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青春と戦場の空  作者: いつみち
1/3

帰還と日暮れの小笠原近海


作者が自分のやりたいものを詰め込んだ新作です。

思うがままに書いてるのでゲーム設定、戦闘シーンなど、知識・考察不足なところも出てくるかもしれません。

どうか広い心でお楽しみください。

 


 快晴だった1日が間もなく終わる。

 水平線ギリギリに落ちた太陽が、操縦席の天井に最後の日差しを輝かせている。

 後方の空は既に星が瞬き始めていた。


「次のワープまでの時間、あとどれくらい?」


 不意に、隣の席に座るもう1人の操縦士が話しかけてきた。


「あと大体10分。なにもなければ15分後には横須賀ゲートに到着予定だ。」

「10分かぁ。じゃあ完全に夜になるな。」

「着陸はどっちがやる?」

「あー…機長にお任せします!横須賀の海軍飛行場は混んでるし狭いしで苦手なんで!」

「聞くんじゃなかった…」


 残りの厄介な仕事を、全部俺に押し付けた相方にため息をつく。

 いつの間にか小笠原群島がかなり近くに迫っていた。


 咽頭マイクのスイッチを入れる。


「こちら機長。もうすぐ小笠原中継点だけど、女子の方に通過して大丈夫か聞いてくれないか?」

『りょーかい』


 ヘッドホン越しに電信員の眠そうな返事が聞こえてきた。


『こちらパッケージ。こちらパッケージ。エスコートの皆さんこのまま小笠原通過で大丈夫っすか?』


 しばらくして返事が来た。


『こちらパッケージエスコート。全機異常なし、燃料残量も問題ないからこのまま横須賀へ向かってしまって大丈夫ね。』

『パッケージりょーかい。じゃあこのままゲート入るんで続いてきて~』

『エスコート了解。あとその眠そうな声、もうちょっとなんとかしなさいよ。』

『退屈過ぎて無理っすよ~ ってことでこのまま次のワープいけるよ~』

「あぁ聞こえてたよ。そろそろ完全に日が沈むから全員夜間飛行体制に。ゲートへの進入はやれよな?」

「はいよー」


 指示出しを済ませてから翼端灯のスイッチを入れる。

 左右の翼の端に緑と赤のライトが灯る。



 太陽がその姿を完全に水平線の下へ隠した。

 空模様の制空権は星に渡ったようだ。

 明かりの消えた操縦席では、計器盤の夜行塗料だけが怪しく光っている。



『こちら帝国海軍洲崎飛行場管制ギルド。識別信号を確認した。クエストコードの提示を求む。』


 無線機から発せられた声に電信員が応答する。


『こちら横須賀第225航空隊ウミツバメ。クエストコードは"PY0525/225か02"。一式陸攻1機と零戦2機です。』

『洲崎管制、コードを確認した。小笠原ゲートの通行を許可する。陸攻1機1円、零戦が2機で70銭。通行料金は1円70銭だ。このまま通過するのか?』

『補給の必要はなさそうですのでこのまま行きます。』

『了解した。近隣海域でのリバイバー目撃情報は無し。強制ワープアウトの被害も出ていない。では横須賀まであと少し、頑張ってくれ。』

『ありがとうございます。以上通信終わり。』


 地元管制との通信が終わり機内はまた静かになった。


「にしても何度聞いても信じらんねぇよなぁ。あの無線の相手がNPCだなんてさ。」


 この会話ももう何度目だろうか。まぁ、たしかにあの受け答えがNPCのそれだとは何度聞いても思えないのだが…


『ロシアとアメリカのゲーム会社が手を組んでバカみたいに予算注ぎ込んだらしいからね。現状、世界一予算をかけたNPCAlだと思うよ。』


 今まで静かにしていた機上整備士も話に入ってきた。

 まぁ、彼はNPCとの会話を楽しむが趣味、という少々変わった趣向の持ち主だ。

 ほんとなら電信員をやりたかったんだろうなぁ…


 そんなとりとめもない会話をしていたら、母島を越え父島の目の前にまで迫っていた。

 現状の前線から遠く離れたこの島は、灯火管制もまだされていないようで町のあちこちにポツリポツリと灯りが見える。

 港の沖合いには白く光る巨大な輪がある。


「小笠原ゲートを視認。総員ワープ準備。」


 副操縦士が指示を出す。


『ワープ準備了解しました。ワープ先は横須賀ゲートでよろしいですか?』


