【バージの苦難7】
『ご領主様への献上品』この言葉が俺の肩に重く圧し掛かっている。
商業ギルド長から話を聞かされてしばらく経つが、未だにどうして俺がって思いが強い。
バネを作る手も止まりがちで溜息しか出てこない。
本来ならシャズとビリーの面倒も見てやらなきゃならないんだが、自分の事で一杯一杯で気が回らない。
「バージ」
「親父?」
「お前いつまでそうしてんだ?自分がどれだけ凄い仕事に携われているか分かってんのか?」
「・・っ!分かってるよ!!分かってるから悩んでるんだろっ!」
「何を悩む必要があるんだ?このバネを一から作り上げたのはお前だ。もっと自信を持て!」
「そんな事言ったってよぅ・・」
「いいか?俺たちゃ物作りの職人だ。相手が誰であろうと自分が今できる最高の物を提供するんだ。その事を忘れるなよ?後から後悔するような物だけは作るな」
「・・・・」
そう言って親父は自分の作業場に戻って行った。
俺が今できる最高の物を作る、か。それがバネでも?剣でも槍でもないただの小さい部品だ。それでもか?
親父の話を聞いても、俺の中でまだ納得しきれないモヤモヤした気持ちが拭えない。
今のままじゃ駄目だな・・ちょっと散歩にでも行くか。気分を切り替えたい。
俺が作業場を出て行く姿を親父は黙って見ていた。
シャズもビリーも心配そうな顔で俺を見送っていた。
情けねえな。弟分にあんな顔させてよ、情けねえ。
そんな不甲斐ない自分が嫌で足早に店を出て行く。
気が付いたら西門を出て川の前まで来ていた。門を出た記憶が無いんだが・・
門から離れた所まで行き川べりに座り込む。
何も考えず、ただ川の流れをぼーっと見つめる。
不意にリクの顔が浮かんだ。今一番思い出したくない野郎だ!
こいつの顔を消したくて別の事を考えようとするが浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返す。しつけえ野郎だ!!
あん?何だって?浮かんだ顔が何かを言っている。
『本当は背もたれも欲しいんですけどね』
背もたれ?そう言えば奴に座席を引き渡した時なんか言ってたな?
そのまま記憶を掘り返そうとするがなかなか続きが出てこない。
背もたれ背もたれ・・単語を繰り返し記憶を探る。
ああそうだ。背もたれが欲しいが公共の馬車にはさすがに付けられないとか言ってたな。・・・背もたれか。
座席と同じ要領でつくりゃいいのか?座席に座った時の弾力のある感じにすりゃいいのか?
いよし!いつまでもここに座ってたって埒が明かねえ!
いっちょやってみるか!
何故かモヤモヤした気持ちが薄れた俺は店に戻る事にした。
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