第２話 魔王の初恋
「マナ様、プロメタの町にて魔女狩りの生き残りの少女が保護されたそうです」
「生き残りは一人だけか…魔力を持たぬ野蛮な猿共め！」
王座に座るマナと呼ばれる男性が居た。
年は20を過ぎたくらいの若者だ。
彼こそこの世界の魔神族を束ねる魔王と呼ばれる存在である。
「アニガンに続きプロメタもこれで制圧し終わった。いよいよ人族も終わりですね」
「所詮魔力を持たぬ下等生物なのだ。弱者は滅びるのが世の習わしだ」
「左様でございます」
この世界の人族と魔人族の争いは100年以上続きいよいよ大詰めとなっていた。
人族に残されたのは最後の都市『リムルダール』のみである。
古来は物作りが得意な人族と魔法の使える魔人族は手を取り合い共に助け合って暮らしていた。
だが時と共に互いに互いを見下す考え方が蔓延しいつしか小競り合いから種族を賭けた争いへと変化していった。
互いに自分達と違う者を抵抗なく受け入れる事は出来なかったのだ。
人数の少ない魔人族は当初は圧倒的人数差に押され追いやられたのだが魔法の存在がそれを覆した。
それまでは生活に便利な魔法ばかりが注目されていたのだが、一人の大きな魔力を持った者が人を殺す為の魔法を次々と作り出しその危機を救った。
後に魔王と呼ばれるその者は産み出した殺人魔法を仲間に広め人族への反撃の狼煙とした。
そして、現在魔王の座に居るのがその後継者のマナであった。
いくら強力な殺人魔法を使えたとしても魔人族は人間である。
怪我をすれば傷はできるし死ぬ時はあっけなく死ぬ。
それを理解しているマナは戦いの前線に出ていた先代とは違い、城の奥で戦いの指揮を取る形の運営を行っていた。
それが結果的に人族を追い詰める形となっていたのであった。
「それでマナ様、その少女がマナ様にお会いしたいと申しておりまして…」
「構わん、魔力を持つ同胞だ案内しろ」
「畏まりました」
王座に座る魔王は部屋に一人になるとその表情を崩し哀しそうな瞳を窓の外へ向ける。
生まれた時には既に戦いの真っ直中であった魔王にとって人族はそれほど害悪ではなかった。
互いに理解し合えれば共に手を取り合って歩める人間な筈なのだ。
だが魔王と言う立場がそれを許さない。
魔王はこのまま人族を滅ぼして良いものか内心悩んでいるのであった。
「魔王様、お連れしました」
「うむ、入れ」
声を掛けられ気持ちを引き締め直した魔王はその瞳を大きく開くこととなった。
輝く黒髪が白い肌に映える美貌を持つその少女に魔王は一瞬にして心を奪われたのだ。
整った顔立ちに幼さが残るが聖母のような表情がそれを更に魔王の心を擽った。
「この度は助けて頂き誠にありがとうございま…」
「名は…名はなんと言う？」
「えっ？あっ、失礼しました。ティナと申します」
「ティナ…なんと美しい…」
小さく呟いたその言葉はティナには聞こえなかった。
名を聞いて固まった魔王に対して少し首をかしげたティナの仕草に魔王は完全に我を忘れてしまった。
「ティナ！私はお前が欲しくなった。どうか私のモノになってくれないか！」
この時既にこの場に居る配下も魔王の言動に違和感を覚えなかった。
言葉遣いが変わり初めて会ったばかりの少女に求婚にも似た言葉を告げる魔王に違和感すら覚えなかったのだ。
「ありがとうございます。私にはもう帰る場所がありません、私の…家族になってくれますか？」
その言葉に喜びを隠しきれない魔王はティナの前に膝をつきその手の甲にキスをするのであった…
原作者のねぎとろ様が怒ってこないか心配だったり…(笑)
