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異世界に来たんだから楽しまなきゃ損だろ?  作者: ポチルン
第1章 ~プロローグ~
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プロローグ-最初の別れ-

連載してみました(´▽`;)ゞ!

 ある日の夜、深い森の中を走る人影が二つほどあった



「はぁはぁはぁ」


「はぁはぁはぁ」



 二つの影は何かから追われるようにして木の間を縫いながらに走っていた。

 ひとりは漆黒の黒髪に同じく黒目、この世界では珍しい色を持った男性だった。その男は身長が高く、しっかりとした体格をしている。顔立は整っているようには見えないが、それは目付きが少しだけキツいのが原因なのだろう。

 そしてもうひとり。こちらは道行く全ての者が美しいと答え、頷くだろうと思われる女性であった。腰まで伸びる長髪はまるで燃え上がる紅蓮の焔おも想像させるような紅髪で、瞳はそれに相反してまるで澄んだ湖面のような色をしている蒼眼。


 そんな美女と野獣のような組み合わせの二人ともが、身体のあちらこちらに傷ができていてそこからは血が流れていた。

 男が身に付けていた防具にはヒビが入り、女は着ていたローブは所々破れていてただ事でない後を物語っている。そして、その女の腕の中には大事そうに抱えられた赤ん坊がこんな状況でもすやすやと穏やかに安心しきってる様子で寝むっていた。


「くそっ! しつこいやつらだ!」


「どうするの!? このままだとこの子まで私たちのせいで危険にさらされるようになるのよ!?」


「わかってるよ! せめて俺たちの子供を安全な場所まで連れていかないと!」


 そんな必死に走る二人が会話を終えた直後


「っ!?」


「!?」


 勢いよく男は右へ、女は赤ん坊を庇うようにして左へと転がりだす。

 その次の瞬間、先程まで二人がいた場所へと無数の黒い光が地面に直撃し爆発音が轟き、粉塵が舞う。

 二人はすぐさま立ち上がり、黒い光の飛んで来たほうへ緊張の色を浮かべながら顔を向けると今まで自分達を追っていた黒いフードを深く被った集団と先頭にはフードを被っていない集団のリーダーと思しき紫髪長髪の男が表れた。

 その紫髪の男は口元をニヤつかせながら逃げていた男女へと後ろの集団を引き連れながらゆっくりと近づいていく。


「そろそろサァ~鬼ごっこ飽きてきちゃったんだよネェ~。

だからサァ~大人しく死んでくれないかナァ~?」


 そうつぶやくと紫髪の男は腰につけている剣へと片手を添えた。


「あぁ、そうかい。こっちもそろそろ飽きてきたところだ」


 緊張した面持ちで頬には一滴流れる。黒髪の男はそんな緊張する中、相手の質問に答え懐に手を伸ばす。


「そっカァ! じゃあ大人しく死んで」


「やだね」


「ーーハァ?」


 黒髪の男がやっと逃げずにおとなしく死んでくれると思った紫髪の男は歓喜を露にし立ち止まるが矢継ぎ早にすぐさま否定の言葉を受け、眉を潜める。


「誰が大人しく何か死んでたまるかよ!」


 今度は黒髪の男が一瞬ニヤっと笑みを浮かべ、そう言うと懐から魔法のスクロールを三つ取り出し紫髪の男へ向かって投げ付けた。


魔法煙スモークマジック・発動!!」


 掛け声とともにスクロールは輝き始めたと思いきやその瞬間スクロールが無くなり、代わりに大量の煙が現れた。それに紫髪の男が驚いてる刹那、二人の男女は走り出す。


「今だ! 走れ!」


「ええ!!」


「くソォ! お前らやつらを逃がすナァ!」


 そして、逃げた二人を追うよう黒フードの集団に命令するが前の煙に道を阻まれ消えるまで進むことができなかった。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「はぁはぁ、何とか撒けたみたいだな」


 二人は何とかあの場所から逃げて来れて、走っている時に偶然絶壁を見つけ、そこに大岩で隠れて見えずらくなっていた洞窟を発見したので休憩もかねてその洞窟に隠れることにした。

