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魔王が紡いだ御伽噺(フェアリーテイル) ~avenger編~  作者: シオン
~avenger編~ 第二章「緑のドラゴン」
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第五話『green thunder』

 夜空を真昼のように照らし出す日輪のような天使。

 最上級の天使すべての戦闘データを結集し、すべての天使の長所だけを取り入れた史上最強の天使、それが白夜の隣にいる白夜のパートナー、ジブリールだ。

 ミニスカートの黒いカクテルドレスを身に纏い、銀髪の混じった黒髪を風に靡かせる。


「嘘、だろ……? 〈tutelary〉のリーダーが、焔の兄貴……!?」


「大きくなったね、焔。でもまさか契約者になってたなんて、運命的で嬉しいけど……兄としてはあまり好ましくないかな」


「私達のことなんて何も考えてなかったくせに……今更兄貴ぶって……私に接するなぁッ!!」


 焔が叫ぶと同時、焔が騎乗しているラボーテに炎のたてがみと翼が現れる。

 これが焔がクサントスのことをペガサロスと名づけた理由。

 主の感情によって真の姿を表すラボーテ。

 焔はラボーテの手綱を大きく引き、白夜へ突っ込んだ。


「ラボーテ!! 神機奥義〈天馬飛翔激ペガソ・ギャロップ・マキシマム〉!!」


 大気圏に突入するように紅く染まったラボーテが、白夜へと追突する。


「なんつう攻撃力だ……一瞬にしてあたりの空気が灼熱しやがった……」


 陽炎に歪む空間が、その技の威力を物語っている。

 肌を焼かれそうな熱量に顔を歪めつつ、衝突した方へと視線をやる。


「な、嘘だろ……?」


 果たして今夜は何度驚かされるのだろうか。

 衝突したラボーテの角を片手で握って一切動かさず、白夜は微動だにしていない。

 天使最強と自負するだけはある。

 同じ天使の攻撃を完璧に防いでいる。


「やめてよ焔、折角の再会じゃないか」


「っ……ええ、私も会いたかったわよ……貴方を断罪する為に……貴方をぶん殴る為にッ!!」


 角よへし折れろと言わんばかりに、主の激情を受けてラボーテがその威力を上げていく。


「もうやめなよ。僕には届かない。ジブリール」


 白夜がその名を口にした瞬間、ラボーテの角が根元から切断された。

 切断面は非常に滑らかで、ヤスリでもかけたかのようだ。


「ラボーテッ!! クソッ……クララ!!」


「おい焔、一人で突っ走るな! ソイツはいくらお前でも一人で勝てる相手じゃない!」


「邪魔しないで! 邪魔するようなら……貴方から焼き尽くす……!!」


 ここまで余裕のない焔は初めて見た。

 これが真に誰かを憎んでいる者の形相か。

 黒音はクラウ・ソラスを構える焔の腕を掴み、隣に並んだ。


「どうせやるなら俺にもやらせろ。コイツは魔王の守護者だ」


「……ごめんなさい……行くわよ、クララ、黒音君……」


 何とか冷静さを取り戻した焔が、改めてクラウ・ソラスを構え直した。

 その隣では、黒音がダーインスレイヴを構えている。


「どうしてもやる気なんだね?」


「当然。今更止まる気なんてないわ」


「君は関係ないのにどうして?」


「俺は単にブッ飛ばしてえからだ。コイツの太陽みたいな笑顔を曇らせたお前を、俺は心底ブッ飛ばしてえ」


 黒音が首を左右に傾けると、骨の鳴る音が軽く響いた。

 記憶を失ってから初めて、未だかつてないほど怒っている。

 記憶がなくても本能でわかる。自分も焔と同じく、人を恨む側の人間だから。


「はあ……だったらこの二人を倒したら相手してあげるよ」


 面倒くさそうにそう吐き捨てると、白夜は指を鳴らした。

 すると元からそこにいたかのように、二人の少女が割り込んできた。

 先程まで海里華と漓斗が相手していた堕天使と女神の少女だ。

 二人と戦った後の割には、消耗している気配が一切ない。


「白夜ちゃん、片付けてきたよ。次は誰?」


「素質はあったけど、歯応えはなかった……」


「次は目の前の二人だよ。黒い鎧の方はどうしてもいいけど、白い鎧の方は僕の一番大切な妹だから命は奪わないでね」


「わかった。じゃあ加減の出来ない優じゃなくて、コロナが白い方を相手するね」


「あぅ……コロナがディスった……」


 焔の相手となる女神の少女はコロナ。

 四肢を包むのは金色の金具が目立つ、装飾の激しい民族衣装のような戦闘服。

 真っ赤なロンググローブとニーソックス、ビキニのような露出度の高い姿の彼女の肩からは、翼を描くように炎が薄く吹き出している。

 見るからに海里華が苦手そうな近接戦闘向きのフォルムだ。


