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2 - ──退屈な問題──

2091.06.21 Thr. 11:18 JST 



「おい、また……」

「……」


 体格のいい少年が前の席の頬杖を突く少年に小声でそう呼び掛けた。しかし反応はない。


「おい……起きろって、シン」

「……ん」


 再びの呼び掛けに、シンと呼ばれた少年は右に傾き、目にかかる前髪を揺らした。少年は何かつぶやくが、瞼を閉じたまま動かない。


「起きろ! クレイ!!」


 教壇から教師の男が声を張り上げると、教室中の生徒がシンに首を振った。

 シンは、頬杖を突いたままゆっくりと瞼を開け、顔を徐々に上げていく。シンは、中性的で線の細い顔を前に向けると、大きな、しかし冷たく冴えた瞳で教師をじっと見据えた。


「……はぁい、起きました」


 シンの不遜な態度に対して、教師の男は眉間のシワを深くした。


「テストを取りに来い」

「はいはい」


 教師の男の抑揚のない声に、シンは一言そう答えて立ち上がり、教壇に向かう。


「赤点ギリギリだな。高校生になってまだ二ヵ月ちょっとで、既に〝お前だけ〟完全に出遅れてるぞ」

「ふぇい」


 教師の男は、再び眉間に深くシワを寄せた。


「英語の諺で、〝The rotten apple injures its neighbor〟というのを知ってるか?」

「……」

「〝腐ったリンゴは、隣を腐らす〟という意味だ。……お前、なんで高校に来てるんだ? もう義務教育じゃないんだから、やる気がないなら来なくていいんだぞ」

「ふぃい」

「……もういい、戻れ」

「はい」


 教師の男は、席に戻るシンの背中に呆れたというような表情を向けた。


「ヨシ、……それじゃあ、確率論の授業を始める。共有フォルダに今日使用するテキストを置いてあるから、まだダウンロードしてない者はすぐにダウンロードするように。それじゃあ、問題文を読み上げるぞ」



   ♢



 あなたは今、クイズ番組のゲストとして呼ばれています。既にあなたは幾度ものクイズに正解し、最後の賞金をかけたチャレンジを迎えています。

 これから出す最後のチャレンジに正解すれば、なんと百万円を手に入れることができます。


 あなたの前には、大きな紙製のパネルが三つあります。その一つのパネルに突入して破ると、賞金の百万円があります。

 しかし、残り二つのパネルを破った先には、ハズレの泥水のプールがあります。

 あなたは百万円があるパネルに見事突入することができたら、百万円を手に入れることができます。


 今、あなたは突入するパネル一つを選んで、司会者に伝えました。

 司会者はあなたが選んでいないパネルを一つ、棒を使って破くと、その先には泥水のプールがありました。

 司会者は、あなたを惑わすような笑顔でこう言いました。

「今なら、あなたが選択しているパネルではなく、もう一つのパネルに変えることもできますが、どうしますか?」



   ♢



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