 念のため、あとをつかれていないか確認してようやく休むことにした。ただすぐに動けるよう男は立っていて、洞窟の入り口付近で隠れながら外の様子を警戒している。


「はぁはぁはぁ、ええそうね..‥..うっ」


「どうした!?」


 休んでいると突然、女の辛そうに何かを堪える声が聞こえたので男が女の方向へと顔を向けると凄い汗をかき、洞窟の壁に体重をかけその場に座り込んでいた。


「大丈夫……心配ないしなくていいから」


 女は心配させまいと辛そうな様子を隠すようにして、男に向けて小さく笑みを浮かべ答える。


「全然大丈夫じゃないだろ!」


 しかし心配した男は女の方に駆けつけて彼女の肩に両手をのせ彼女の目線に会わせるようにしゃがみこんだ。

 すると彼は彼女の常態に気付たのだろう。頭からは大量の血が流れており、彼女が体重をかけていた壁には上から下へと擦らせたように血の後があって「まさかっ!」と思った彼が彼女の背中を見ると既に着ていた服が背中の部分だけ焼け焦げたように破れていて素肌が露になり痛々しい程に血が出ていた。

 まさかこんな大ケガになっていたなんて知らなかった男はショックを受け言葉がでなくなり、目を背けるようにうつ向く。


「っ!?」


「あ……ははは、頑張って分からないようにしてたんだけどなー、赤ちゃんを庇う余りに自分がこんな目にあうなんて、私もまだまだだわ……イタタ」


 男の様子に苦笑いを浮かべ、気にさせないように冗談めく様子で話しかける。そんな彼女の言葉を聞いてた男は治してやることも、癒すことも出来ない自分の無力差を感じ、拳を握りしめる。

 その拳の隙間からは血が流れていて、歯を悔い締め瞳からは涙が静かに流れる。


「いや、お前は悪くない。俺がこんな不甲斐ないばかりに……すまない」


「……いいのよ、私が好きで今まで貴方に着いてきたんだから」


 男が自分の姿を見て悔やみながら泣いてる姿を見て不謹慎ながらも嬉しく感じる。


(ふふ、彼が私のために泣いてる姿ってこんな状況でもなんか嬉しいわね……改めてわかった気がするわ、愛されてるって言う気持ちが)


 そんな風に思いながらまだ泣いている彼に向け、優しい笑みを浮かべながら彼女は涙を指で拭いてあげ、次に自分の腕の中でまだ寝ている赤ん坊を見て、持ち上げると男へと差し出す。


「そんなことより、この子だけでも連れていって……私はもう長くはないと思うし、足手まといだから」


「……ダメだ」


 彼女の言葉を否定するように男は答える。それに彼女は一瞬何を言っているのか分からなくなる。


「え?」


「お前を……お前をここには置いてはいけない。置いていけるわけがない!」


 そんな彼女の困惑する様子を無視し男は顔を上げて大きな声で言う。


「バ、バカなこと言ってないで早く「おい!! こっちからあいつらの声がするぞ!!」っ!」


 会話の声が大きかったのか、それとも単に黒フードの集団に余程耳がいいやつがいたのか分からないがこの場所は気付かれたらしい


「しまった、外に出ても鉢合わせになるかもしれない」


 そう言い男は腕で目を強引に拭き、立ち上がる。拭いたあとには先程の情けない気持ちと顔はなく覚悟を決めた男の顔へと変わっていた。


「だから私を置いて逃げていればよかったのに」


「お同じこと言わせるな…….仕方ない、この洞窟の奥にいくしかないか」


 そう言うと男は赤ん坊を抱いて座ってる女を胸の前まで抱え込み暗い洞窟の奥へと駆け足で向かっていく。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 奥につくと不思議な雰囲気の頑丈そうな扉があった。

 男は扉の中がどうなっているのかも分からなく、不安だったがこのままでは追い付かれると思い、扉を静かに押して入ってみる。

 入ってみると、扉の向こう側は別世界のような神秘的で川が流れ草や花が咲いている広い遺跡の中だった。そして、妙に明るいと感じ上を見上げるとあるはずの天井がなく、そこには深い闇の中、満月が輝いていた。また、その遺跡の中心には台座があり淡く光輝いていた。