 ワープ航路の設定を担当する航法士が確認する。

 いつもの航法担当が英語の課題が終わらなくてイン出来ないらしく、今航法席にいるのは代理Alだ。


「横須賀で大丈夫だ。ゲート使用料はいつも通りクラン口座から引き落としで。」

『了解しました。ワープ準備完了です。』

「よし!行くぜ!」


 機体は光る輪の中心目指して進む。

 輪の中へ入った瞬間、星空も海も島影も消え、あたり一面濃い群青に染まる。


『全機ワープ開始しました。到着は4分30秒後になります。』


 あと5分近くはこの何もない空間を飛び続けることになる。

 まぁ、上下左右がわからないし浮遊感もなくなるので、正直飛んでいるという実感すらないのだが。


 操縦の必要もないので、操縦捍から手を離し軽く伸びをする。

 機内の仲間たちもくつろいでいるようだ。



 やがて、前方の空間に白い光が見えてきた。

 間もなく出口だろう。


『あと30秒でワープアウトします。』


 航法Alからもその報告があがる。

 操縦席の小さな椅子に座り直し、操縦捍を握った。


 ワープアウト先は横須賀。

 このゲームの日本空域で最も過密地帯と呼ばれる横須賀鎮守府沖だ。



『ワープアウトまで、3、2、1』


 入る時とは違い、白い光が一瞬機体を包む。

 それと同時に浮遊感も復活する。


 光が消えると、見上げる空には星の光が戻ってきた。

 しかし小笠原とは違い、星の光はあまり目立たない。

 その代わりに、地表には港湾都市とそこに出入りする艦船の様々な灯りが入り乱れている。

 空に目を向けても、そこかしこに航空灯の緑と赤の光が見えた。



『こちら海軍横須賀追浜飛行場管制ギルド。任務ご苦労様でした。現在の追浜は快晴、西向きの風、風速3です。』


 ゲートを出てすぐに管制から連絡が入る。


『クエストコード承認。第225航空隊ウミツバメは3機とも第6滑走路へ。着陸は2番目。横須賀第3航空隊第110訓練飛行隊の着陸が終わり次第、続いて進入してください。』

『こちら第225航空隊ウミツバメ。着陸は第6滑走路、着陸順は2番。了解しました。格納エレベーターは何番ですか?』

『エレベーターは3番4番が使用可能です。それでは着陸まで待機空域でお待ちください。』


 通信終了と共に視界の右下にマップ画面が現れる。

 着陸までのルートマップだ。着陸直前まで自動操縦にすることも可能だが、あえて手動でルートに沿って飛ばす。


「機長ホント手動好きだよな。」

「このほうが飛ばしてる実感あるからな。それに100年前にはこんな自動操縦なかったんだ。史実には合わせなきゃな。」

「高性能無線にワープにガイドマップまで使っててそれ言う?」

「それはそれ、これはこれだ。」


 脇からいつものごとく色々言われてるが気にしない。

 ゲームは他に迷惑をかけない範囲で、自分の好きなように楽しめればいいんだ。


『ねぇ部長、アタシと美樹は明日委員会で部室行く時間ないんで、よろしく。』

『だそうです~。なんて返します?』

「了解、でいいよ。」

『女子に冷たくするのはおすすめしないよ?』


 整備士がなんか言っていたが放置する。

 こっちは着陸準備に集中したいんだ。


 タイミングよく管制からの無線が入った。


『こちら追浜管制。第225飛行隊ウミツバメへ。先行の訓練飛行隊は次の機で最後です。着陸準備お願いします。』


「よし!降りるぞ!総員着陸態勢!」


 声を出して自分に気合いを入れる。

 久しぶりの横須賀への夜間着陸だ。少しだけ緊張する。



 滑走路のオレンジ色の誘導灯が、南方帰りの俺たちを迎えた。








現実通りだと移動時間がかかり過ぎてゲームにならないのでワープを導入しました。東京ー名古屋程度なら一瞬です。海外行きだと時差がわけわからなくなりそうですね…


また横須賀の海軍飛行場は大規模拡張しました。滑走路1・2本じゃとてもさばけそうになかったので(笑)


定期更新日は作れませんがなるべく早く次話は出したいと思います。登場人物たちの名前も次回以降でてくるかと…

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