46- ──満員──
2091.11.09 Fri. 19:39 JST
シンとリエリは、いつものようにマンションの夜景が見えるソファに寄り添って座り、各々宙で手を動かしている。
「シン、なにしてるの?」
「考えごと」
「出た! リエを邪魔者扱いするそのオーラ!!」
「そんなつもりはないけど」
「言い訳無用!」
リエリはそう言って、シンの耳たぶを引っ張った。
「イタタ」
「で、なんの考え事かな? クレイ君」
「もう一度、能力を得るにはどうしたらいいかって」
「それは私も考えたことあるよ。実は、手に入れる方法に目星はついているの」
「へー? どんな方法?」
「フフーン、簡単よ。能力を手に入れた時の〝あのサイト〟にもう一度行けばいいのよ。……ただムリよ、だってあのサイトはすぐなくなっちゃうから」
リエリはそう言うと、したり顔でシンの表情を伺った。
「そう、普通の方法では行けない。あのサイトはURL=URLはサイトがある場所の名前みたいなのものなんだけど、その場所が常に変わってるから、検索サイトには表示されない。
「ふぇ? そ、そうなんだ……」
「デリーターは、俺がつくったURLを自動生成するツールを使って授業中に趣味で遊んでたら、偶然あのサイトに飛んでインストールできた」
「へー……私の場合は、偶然見てたサイトの右っちょの広告を触ったら、あのサイトに飛んだの。あのサイトに行ければなぁ」
「実は、既に行けたよ。あのサイトに」
「――え!? ス、スゴイじゃないシン!! もう早く言ってよ!! ――で、どうだったの?」
リエリは大きな目を更に見開いて、シンの耳から手を離した。
「新しい能力は手に入らなかった。でも、収穫があった。──はい、これ」
シンはそう言うと、画面上の数多の文章が並ぶ中から【No vacancy】という箇所をコピーした。そして、別の画面に貼り付けて、手の平で押した。
「何これ? 【のーべいきゃんしー】? ……調べるもん! …………ふ~ん、ほ、ほお〝満員〟って意味なんだ、なるほど。……うぅ、で、どういう意味なのよー!!」
「何が〝満員〟かって、色々考えたんだけど――〝能力〟の空きがないって意味じゃないかと思ってる」
「待って、それってもしかして、待ってればいつか空きが出るってこと?」
「おそらく」
「すごいじゃない! どうなったら空きが出るんだろう?」
「一番考えられる可能性は、能力者が〝死んだら〟だと思う」
「……」
シンの言葉に、リエリは思わず顎を引き、ぎょっとした表情を見せて黙った。




