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25- ──作戦会議──

2091.09.07 Fri. 18:41 JST



「で、何するんだっけ?」


 リエリが首を傾げる。


「暗号解読はアテがあるから俺の方で処理してみる、君には〝社会〟を動かしてほしい。――それには、〝政治〟と〝メディア〟を動かすのが手っ取り早い。彼らを動かすには、〝情報〟を使った脅しが一番効くんだよ。デリーターでは難しいけど、セレクターならできる」


「――汚職暴き?」


「そう、よくわかったね? セレクターは、どんな捜査機関でも到底敵わない情報収集力がある。警察が把握していない事件でも、物的証拠が存在しないはずの事件でも、当人の記憶から直接的に映像・音声を抜き出せてしまうから」


「うん、うん」


 リエリは立ったまま腕組みをして、得意げな表情をして頷く。


「だからセレクターを使えば、政治とメディアの権力者を汚職・不正ネタでゆすることができる。そして、彼等自身で神の眼を推進させる法案・世論形成をさせることができるはず」

「ヨシ、〝ゴッド・アイ〟リエリ様に任せなさい! あれ、でも――」


 リエリは急にしゃがみ込み、不安そうな顔でシンを見た。


「汚職・不正がなかったら、どうしよう? 最近は結構そういうの規制されて厳しくなってるんでしょ? 実際、たまにしか聞かないし」

「大丈夫、実際に記憶を覗いてみれば分かる」


 シンはそう言って口元を僅かに緩めた。


「……じゃあ、やってみる。あ、でも――偉い人達をゆすったのが、もしお巡りさんにバレたらどうしよう?」

「『アイドルのリエリ 政治家ら百数十名への恐喝容疑で逮捕』っていうニュースが日本中を飛び交って、刑務所行き」

「――えええぇぇ?」

「やめてもいいよ」

「……。や、や、やめないもん!」


 リエリは一瞬凍りついたように動かなかったが、奮い立たせるようにして両手で両腿を叩き、半泣きの状態でそう声を張った。


「……怖がる必要はないよ。逮捕されたら彼等の汚職・不正がバレるから、彼等も逮捕されて全てを失う。困るのは圧倒的に彼等の方。それに、法案が通過したら、デリーターで関係者の関連する記憶を数ヵ月分消しておく。だからそもそも事件化できない。ほぼ百%ないけど、仮に万が一、逮捕しにきても、その場で警官全員の記憶を消せばいい。そのあと、警視庁に行って全職員の記憶を同じように消すこともできる。そのときに、逮捕状関係のデータを消しておけば何も残らない」


「……。その力、ズルい! なんでもありじゃない!」


 リエリはそう言って、シンの腕を軽く叩いた。


「ところで、前から思ってたんだけど、なんでデリーターで記憶を消すと失神するの? セレクターで人の記憶を見てもその人は失神しないのに」


「推測だけど、記憶を消すってことは、記憶が保存されている箇所の脳の神経回路を初期化、つまり破壊してるんだと思う。そのときの一時的なショック症状で失神してる可能性がある。実際、記憶の消す量が多ければ多いほど、失神状態が長く続く。セレクターは、記憶を読み取るだけだから、神経回路の破壊はないんじゃないかな」


「ほえー……。デリーターっホントに怖い力だね」

「……で、やめる?」

「やめないわよ!」

「頼んだよ、名探偵」

「はい、頼まれました!」


 リエリは元気よく返事をした後、シンの膝の上に甘えるようにして頭を乗せて横になり、瞼を閉じた。



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