14 悲しい現実
前方に煙のようなものが昇っているのが見えた。もしかして無事な人達がいるのかもしれない!出発してからまる一日走りっぱなしで辛いが、スピードを上げて先を急ぐ。
やっと辿り着いた先に見えたのは村全体が焼け落ちている姿だった。村を囲う様に巡らされていたであろう柵も、家も何もかもが焼け落ちている。
「俺が見てくるから、ここで待っててくれ」
2人を連れて行くのが戸惑われてそう告げたのだが、ロイは首を振って拒否してきた。仕方ないのでロープを解いて2人を下すと、ロイは即座に走り出した。慌ててメルを連れて後を追う。
「お父さん!お母さん!どこ!?」
村中を走り回って何度も何度も呼び掛けている。
やがて一軒の家の前で立ち止まる。焼け落ちているから元家と言った方がいいのだろうが、多分ここがロイとメルの家だったのだろう。柱だっただろう物からまだ煙がくすぶっている。
「お父さん、お母さん・・・・」
ロイは拳を握り締めて、唇を嚙み締めて泣くのを堪えている。
俺は何と言葉をかけていいか分からず、そっとロイの頭を撫でる。
「ロイ・・」
「ウゥ~ッ、ヒック、ヒック・・・」
堪えていた涙がボタボタ落ちて地面を濡らしていく。よく分かっていなかったメルもつられて泣き出す。
「にちゃっ・・ふぇぇっっ」
腕の中にいたメルがロイに抱き着こうと腕を伸ばすので、下におろして2人まとめて抱きしめる。今はこのまま泣かせてやろう・・
泣き疲れて眠った2人を抱き上げて歩き出す。村の入口まで戻ってくると、草原側に土かまくらを作る。煤で汚れた2人にクリーンをかけてやり中に寝かせる。すでに夕暮れ時、今日はここで1泊しよう。
夜、焚火にあたりながらこれからのことを考える。
明日は辺境の街ラットルに行こう。もしかしたら逃げ延びた人達がいるかもしれない。それからこの村の事を伝えて、しばらく冒険者として働こう。お金も稼がなくちゃいけないしな。それに手持ちの魔物素材を売れば多少のお金にはなるだろう。
問題はロイとメルだ。泣き腫らして真っ赤になった目元が痛々しい。正直かなり情がわいてきている。それに何よりずっと独りで寂しかったのだ。2人に出会えて、会話ができてどれだけ嬉しかったか!
明日になったら俺と一緒に居てくれないか聞いてみよう。拒否されたら悲しいが、その時は諦めよう。
お読みいただきありがとうございました。