「ここは」


「知ってるの?」


 この遺跡を見て、彼がここを知ってるような声を出したので腕の中でこれまで黙っていた彼女が彼を見上げるようにして聞いてみた。


「ああ、俺がこの世界に来るきっかけとなった物と似ている」


 そう男は言い、一瞬苦虫を噛むような顔で思い出したあところりと顔を笑顔に変えて彼女の顔を見て言う。


「けどそのおかげでお前に会えたから感謝しないとな」


 すると彼女は青白くなっていたのが嘘のように頬を赤く染め、ぷいっと横に向いた。その様子にしてやったりと思い、にやけていたが後ろから「居たぞ!」と言う集団の声が聞こえ男はすぐに切り替えて扉を閉める。

 そして女を下ろすと扉に全体重と力をかけるよう背中をつけ、踏んばるように足を肩幅に広げ腰を落とし力をいれる。


「しかたない。そんな状態のお前には悪いが子供と一緒にそれを使って逃げろ。中心にある台座に登って中央に暫くいたら転送される。その間、ここは俺がなんとしても死守する」


「でも!」


「いいから早くしろ!」


 男が必死の形相でそう叫ぶと女は血だらけの体を引きずりながら子供を抱いて台座に向かっていく。それを確認し終えるとその直後、爆発音が鳴り響き衝撃が扉越しで伝わる。


「くっ!」


 男は扉を開けまいと必死に身体強化魔法も使い身体に鞭を打って力を加える。

 一回目を耐えたあとまたも爆発音と衝撃が走る。次は先程より威力が高いのか爆発音が先程よりも大きく響き、衝撃も一段と激しさを増し、連続で続く。

 それを何とか耐えきり、音が止んだあと男は次に備え瞬時に体制を整える。が、次に来たのは予想外にも爆発音でも衝撃でもなく紫髪の男の声だった。


「ハァ~、あのサァ~さっさっと開けてくんないかナァ~? こっちにモォ~用事って言うものがあるんだよネェ~」


「はっ! じゃあ、そっちの用事が終わってからまた出直してこいよ!」


 その紫髪の男に向け時間稼ぎのついでに言葉を投げ掛ける。


(ま、そんな簡単に引き返すようなやつらじゃないって事はわかってるんだが)


 そんな風に思いながらも一応言ってみるがやはりダメだったようだ。


「そうしたいんだけとサァ~こっちの方が最優先なんだよネぇ~。だからサァ~チョォ~と力付くでこの扉を壊すかラァ~……ヤレ」


 するとその声が聞こえた瞬間に先程とは比べられないほどに攻撃が激しくなり衝撃が強くなったが、全ての筋力とあと少ない魔力を使い必死に食らいつく。


「く……もう少し耐えてくれ」


けれども彼の願いは届かなく、何発目にしてついに開くのかと思った瞬間


「おまたせ」


そんな声が聞こえ振り替えると紅髪の女が近くまで近づいていて傷だらけの身体を扉につけ男と同じく身体強化魔法を自分に付与し全体に力をいれる。衝撃が走るごとに二人の傷が開き血が吹き飛び、意識が朦朧とする。


「な……なんでお前がここに」


「ふふ、貴方がさっき私に言った言葉をそのままそっくりかえす...…あと子供はきちんと置いてきたわ、あの子の名前を書いた紙と一緒に。それと、あのペンダントも」


 舌を出し、ウィンクをし、いたずらっ子のような笑みを浮かべてる彼女に男はそれ以上は聞かなかった。立場が逆なら自分もするだろうから。


「...…そうか。あの子にはすまないことするな」


「大丈夫よ..‥‥何てたって私たちの子供だもの...分かってくれるはずだわ」


「だといいが....‥はぁ、でかくなったあいつに父親らしいことしたかったな。」


「私だって……母親らしいことしたかっわよ。あぁでも女運が悪くならないでほしいわね、誰かさんみたく……」


 そう言い呆れたようにため息を吐くと、転送される自分の子供を見ながら言って小さく笑う


「それって俺のことか?」


「...…はぁー」


 彼女はその男の自覚の無さにまたも呆れてため息を吐く。

 なお、こんなほのぼのとした日常会話をしているが現状、二人はボロボロで傷だらけで瀕死の状態であり、何とか踏ん張っている状態には変わらない。

 そして尚も連続で続く止まない激しい攻撃が扉越しに伝わる。それを堪え、尚且つこんな会話ができているのは個人個人の力の強さと二人が合わさったことによるものなのだろうか。


