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特級探索師への覚醒 ~蜥蜴の尻尾切りに遭った少年は、地獄の王と成り無双する~  作者: 笠鳴小雨
第4章 マジョルカ編(下)

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第174話



「数が……多すぎる」


 テンジは炎鬼刀で子飼いモンスターを一心不乱に斬り伏せながら、小さな声で呟いた。


 ちょうどリィメイ学長がこの戦場に吹き飛んできた時間を境に、子飼いの数が目に見えて増えていたのだ。斬っても、斬っても、森の奥から子飼いの群れがどんどんと押し寄せてくる。

 もう何体倒したのかも分からないほどに、テンジの閻魔の書には討伐ログが延々と流れ始めていた。


(一体、奥の戦場はどうなっているんだ。リィメイ学長無しで大丈夫なのか?)


 そんな考え事をしていた、まさにその時であった。

 ザザッと雑音交じりの通信音がオレリアから聞こえてきた。


 初めて聞くその音に僅かに驚いたテンジ。

 しかし、その通信が何なのかを次の言葉で知る。


『メイン級モンスターの討伐は不可能。繰り返す、メイン級モンスターの討伐は不可能――』


 厳つく底冷えするようなその冷静な声には聞き覚えがあった。

 はじめてこの第75階層に来て、テントの中でリィメイ学長と対等に会話をしていたロシアの総隊長の声だ。だがその声はどこか、観念したような弱弱しい声にも聞こえた。


 たった一言が全てを物語っていたのだ。


「まさか……」


 作戦の失敗。


 ありえないとは思えない状況に、テンジは嫌な予感を覚える。

 ここにはメイン級モンスターと戦っていたはずのリィメイ学長がボロボロな姿で横たわっていて、オレリアを通してアレクの痛々しい声が聞こえてきた。


(で、でも……オレリアにそんな機能が?)


 テンジは知らなかったというよりも、聞かされていなかった。

 ただの翻訳機器だと思っていたオレリアにこんな機能が搭載されているなんて。もしかしたらモンスターのスキルや能力によるかく乱作戦かもしれないと考える。


 不明瞭すぎるこの戦場は、どこか不穏な空気を醸し出していた。


「ルゥゥゥゥゥウッ!!」


 保護色能力を有するモンスターが突如、木の上からテンジの首元目掛けて鋭い爪を振りかぶってきた。

 その個体は異様に肩から先の腕が発達しているようで、腕が体よりも長い。腕の先にある五本の爪も異常な発達を見せ、一太刀受ければひとたまりもない威力になるだろうことはすぐに分かった。


 間合いは相手が上、炎鬼刀の間合いの方が狭い。


 しかし、テンジは冷静にその行動を見切っていた。


「『斬結』ッ」


 ボゥと激しく燃える炎を一層大きく燃やしていく。

 刀の間合いを半強制的に広げる技術により、敵の爪攻撃よりも先にテンジの攻撃が当たった。


 これは通常よりも三倍のMPを消費することで炎の燃焼を促進させ、刀に宿る地獄炎属性の間合いを強制的に引き延ばす『斬結』の裏技的な使い方だ。千郷の発案で、すでにモノにした技術である。


 敵の間合いより、自分の本来の間合いが狭い時に使うとより効果を発揮する。


 ただし、デメリットも存在する。


 地獄炎属性の過剰発動による特性なのか、詳しい条件までは解明できていないが周囲のモンスターの視線を一手に引き寄せてしまうのだ。

 使い方次第では盾役の誘導のように使うこともできるが、このような乱戦状態の殲滅戦では大きなデメリットになってしまう諸刃の剣だった。


 特に後ろに守る対象がいるのならば、なおさらデメリットになってしまう。


「ルォォォォォオッ!」

「ルィィィィィイイイッ」

「ルァァァァァッァアッ!!」


 周囲の子飼いモンスターたちが一斉に進行方向をテンジへと切り替えた。

 その数に思わずゴクリと息を飲むテンジ。


(どうする? 使うか? いや……まだそのときじゃない。でも――)


 この状況を容易に突破できる方法なんていくらでも思いつく。

 それだけのポテンシャルが獄獣召喚にはあるのだ。


 だが――テンジの【獄獣召喚】には乱戦時における大きなデメリットがあった。


 自分では気が付かなかったデメリット。

 普段何気なく使っていた能力にもデメリットがあったのだ。

 このマジョルカに来てすぐに冬喜に教えてもらった。


 だから皆が混乱している今の状況で、容易にそれを使ってはならないという制約があった。


(身体能力は子飼いと五分五分。だけど攻撃力と防御力、技術力は圧倒的に僕の方が上だ。うん、やっぱりこのまま押し切るしかない。まだその時じゃない)


 炎鬼刀をさらに強く握り締め、三十を超えるであろう子飼いの群れを迎え撃つ覚悟を決めた。


 これ以上のタゲを集めるわけにもいかない。

 MP過剰消費による『斬結』で一気に決着を決めるわけにもいかない。あれはあくまで緊急事態での裏技的使用方法であって、常時使うような代物でもない。


 そんな葛藤に挟まれていた、その時であった。



「『青の咆哮』ッッッ」



 青く、美しい光の円環が子飼いの群れを襲った。



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