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59- ──空席──

 リエリの前からシンが連れ去られてから、丸三日が経った。


 リエリはこの間、一切の仕事をキャンセルし、ずっとシンの自宅のソファに座って過ごしていた。リエリの隣=いつもシンが座る位置には、大きめの熊のぬいぐるみが置いてある。


「ハァ……どの番組もタカビーの演説だらけ。……ねぇ熊さん。一体リエはいつまで待てばいいの? シン大丈夫なのかな? 昨日シンとリュックの人から三度目の信号遮断のメールが来たの。それで、シンのメモ通りにすぐにあのサイトに行ったんだけど、何も起こらなかったの。いつまで待てばいいの……?」


 熊のぬいぐるみはつぶらな瞳をリエリの方に向けている。


「やっぱり、シンが捕まってる警察署に行って、助けに行ったほうがいいよね? セレクターだけでも、何とか上手くやればシンを助け出せると思うの。熊さん、どう思う?」


 リエリはそう言って、熊のぬいぐるみに顔を寄せ横になった。しばらくは何かをつぶやいていたが、数分後には眠りについた。


 二時間程して、突然、リエリはソファから飛び起きると、急いで宙を指で動かし始める。


「遮断通知!! ヤバいヤバいヤバいヤバい早くサイトに行かないと!!」


 リエリの指は忙しなく宙を何度も行き来した。


「………………い、インストールできた……き、や、やったああ! ……熊さん!! 《DĒŁĒTĒ》ボタンが追加された!! ……は、早く行かなきゃ芝浦警察署に」


 リエリの表情は、驚きから使命感に満ちた表情に変わっていく。


「――え!? また通知?」


 リエリは恐る恐る宙をタップしていく。


「え!? え!? 嘘……またインストールできちゃった。…………《LOCK》ボタン……こ、これって覆面男のやつじゃないの……」


 リエリは茫然と宙を眺めている。


「――えぇえ!? なに!? ウソでしょ……また通知!? もうどうなってるの?」


 リエリは震える指でゆっくりと確かめるように宙をタップしていく。


「…………《UNLOCK》ボタン。青いリュックの人のだ……わ、わ、私、最強じゃん……。《SELECT》《DĒŁĒTĒ》《LOCK》《UNLOCK》……ボタンが四つもある。は、はや、早く行かなきゃ芝浦警察署!! 熊ちゃん行ってくるね!!」


 リエリは、手や足を部屋のあちこちにぶつけても一切気にしないほど興奮して、慌ただしく着替えた。


 リエリがマスクで顔を隠して玄関ドアを開けようとしたとき、ふと思い出したように部屋に戻っていく。


「メモに書いてあるから、一応つけてこう。デリーターあれば使う必要ないと思うけど……」


 リエリは白いブレスレットを両手首につけると、急いで玄関ドアを開けて、マンション前に停車しているタクシーに乗り込んだ。外はすっかり暗くなっている。


 リエリを乗せたタクシーは一時間ほど走り、五階建ての警察署の正面玄関前で止まった。

 正面玄関には警官一名が立っており、棒を床に立ててその上に両手を乗せている。玄関のドアガラスの先には警官が何度も行き来しているのが見える。


 リエリが宙を一度タップすると、タクシーのドアがゆっくりと開く。

 リエリはタクシーから降りると、警官にばつの悪そうな顔を向けて横を通り、二重の自動ドアの先に歩を進めた。


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