第4話-召喚されたようです!-
「...マジかよ」
現在、夜雲 暁は自分の中にある戸惑いと「ここはどこなのか」という不安感、それらを上回るほどの高揚感をグッと押さえ込み周りを見回しこの状況を把握しようとしていた。
そこには見知らぬ人達と、月の光と蝋燭の光だけで照らせれているこの部屋だけが存在する。
まず、周りには日本では決して見かけないであろう青と白のドレス姿の少女と神官風のおじさん達複数人と騎士みたいな人達がいること。
そして、自分がいる場所を確認しようとし周りを見る。
天井を見ると天井石で壁も石で作られたようになっており、何ヵ所か外が見えるように少し高い位置に格子がついている四角い穴がある。そこの一ヶ所から先程、月を確認していた。
ここはどこかの高い所に建っている建物の地下なのだろうか?それともすべての部屋がこんな風になっているのだろうか?という疑問を覚えつつもう一度周りを確認する
足元には先程まで光っていた円形に何かが書かれていた物が徐々に薄れていく。多分ではあるがこれは小説やゲーム等にある魔方陣のような気がする
まだ自分がいる場所がどこなのか曖昧のまま、壁や天井を見てみると何か不思議な絵が書かれている
壁には人らしきものなどが武器を持って戦う姿が書かれており天井には大きな星か太陽みたいな物を中心とし周りに文字や奇妙な絵が書かれていた
そして、次に暁は自分と同じくここに連れてこられた者達見る
そのもの達は自分と同じ高校の制服に身を包んでおり、先程までよりは若干落ち着いてきているような感じだ
彼ら彼女らは自分と同じ高校の高校生であり、しかもクラスメイトでもあるのだ
けれども、暁からは声をかけた事はなかった。ごくたまーに一言二言、話をかけられる程度の関係だ。今日学校で偶々この4人組の中の一人に話しかけられたがそれも偶然でしかない
そんな関係の自分といかにも正反対の4人組がなぜここに呼び出されたのが不思議でならなかった
足元から光が完全に消えたので見てみると先程の魔方陣らしきものが消えていた。それを見て今までの事から予想していたがそれが半ば確信へと変わってきていた。つまりここは異世界なのだと言うことに
それに気づいた直後、杖を持った蒼と白のドレスを着た少女が緊張した面持ちと可愛らしい笑みを浮かべ言葉を発した
「お待ちしておりました!勇者様」
少女の言葉で予想が予想で無くなる。この少女はクリーム色の髪をしており、肩より少し長いその髪はカールとなっていて顔は可愛らしく目が大きな少女だということがわかる
しかしよく見ると額にはいくつもの汗の粒をかいていて疲労していることがわかった。
そして、周りの神官みたいな姿のおじさん達が疲れ含めた笑顔を浮かべて「ついに成功したぞ!」などを言って騎士達も地味にガッツポーズをしていた。
だけれどもしかし、こちらは迷惑な話である。ただ家に帰ろうとしていたらいきなりここへと召喚?されて意味が分からないまま勝手に相手が喜んでいるのだ。しかもご丁寧に拘束して強制的に召喚されたのである。これは、一種の誘拐と言うのだろうか?
結局、嫌な予感が当たってしまったのだろうか?けれどもこれはこれで楽しそうなことが起こりそうな感じがしたので施設のみんなには悪いが場の流れに乗ろうと思う暁でありこの後の流れも大体は予想が出来ていた
自分達はいわゆる小説などで語られる勇者召喚という物によって呼び出され何かしらの願いをされるのであろうと
しかし、本当にあり得るのだろうか?自分が知っているのは小説の中やゲームの中だけの架空の話だけだ。実際にそんな体験談は一度も耳に入った事はなかった。
でも、こうして自分が実際に非現実的な出来事を体験しているのだから認めざるを得ないだろう。
そんな事を考えているうちに暁と一緒に召喚された四人組の中から他の三人よりもいち早くに気持ちを落ち着かせた一人の少年が目の前にいる、多分自分たちを召喚したであろう少女へと質問をする
「あの...これはどう言うことなのでしょうか?いまいち状況がわからないのですが...勇者ってどう言うことですか?」
この少年、名を朝陽 勇輝といい四人組のなかでリーダー的なポジションにいて運動神経が良く頭もいい、優しそうな雰囲気を持っているイケメン黒髪黒目の少年で、身長は暁と同じぐらいの176でいて性格もいいのでバレンタインの時には先輩、後輩、同級生の女子たちからたくさんのチョコを貰うぐらいモテモテ
ちなみに久遠 鈴加は朝陽 勇輝の幼馴染みでもあって彼女(鈴加)も勇輝のことを好んでいる
勇輝に質問された少女は焦らず笑顔で質問に答えるべく口を開く
「はい!その事も含めまして私ではなく、国王直々からご説明させて頂きます!...現在国王は【王の間】に居りますのでそちらに移動したいと思いますが、よろしいでしょうか?」
少女は申し訳ないように聞いてきた。自分ではなく国王がこの状況を教えるのでついてきてくれといっているのだろう
そして勇輝もこのまま、ここにいても先に進めないことが分かり周りのみんなに目線をやり確認をして頷く。一応暁も頷く
「....わかりました。今の状況を把握するためにもお話を聞かせてもらいます。案内よろしくお願いします。」
すると先程まで不安そうにしていた少女が笑顔になる
「はい!こちらでございます!」
そう言うと少女は後ろにあった階段へと向かって歩いて行くので暁達も遅れないようにと少女を追いかけて行く。上へ向かって進む階段だったので、ここが地下なのだということが分かった。
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階段を上がる少女の後を追いかけて付いていくと、暁達は通路に出て奥へと進んでいく。ちなみに、少女に付いていくとき暁達は自然と先頭・朝陽 勇輝、次に勇輝の仲良しグループと続き最後に暁という並びになっていた。暁の後ろは暁がここに召喚された時から一緒にいた騎士達3人であり、神官みたいな人達は見当たらないので付いてきてないのが分かった。
「なぁ勇輝、俺たちこれからどうなるんだろうな?」
城の廊下を歩いているとき勇輝に周りに聞こえないように話しかけた大柄の男は勇輝たちの仲間で名前は矢本 大希といい最近では肉体を鍛えてムキムキになってきている186の長身、こちらも黒目黒髪の少年。
「ははは、僕に言われてもね。正直今は自分達の状況を確認しないとなにも始まらなそうだからね」
「ふーん、まっそれもそうだな」
勇輝は困りはてたそうに苦笑いしながら、頬を指で掻き先頭を歩く。矢本 大希が言い終わると正面に大きな両扉が見えてきた。その両扉は豪華に装飾されており見るだけで高そうに見えた。
(こりゃまー、高そうな両扉だこと。売ったらどれ程の値段するんだろうな。あっちでは何千万はぐだらないか?こっちではどれぐらいなのだろうな。)
暁は勇輝たちの会話を聞きながら前方に見えている両扉を不躾な目で値踏みをしていたが、幸いに誰からも暁の顔が見えない位置にいたので注意や変な目で見られる事はなかった
そして、両扉の前に着いたとき
「こちらが【王の間】でございます。ここに王が居ります」
くるりと蒼と白のドレスを着た少女がこちらを向き笑みを浮かべ言ってきたので、勇輝達は全員緊張した面持ちになっていたが、一方で暁は「やっと王様がいる所についたか。さぁて、今の状況を教えてもらいましょうかね。まっ、大体は予想がついているんだけど。」と内心、思いながら首をゴキゴキと鳴らしていた。案外誰よりも一番適応力が高いのは暁かもしれない。