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青春と戦場の空  作者: いつみち
3/3

格納庫と横須賀の朝

 


 空気に混じる油の匂い。

 耳障りな金属音。


 ゆっくり目を開けた俺の目の前にあるのは、大きなエンジンとそこから伸びるタイヤのついた主脚。



 俺が目覚めたのは我らがクラン、ウミツバメの飛行機格納庫兼クランホームだ。

 まぁホームといっても、機体の脇に折り畳みテーブルとイスをただ並べただけの休憩スペース的なやつだが。

 ちなみに地下なので日当たりは皆無である。

 クランホームを探した時点で地上貸し格納庫に空きなんて無かったのでしょうがない。



 起き上がってあたりを見回す。

 既に和幸と学の姿は見当たらない。

 あの2人のことだからもう遊びに行っているんだろう。


 立ち上がって機体の反対側へまわる。

 部品倉庫のシャッターが半分開いていた。

 中から物音がするので正太郎が在庫確認でもしているのだろう。


 少し屈んで半開きのシャッターをくぐり倉庫へ入る。

 案の定、正太郎が木箱と段ボール箱の隙間でラベルを確認していた。


「在庫の状態はどうだ?」

「あぁ、龍か。見ての通り、エンジン系はまだ一通りあるけど脚のパーツが足りないな。」

「昨日の出発前に使い果たしたか…」

「最近は配達で南方の不整地飛行場ばっかり行ってたからな。脚への負担が増えてたんだろう。」


 昨日のクエストの出発前点検で、右側の主脚の耐久度がギリギリまで下がっているのが発覚し、急遽スペアパーツに交換したのでその補充が必要となったのだ。


「高くつきそうか?」

「いや、脚一式までは必要ないから、そこまで高くはならないと思う。中古で揃えるしな。」

「そうか。でも安全には代えられないからな。多少高くてもまともなやつを頼むぞ。」

「わかってるさ。」


 そんなやり取りをしてあとは正太郎に任せることにした。



 格納庫に戻り、奥にある鉄階段をあがる。



 階段の上には扉がある。

 一応ノックをしてみたが返事はないので扉を開けた。

 油臭さだけではない、なんとなく爽やかな匂いが開いた扉から流れ込む。


 中に入ると、整然と並べられた4機の零式艦上戦闘機21型の後部が俺を出迎えた。


「愛花いるかー?」

「龍ちゃんこっちこっち~」


 呼びかけるとすぐに返事があった。

 声のした方へ向かうと、愛花が女子格納庫だけにある談話室から出てくる。


「遅くなってゴメンね。」

「俺もさっき来たばかりだよ。」

「そっか、じゃあ早速行こっか。しゅっぱーつ!」


 やけに機嫌のいい愛花と一緒に、機体出入口の脇にある通用口を出る。

 そこは地面に枠線の描かれた地下空間だ。

 通用口を出てすぐの位置にある操作盤にふれる。

 いくつか出てくる行き先の選択肢の中から、目指す場所を選ぶ。


「ちゃんと枠の中に入っとけよ。」

「大丈夫だよ。」


 一応愛花に声をかけてから、決定ボタンを押す。



 体が青い光りに包まれた。



 吹き付ける風に目を開けると、俺は人でにぎわう大通りの真ん中に立っていた。


「いつ来ても人が多いね~。」


 隣の愛花がそんなことを言いながら、乗っていた石造りの台座を降りる。

 俺もそれに続いた。


 振り返るとその先にはものものしい海軍基地のゲート。

 左には大型クレーン、奥には赤レンガ色の立派な建物。



 ここは日本国防海軍横須賀鎮守府の入り口だ。



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