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34- ──異変──

2091.11.07 Wed. 12:09 JST



 シンは自宅マンションのソファに座り、視界にいくつも画面を並べて黙々と作業をしている。時折、画面の隙間からは青空が覗く。


 いつものようにシンの肩に小さな頭を垂れているリエリは、物憂げな眼差しをシンに向けた。


「ねぇ、シン。来年十二月に神様の眼ができるけど、もう何もしないの?」

「やることは山ほどあるよ。最終的には、日本だけじゃなくて全世界に神の眼を広める必要があるから」

「でも私、最近何もしてないよ?」


 リエリは唇に人差し指を置き、首を傾げた。


「まだ準備中だから……次のためのね。すぐまた忙しくなるよ」

「ねぇ、もし全世界に神の眼を広めることができたら、カナと二人だけで安心して世界中を旅行できるようになるかな?」


 リエリは目を輝かせてシンにそう聞いた。


「今よりは比べ物にならないほど安全になるはず。……ただ、犯罪者の中には〝必ず捕まる〟と分かっていても、罪を犯す人間はどうしても一定数いるんだよ。だから絶対に安全とまでは言えない」

「そういう人達って、どうにかできないの?」

「どうにかできる、どうにかする、必ず。今、準備をしてるよ。そういうことが例え起きたとしても、全てをやり直せるように」

「えー? なになに? なにするの?」

「また今度」

「えっ~?」


 リエリは口を尖らせて目を細める。



「――? 速報が出た」



 シンがそう言って視界左上に浮かぶ画面を二回タップすると、画面は視界いっぱいに拡大された。


「見せて見せて」


 シンはリエリに向かって画面を手の平でゆっくりと押した。画面には、白いスーツのアナウンサーの女性が映っており、慌ただしい様子で一度目線を下に落とした後、顔を上げ口を開いた。



* * *



『――番組の途中ですが、東京で大規模な銃撃事件がありましたので、緊急のニュースをお伝えします。報道センターからお伝えします。東京都町田区にある町田刑務所で、本日正午頃、覆面の男が刑務所に侵入し、少なくとも受刑者数十人が銃で殺害される事件があったとのことです。

 現在、刑務所は犯人が放ったと思われる火で炎上しており、消防隊が消火にあたっているとのことです。えーまた、エヌフォー通信やアメリカメディアDPによりますと、〝メサイア〟を名乗る人物がこの件に関して犯行声明を出したという情報もあります。えー繰り返します、――』


 スタジオの女性キャスターが緊張した面持ちでニュースを繰り返している。


「…………なにこれ。殺すのはよくないよね、いくら犯罪者でも」


 リエリはそう言って、神妙そうな表情を浮かべた。


『えー、この町田刑務所は、東京都西部にある国内最大規模の刑務所で、受刑者約六千名を収容しているとのことです。また、職員数も七百名近くいるとのことで、職員の安否についても未だ情報が入ってきておりません。えー、今、町田刑務所にムライ記者が行っています。ムライさん、聞こえますか?』


 映像が現場の女性記者に切り替わる。


『――はい、聞こえています』

 

『今分かっていること、状況を伝えてください』


『――はい、私は現在町田刑務所に近づける一番近くのところまで来ています。えー、ただし警察の規制で町田刑務所の入口前まで行くことはできません。とりあえず分かっている状況をお伝えします』


 現場の音声には、女性記者の声に加え、けたたましいサイレンや騒音が入り混じっている。


『銃撃があったのは、本日十二時〇五分頃です。東京都町田区の町田刑務所、これは大きく西棟と東棟からなっていますが、西側の建屋で覆面の男による銃撃があったようです。えー、そしてその十数分後、東側の建屋でも銃撃がありました。えーその後まもなくして、両建屋から煙が上がったとのことです。


 最初の銃撃から一時間経っていますが、現在も黒い煙が立ち込めておりまして、現場騒然とした状況になっております』


『ム、ムライさん』


『――はい』


『こちらにも、そのサイレンの音、激しく響いているがよく聞こえるのですが、炎上しているのは――えー刑務所の消火状況はどうなっているんでしょうか? また、犯人は今も刑務所内にいるのでしょうか?』


『――えーっとですね、覆面の犯人の所在についてはまだ何も情報が入ってきていない状況です。えー、火については、一部の情報ですと、火は東棟西棟の両建屋共に既に相当な部分に広がっているとのことで、現在現場では消防隊が懸命な消火活動を行っているという状況です。えー…………また、……えー今、今入ってきた情報によりますと、犯人は銃の他にも神経ガス等で武装している可能性があるとのことです』


 現場の女性記者は二度、同様の文言を読み上げた。


『ムライさん、ありがとうございます。犯人は銃器の他に神経ガス等で武装しているのではないかということですね。それは犯人が複数で――えー、今、今、入ってきた情報によりますと、エヌフォー通信によりますと、犯人が犯行声明を出しているようです。犯行声明で犯人は〝自身はアムのように甘くない。自身は全ての犯罪者を処刑する。世界を救うことができるのは自身のみ〟という趣旨の声明をだしているとのことです。えー、ムライさん、現在――』



* * *



 ニュースを見ていたリエリは顔をしかめ、か細い腕をソファに振り下ろした。


「はぁ? なんなの、こいつ! シンのやり方の何が不満だってのよ。あんたなんてただの殺人鬼じゃない!」

「……。犯人がすぐに捕まらないようなら、警察の捜査に協力してあげよう。セレクターならきっと役に立てるはずだから」

「うん! この殺人鬼捕まえて、自分が襲った刑務所に入ってもらいましょ」


 シンとリエリは、しばらく報道の推移を見守った後、また各々の時間をソファの上で過ごした。




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