第2話-うるさいやつと眠気-
高校の屋上で暁は買ってきたパンを食べながら昨日の事を思い出していた。
(はぁ、昨日はひどく怒られたな。なにもあそこまで怒らなくても良いだろうにな。明日葉の食べ物への恨みは怖いな)
暁は昨日コンビニで強盗犯を吹き飛ばしたあと、周囲が唖然としている中すぐさま急いでコンビニから出ていき、自分が住んでいる児童福祉施設へと向かった。だが信号やこの町で待つ時間が長いと噂の踏切に捕まるなどがあり、そのせいで施設に着くのが予定時間から20分遅く、暁は待っていた三人のうち明日葉と言う少女にこっぴどく怒られていたのだ。その少女の名前は間凪 明日葉といい、現在施設で暮らしている暁を除く三人の内の一人で長い黒髪をいつもポニーテール姿にしてる10歳の少女。なお、その少女に今の暁の言葉を聞かせたらまたもや怒りそうだが。
(けど久しぶりの外食を俺のせいで待たせたのは確かに悪い事をしたか)
ちなみに暁が住んでいる児童福祉施設は《ナハール福祉施設》と言い、この小さな町にある一つだけの施設。そこでは虐待をされている小さな子供や、孤児などを引き取り場合によっては新しい親を探したり子供が落ち着ける場所を探すと言う活動は勿論のこと、地域のボランティアとして海辺のごみ拾いなどをしている。
また暁、明日葉の他にその施設に暮らすのは、妙島 集と言う亜麻色の短髪とクール的な見た目をしている11歳の少年と、この三人が住んでいる施設を若くして建てたナハールと言う人物。尚ナハールは37歳とは思えない程の美女で腰まで垂らしている長い金髪と碧眼をしている。
また、暁は明日葉と集からは「あかにぃ」と呼ばれていて比較的に慕われている。そのあかにぃという名前は暁の頭文字の《あか》という所からとってるのと、暁の髪の毛が紅色であるという事からいつしかあかにぃと呼ばれるようになっていた。
そうこうしてるうちにパンを食べ終わった暁は下に降りるため屋上の扉を開け、まず中に入ると近くに設置されているゴミ箱の中にパンのゴミを捨て階段を下りていく。
下りていく途中、いつものように生徒達に避けられたが気にしないで自分の教室へと向けて歩く。
そして、自分のクラスの前へとついた暁は扉を開け、中へと入っていく。入るとペチャクチャと話していた生徒達が扉の方へ一瞬向いたが暁だということが分かると瞬時に元の状態に戻る。クラスの生徒達は多少なりとも暁への免疫がついていたので恐怖といった様子もなくこうして普通にしていられた。しかし、暁に話しかけて来る者はあまり見たことがない。
暁はクラスの中には入ると、窓側の列で一番後ろの席へと座る。ここが暁の席である。
最初の頃は内心で喜んだ。それもそうだろう、暁に取っては今まで望んでいた席なのだから。しかし、今ではどうなのだろうか?
最初の頃は、アニメや漫画でよく主人公が机に肘をつき外の景色を見るというやつを真似する遊びをしていたが、結果は何もおもしろくはなかった。ただただ、その時に思ったことは「あぁ、今日は良い天気だなぁ~」ということだけだった。それから色々やってみたが出た結果は、つまらないと言うことと妙な恥ずかしさだけが残った。
それ以来その様なことはしなくなり授業中、黒板に教科書で書かれていない内容をノートに書くだけでそれ以外は寝ているだけだけの生活であった。
「ねえ、ちょっと! あんたでしょ! 昨日、コンビニを襲った強盗犯を退治したのって!」
自分の席で窓から漏れてくる太陽の日差しをポカポカと受けた暁はうとうとして腕を枕にうつ伏せの状態になろうとしたらそれを阻むかのようにきゃんきゃんといつの間にか横に立っていた少女が吠えた。
その彼女はリア充四人組と暁が呼んでいる中の一人で茶髪の髪をショートヘアーにしている学年とわず生徒の中で上位に入るほどの活発形美少女だ。名前は久遠 鈴加という。また、彼女は自分の身長の低さと胸が控えめなのを少し気にしていた。
そして、暁はこの時このやかましい少女のせいで眠気が醒めたのをちょっとだけいらっとしたので少女の方へと顔を向け睨んだ。
「な、なによ! なんであたしが睨まれなきゃダメなのよ! いいから質問に答えなさいよね!」
睨んだのにあまり怯えないこの少女に内心少し驚くがそれよりもこの時暁は迷っていた。
確かにコンビニにいたし、強盗犯をぶっ飛ばした。けれども、それは単に約束の事を思い出して邪魔だから飛ばしたのであり、強盗犯をやっつけるためにする退治とは違うのだ。そして、ここで暁の頭のなかでこのような選択肢が見えてくる。
選択肢↓____________________________
① イエスという。
②退治ではな偶然だと言う。
③その他
____________________________________
①は話の流れに合わせて自分が退治したという。
②は急ぎの用事がありぶっ飛ばしただけだと本当の事を話す
③その他、「俺じゃない!俺じゃないんだ!勝手に、勝手にこの左腕が動き出したんだ!くっ、鎮まれ《裁判神の手》!!」
そして暁は悩んだ末出した答えは……
そう、暁が出した答えは選択肢④の無視であった。暁は鈴加の質問を無視して腕を枕にうつ伏せになり寝始めた。はっきり言ってめんどくさいのである。暁に取ってはどうでもよく、構ってるとまた余計にめんどくさくなるような雰囲気が感じ取れていたからだ。
「ちょ! 何んでいきなり質問中に寝るのよ! 早くこたえなさいよ!」
鈴加はそんな暁の態度に驚き、机をガタガタと揺らし起こそうとする。だが暁も徹底して無視の姿勢をとる。全生徒の中でも美少女と名高い鈴加の質問され、こんな徹底した態度をとれるのは世界広しと言えど暁ぐらいだけだろう。
「まぁまぁ、鈴ちゃん。夜雲君もしゃべりたがらない様子なんだしもういいでしょ?」
すると、そこに現れたのはこれまたリア充四人組の一人、杉本 結という少女であった。こちらもこの高校でかなりの上位に入る顔立ちをしている美少女で背中の中間あたりまである黒髪をストレートにしている162㎝ぐらいの女の子。また、結はスタイルも良いので鈴加は地味に結の身長と胸を羨ましがっていた。
「なによ、結だって気になっていたでしょ? 強盗犯を退治したっていう紅色の髪をした男ってこいつしかいないじゃない!」
そう言いながら鈴加は人差し指を何度も暁に向ける
暁は横目で見ていて(こいつ呼ばわりと指差されるとかやめてくれねぇかな~)と内心ため息を吐いていた。
「確かにそうだけど……だけど、夜雲くんは話したがらないから無理に聞かなくてもいいんじゃないの?」
結は後ろに手を回し苦笑いを浮かべて首を傾げる。
「えーでも気になるじゃん!」
「いいからいいから。じゃあね、夜雲くん。あとごめんね? 鈴ちゃんが迷惑かけて」
そう言うと結はまだ駄々をこねる鈴加をつれて先程まで自分達がいた席へと戻っていった。
暁は結が鈴加を連れていったあとまた眠気が襲ってきたので邪魔されないうちに身を流れに任せてそのまま眠りについた。