるな」
「もしかして間違えたか?」
「んなこたーねえ!地図通りだぞ!!」
ドワーフ達が揉めている。静かすぎるって言うのは岩ワームが居るのにって事だろうか?俺にはさっぱり分からない。リズさん達も黙ってドワーフ達の話し合いが終わるのを待っている。
1人のドワーフが岩壁に耳を付けて音を聞いている。あれで分かるのか?俺もやってみようかな?
試しに耳をくっつけてみたが・・・何も聞こえない。何故かリザロに頭を叩かれた。ドワーフ達もこっちを見ている。ちょっと視線が厳しい。
いや、馬鹿にしたわけでも遊んでいるわけでもないんですよ!
その後さらに奥まで進みちょうど今採掘している所まで辿り着いた。ここで行き止まりだ。
ドワーフ達はここから崩落事故があった方角に掘り進めて行く事に決めたようだ。
これって手掘りじゃなきゃいけないのかな?俺の土魔法で何とかならないか?
「なあリザロさん」
「リザロでいい」
「えっ!?」
「何だ?」
「いえ、じゃあそう呼ばせてもらいます。それで、土魔法で掘る事は出来ないんですかね?」
「崩落しないならな」
「う~ん、周りを固めながら掘るとか?」
「ドワーフが許さんだろ」
「そうですか・・」
しかし手掘りじゃ時間がかかりすぎて全滅してしまうんではなかろうか?
「おい!お前土魔法使えんのか?」
「はい、使えますよ」
「ならこの辺掘ってくれねーか。ここらはしっかりしてるから崩落する事はねえ」
「分かりました」
俺は太い土槍を思い浮かべ、いつもは下から突き刺すのだが今回は側面から中に抉るように土槍を形成した。試しに作った土槍に回転を掛けてみた。電動ドリルで穴を開ける様を想像して。
おおっ!?いいじゃないの!俺はもう3つ、お互いが接触しないように間隔を開けて土槍を形成し同じように回転を掛けた。
土槍1本だと太くしても直径1m位だからそれを4つも出せば人が通れるだけの穴は開くだろう。普通に土槍を出すと大体直径10cm位だから10本を一纏めにすれば単純計算で1mではないかと言う事だ。合ってる?
ちょっと狭いかな?
「もう1本出した方がいいですかね?」
ん?返事がない?俺は後ろを振り返り皆の方を見た。
皆の目が点になっている。いや、比喩じゃなくて本当に!目を見開いて固まっている。え?何があった!?
「どうしました!何があったんです?」
「お、おう!」
「いや、うん」
皆何とも言い難そうにそわそわしている。もしかして・・・
「あ!トイレですか?穴掘りましょうか?」
「「「違うわっ!?」」」
え~、じゃあ何なのよ!納得いかないがいいから穴掘りに集中しろって言われたのでそうする事にした。
お読みいただきありがとうございました。




