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第21話 ティナ魔人族と合流する

兵士が常駐する詰め所の様な場所にティナは1人立っていた。

中に入るわけでもなく建物の直ぐ横で遠くを見詰める目で視界に入る全ての人へ自らの力を使う・・・


「おや?お嬢ちゃんどうしたんだい?」


ティナの姿にようやく気が付いた兵士の1人が詰め所から出てきてティナに声を掛ける。

しかし、それはティナがダブルで見せている狩りの姿。

そして、ティナは口にする・・・


「おじさん、私・・・魔法が使えるの・・・」


そして兵士が見ている偽ティナは指先から水の塊を出現させる。

それを見た兵士は一気に顔色を変えて腰に装着していた棍棒を振り上げ偽ティナへ振り下ろす!


「ま、魔人族だ!?こいつ魔法が使える魔人族だぞ!?」


少女の姿であっても全く躊躇しないその行動にティナは分かっていても目を丸くして驚く。

そして、横に立つティナは偽ティナに殴る蹴ると言った暴行が繰り返し行なわれている様を見せ付けられる。

姿形は全く同じ人間だと言うのに魔法がただ使える・・・

ただそれだけでこれ程理不尽な目に合わされないと駄目なのか深く悩むティナ。

詰め所から出てきた他の人達も最初の兵士と同じように偽ティナを殺すかの様に暴行を繰り返す。

実際問題でもし本当に魔人族であったなら自らの傷を癒したり魔法で兵士を攻撃して反撃する可能性があった為に兵士達は暴行を繰り返す。

しかし、無力化を通り越して殺す気で繰り返す兵士達を見てティナは覚悟を決めた。


(こんな人達、このまま生かしておく価値なんて無いわね・・・)


ズタボロになり瀕死となった偽ティナはそのまま兵士達に連行され牢屋の中に閉じ込められる。

魔法が使用できないように両手は後ろで縛られて口には猿轡の様な物が装着される。

目もタオルの様なもので隠され全身血まみれとなっているにも関わらず処置を何もせず放置される自らの分身の直ぐ横でティナは待つ事にした・・・


それから3日が過ぎた。

毎日偽ティナが死んでいないか確認しに来た兵士は確認ついでに追加の暴行を行いティナはそれを見続けた。

この為に事前に用意していた非常食と雨水で耐えて待ち続けるティナであったがその日は遂に来た。

ティナが暮らしていたプロメタの町が魔人族の襲撃を受けたのであった。






「ここに同胞の少女が捕まっているらしい、探し出せ!」

「はっ」


声が聞こえ牢屋の入り口から通路を覗きながらこちらへやってきた者へティナは次々とダブルを使用して瀕死となっている偽ティナを見えるようにしていく・・・


「だ、大丈夫か?!今助けてやるぞ!」


そう言って魔法を使用したのであろう、牢屋の鍵が解ける様に壊されて数名がティナの横を素通りして偽ティナに駆け寄る。

そして、回復魔法と思われるモノを使用し偽ティナの傷を治していく。

ダブルの凄い所は見ている人間が認識した通りの状態を見せる事が出来ることである。

勿論触った時の感触や息遣いも感じることが出来るのでそれが幻覚だと認識するのはまず無理である。


「よし、なんとかこれで大丈夫だろう。よく頑張ったな」


そう言って偽ティナを抱き上げ牢屋から連れ出す兵士。

ティナはその直ぐ後ろを付いていく・・・

外に出た時に他の者に似せティナが見えない状況を作らないようにする為である。

そして、外に出たティナはそのあまりにも悲惨な光景にショックを受ける。

街中には殺された人の死体が転がり、自分に優しくしてくれた見覚えの在る店の人もそこに倒れていたのだ。

遠くでは建物の上が見えていた筈のお世話になった孤児院の姿が見えなくなっておりそこからは煙が上がっていた。


(結局、どちらも同じって事なのね・・・)


本来なら絶望に沈む所だがティナは理解していた。

自分が関わった事の在る人に限らず人伝手であろうが因果関係にある全ての人は死ねば全て回収される。

世界が終われば死んでも助けることが出来ないのでこれは救いなのだと自身を説き伏せて視界に入る魔人族の者へ次々とダブルを使用していく。

そして、頃合を見計らって偽ティナが気が付いたと言う形で魔人族の者へお礼を述べる。


「危ないところを助けていただき本当にありがとうございます。ですが・・・」

「君にはちょっと刺激が強すぎる光景かもしれない、だけど君が受けた傷の借りを返すと言う事でもあるんだ」

「そうですよね・・・それでも私は・・・」

「君は優しいんだね、それはそうと体の方はもう大丈夫かい?」

「はい、お陰さまで・・・本当にありがとうございました。あの・・・それで・・・」

「どうしたのかな?」

「もし宜しければ皆さんのリーダーさんに直接お礼が言いたいのですが」

「あぁ、それなら安心してくれ。撤収したら魔王様の城へ全員一度帰還する事になっているからその時に直接話すと良い」

「はい、ありがとうございます」


通常なら助けてくれた者や怪我を治してくれた者へお礼を言いに行くのが筋だと考えるかもしれないがティナは魔人族が同胞へ向ける考え方と言うモノを理解していた為にこういう言い方をしていた。

民族が違えば考え方も変わる、自分を助けてくれた者にとってもその考え方が常識となっているのだ。

ティナは気付かない、自分が何故それを知っているのかを・・・

お待たせしました。

連載再開したいと思います。

と言ってももう直ぐ終わりだと思いますがwww

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