「な、なんだよ....‥俺みたいなのを好きになる物好きはお前だけだぞ?」


 長くジト目で見られ男は怯えた様子で答える。 


「そうかしら?私の他にそんな物好き少なくとも2人いたと思うわよ?」


「な、なに!?誰だそんなやつ!?」


「ふふ..….この際だから言うけど、私の他にあなたを好きだった人はジェシカとメルマよ」


「そっか、まさかあいつらがな.‥‥.てかメルマもか、あいつにいつもいやらがらせされていたんだがな」


 男が衝撃の事実を聞いて驚き、意外なやつからの好意に戸惑いを隠せなく苦笑いをした。

 そんな楽しい夫婦の会話も一段落が告げた直後、赤ん坊を置いた台座が一層輝きだし昼のように周囲を光が埋め尽くす。


「お、時間がきたんだな.‥..[レリー]、最後に俺たちの思いを伝えようぜ」


 そう男が言うと夫婦になって以来言わなくなった自分の名前を言ったので少し驚き「クスッ」と小さく笑う。また女、レリーの瞳は我が子の別れが来て潤んでいた。

 

「...‥.ええそうね、[リュウくん]」


「せーので言うぞ、せーの!」


「****! 強く生きろ!」


「****! 強く生きなさい!あ、あともうひとつ。こんな情けないお父さんみたいになるんじゃないわよ。「おい!」あと女性に優しくして、元気に生きな..‥‥さい。あと、あと......」


 女は声を震わせてひとつでも多くのことを伝えようとし震える声で言葉を紡ぐが声が出なくなる。その代わりに瞳からは今まで我慢してた涙が大量にこぼれ落ちる。

 もっと一緒にいたかった、もっと愛情を注ぎたかった、もっと、もっと、もっと......大きくなったら色んなことを教えてやりたかった。


「はぁ泣くなよ、まー俺もお母さんと似たような感じかな。とにかく、よく食べてよく寝てすくすくでかくなれよ。それと...‥こんななにもできない両親ですまない。」


 亮がレリーの頭を自分の胸の中に抱いて最後にそう言葉を紡ぎ終えるとまた一層光が強くなりその瞬間、台座から光の巨柱が天より高く伸びていった。

 二人は眩しすぎて光がおさまるのを目を閉じ背けながらながら暫く治まるのを待つ。そして再び目を開けるとそこにはもう台座は輝きを失っていた。


「....‥行ったな」


「....‥ええ」


 そう二人が呟き、涙を流しながらお互いの手を繋いぐ。


「久しぶりに繋ぐわね、貴方と出会ったころ思い出すわ」


「あぁ、俺もだ。俺たちが出会った時もこんなような感じじゃなかったか?」


「確かにそうね..….楽しかったわね。あの頃は」


「…...ああ、そうだな」


 二人は繋いだ手をよりいっそう強く繋ぎ会わせた。

 それは、お互いに死んでも離さないというような思いでいつまでも、いつまでも、固く繋ぐ。決してお互いが離れないように、手放さないように。ずっと一緒にいられるようにと。
















が、しかし























ーー「は~い、チェックメイト! ギヒヒヒヒ!!」ーー



 その瞬間、強烈な爆発音が鳴り響き衝撃が走ると今まで耐えてた頑丈な扉が木っ端微塵に吹き飛ぶ。そして舞った砂ぼこりの奥で紫髪の男の口元が歪んでいた。

      

              ◆


              ◆

              

              ◆


 その頃、ある場所では


「わぁ~あ。まったく。先輩が今日の見回り当番なのに...…ん?なんだあれ?」


 道外れの隅で小さな赤ん坊が泣いていた...…




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