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WSG ANOTHER 異世界に死を運ぶ少女  作者: 昆布 海胆 & 皇 透
第2章 プロメタの町のヨハン
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第10話 ヨハンの見た魔王

ヨハンが仲間と共に魔王へ近付くと前に居た数名が突然その場に倒れた。

その誰もが目や耳から出血しているのを見てそれが魔王の魔法だと理解する。

そして、ヨハンにも突然の頭痛が襲い掛かった。


「ぐぷっ…」


込み上げる吐き気と視界が真っ赤に染まり、倒れた仲間と同じ症状だと理解したが、ヨハンは抵抗することも出来ずそのまま倒れ込む。

耳からも大量に出血しているのが耳の中を流れる血の音で理解した。

真っ赤な視界は世界を赤く染めヨハンはそのまま意識を失うのであった…




『ヨハン…私のために頑張ってくれてありがとう…』

「その声…フローラか?!」

『えぇ、もう十分よゆっくり休んで』


ヨハンの視界が開けて暖炉の前に座り編み物をするフローラの姿が映った。

ヨハンは手を伸ばし足を踏み出す。

そこには幸せな家庭がある、望んでも永遠に得られないはずのフローラとの幸せな日常があるのだ。


『あっ今私のお腹の中を蹴られたわ』


それは二人の子供、ヨハンは涙を流しながらフローラに近付こうとするがその足は前へ進まなかった。


「違う…」

『えっ?』

「俺だけが幸せになっちゃ駄目なんだ」


ヨハンの頭に浮かぶのは同じ兵士として戦いに身をやったブランを含む仲間達。

ヨハンは笑顔をフローラに向けて伝える。


「すまないがやり残した事があるから帰るよフローラ、君の仇を取るって決めたんでね」

『そう…だったら全力で頑張ってね』


そうだ…フローラのこの言葉がいつも俺に力をくれたんだ。

ヨハンは親指を立てて振り返り歩き出す。

暗闇の中を進むその足取りは軽く気付けばヨハンは光に包まれていた。


そして、光が消えて目の前に地面が在るのに気付いた。

体が重くこのままもう一度目を閉じたいがそれだけは出来ないとヨハンは顔を上げる。

血で赤く染まってはいるが何とか見える目を上に上げると誰かの背中があった。


「我は、我々は負けない・・・負けるわけにはいかないのだ!」


この声…そうだ…魔王だ…

ヨハンは手にしていた魔剣を強く握る。

そして最後の力を振り絞り魔王の背中へ魔剣を突き刺した!


手応えは十分にあり魔剣は心臓を確実に貫いていた。

最後の力を出し尽くしたヨハンはそのまま倒れ始める…

そこへ振り向きながら攻撃をして来た魔王の腕がヨハンの胸に当たる!


「ぐぇええ・・・・」


魔力が込められていたのか、その一撃でヨハンの胸を境にその体は引き裂かれヨハンの上体は地面に落ちた。

痛すぎて意識を失えなくなっているヨハンは直ぐに痛みを感じなくなり倒れたまま魔王を見詰める…


「くくっ…やったぞ…」


声にならない小さな言葉でヨハンは魔王が苦しむ姿を堪能する。

だがその魔王が誰もいない何かに向かって顔を向け手を伸ばす…

その姿を見てヨハンは悟った。


そうか…魔王も大事な人を亡くしておりお迎えが来ているんだな…


魔王が優しい瞳で見つめる相手は一体誰なのかヨハンには分からない、だがそんな魔王の姿を見て自分達は争うべきではなかったのかもしれないと悟る。

ただ、魔法が使えるだけでその実態は相手も人間である。

魔王が何もない空間を抱き締めて目を閉じる姿を見てヨハンの憎しみは無くなっていた。

ただ愛する者がそこにいるのが見えている、それは互いにとても幸せな事だとヨハンは理解していた。


そして、ヨハンはゆっくりとその目を閉じようとした時に入り口から数名が駆け込んでくるのが見えた。


「ははっ…最後に見る顔がブランさんだなんてな…」


内心笑いながらヨハンはこちらを向いて何かを口にしたブランの姿を見ながらその人生を終えるのであった…


今行くよ…フローラ…









第2章 ヨハン     完

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