105 リザロという男
リズさんの肩を掴んだ手の持ち主は息を呑むほど美しい男だった。
ストレートの濃紺の髪を腰近くまで伸ばし、薄紫色の目は目尻がキリリとして引き結んでいる唇と相まってキツめの印象を受ける。
リズさんも美しいが、この男も負けず劣らずの美男子だ。
「リズ?」
名前を呼ばれたリズさんがゆっくりと後ろを振り返る。ギギギギギギッっとまるで錆びついたロボットが動くみたいな音が聞こえそうだ。
何て言うかリズさんと男の容姿だけを見ればドラマのワンシーンのように見えるが、リズさんのぎこちない動きで台無しになっているな。
もしかしなくても2人は知り合いだよな?まさか恋人とか?
2人の目が合った瞬間、男の表情が一変した!
目尻がだらしなく下がり、口元がふにゃふにゃと緩んでいる。さっきまでそこに居たはずの美男子の面影は全くない。
「リズ!リズー会いたかった!」
「うわっ!放せ~」
「リズー!!」
男はリズさんを抱きしめスリスリと頬ずりを繰り返している。リズさんが何とか逃れようと手足をバタつかせているが、男の身体はビクともしない。
あのリズさんの馬鹿力でも逃れられないとは凄いな!
そんなにガタイがいいようには見えないが、それなりに鍛えているという事か?いわゆる細マッチョと言ったところだろうか?
ローブを着ているから魔法使いだとは思うんだけど。
俺が男の考察をしている間も2人の攻防は続いている。
ギルドに居る冒険者達も2人のやり取りを唖然として見ている。
このまま見ているべきか止めに入るか悩んでいると、また1人男がギルドから出てきた。この人は間違いなく前衛だな。見るからに筋肉隆々、鍛え上げられている。着ているシャツがはち切れそうだ!
「いい加減にしないか!リザロ!」
男はリザロと呼んだ元美男子の襟首を掴んでリズさんから引き剝がす。
「あっ!何をする!」
「恥ずかしいから止めろ!」
男から引き剥がされて一息ついているリズさんに近づいて声を掛ける。
「リズさん大丈夫ですか?」
「ああ、酷い目に合った・・」
襟首を掴まれて暴れていた元美男子の動きが止まり、筋肉隆々男を無理やり引きずりながら俺達の方へ近づいてくる。凄いな!?どこにそんな力があるのだろうか?
「お前は誰だ!リズとどういう関係だ!?」
俺を睨みつけながら聞いてくる。
「この男の事はほっとけリク」
俺が答えるより先にリズさんが口を挿む。
「ただの友人です」
じっと睨まれているのに耐えきれず答えた。ほっといたら答えるまで付き纏われそうだし・・
「本当にただの友人なのか?本当の本当に?」
「本当です」
何度もしつこく聞かれるが、答えが変わらないと分かるとやっと信じてくれたようだ。
その間ずっと眉間にしわを寄せた筋肉隆々男に襟首を掴まれたままだ。
どういう状況なんだろうないったい?
リズさんの様子を見る限り説明はしてくれなさそうだ。
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