「僕は黒い方……なんだか、残り物みたい……」


 黒音の相手となる堕天使の少女は優。

 ボンテージ衣装のように体にぴっちりと張り付く形の、機動性重視の軽装。

 両腕には少女の身長を越える、巨大な腕の形をした装甲が装備されている。

 漓斗と戦って勝ったと言うことは、ただ防御するだけのものではないはずだ。


「……おいクソガキども、五分だ」


「はえ? クソガキって私達のこと?」


「今度はがっつりディスられた……」


 黒音はダーインスレイヴの刀身に手をかざし、それに魔力を注入していく。


「五分で片をつけてあげるわ」


「はぁ? 私達二人を相手に五分で?」


「寝惚けてる……? それとも、挑発……?」


 焔も同じくクラウ・ソラスの峰に触れて、聖力を注入し始めた。


「残念ながら俺らは寝惚けてねえ」


「それに挑発をする必要がないわ」


 やがて体の力を抜き、目線を落とす二人。

 一瞬の静寂を経て、二人の怒りのボルテージとエネルギー量のボルテージが頂点を超えた。


「「お前ら相手に割いてる暇はないんだよッ!!」」


 黒音と焔は剣を持っていない方の手を自分の真後ろへ向け、その手に瞬間的に強大なエネルギーを込めた。

 一気に放出されたエネルギーがロケットで言うブースターの役割を果たし、二振りの神機を残して二人を一瞬にしてその場から消し去った。


「……って、散々かっこつけた割りに逃げたし!」


「拍子抜け……構えて損した……」


「……誰が逃げたですって……?」


 二人の耳元に、聞いたこともないような低い声が響いた。


「「おらおらおらおらぁッ!!」」


 振り返った二人を待っていたのは、想像を絶するスピードから繰り出される肉弾戦の猛攻。

 近接戦闘が専門の二人でさえ、まったく反撃することが許されない怒濤の連続攻撃。

 まるで亜音速の銃弾を全身に受け続けているようだ。

 呼吸さえさせてもらえない憤怒の連撃は、優の装備する重装甲の盾を発泡スチロールのように粉砕し、コロナの炎に包まれた肌を容赦なく引き裂いた。


「あれは、なんなのよ……私達が二人がかりでもまったく歯の立たなかったアイツらを……」


「圧倒、と言うより蹂躙していますわ……それも、神機を一切使わずに……」


「へぇ。手のひらや足の裏から瞬間的に放たれる高密度のエネルギーで超高速移動してるんだ。でもそんな物理法則を力で捩じ伏せるようなやり方してたら、後の反動が怖いね」


 元から持ち合わせていた格闘センスと、果たして百パーセントまで発揮しきれているかどうか分からないような化け物じみたエネルギーの保持量。

 なによりその才能を一時的ながら完全な状態で使いこなす感情の変化。

 すべての可能性が二人の戦闘力を飛躍的に引き上げていた。


「これで……!!」


「決める……!!」


 元の立ち位置に戻った黒音と焔は、放置していたダーインスレイヴとクラウ・ソラスの柄を握りしめて必殺の構えをとった。


「何をいって──かはッ……!?」


「コロナちゃ──ぁがッ……!?」


 二人が鋭い眼光を飛ばすと同時に、二人の腹から紅い飛沫が弾ける。

 横一線に走った刀傷は、寸分違わず左右対称に二人の腹をかっさばいた。


「「神機奥義・合……〈菊一文字(きくいちもんじ)〉……これで五分」」


 刀身に染み付いた血を振り払い、二人は二振りの神機を逆手に持った。


「ぁ、ぐッ……そんな……あり得、ない……っ」


「コロナ達が……手も足も出ないなんて……っ」


 ダーインスレイヴの特性は痛覚への直接攻撃。

 どれだけ固い装甲であろうが、一ミリでも傷をつければその痛みを何十倍にも膨れ上がらせて与える。

 クラウ・ソラスの特性は時間経過による威力倍々。

 一定時間毎に威力が倍増していき、最終的には使用者のエネルギーと同じ量のエネルギーを込められた威力に倍加する。

 限界まで高められた痛覚に、焔と同等の聖力まで威力を倍加された斬撃を食らったのだ。

 いくら四大チームの契約者とは言え、ただでは済まない。


「まだ、まだ……っ」


「負けられな──」


「失せろって言ってるだろッ!!」


「貴女達二人にようはないッ!!」


 コロナと優の二人を左右から同時に回し蹴りし、踵落としで地面へ突き落とす二人。

 海里華と漓斗が二人がかりでも負けた相手を、何の行動も許さずに戦闘不能にしてしまった二人の実力。

 二人の圧倒的実力に、海里華と漓斗は畏怖を抱いた。


「さあ、次は貴方よ」


「いい加減待てねえぜ」


「まさか、あの二人をこんな簡単に倒しちゃうなんてね。仕方ないか。でもいいのかい? あれを放っといたら僕は大丈夫だけど、君達全員消し飛ぶんじゃない?」


 白夜が指を指した先には、ヨルムンガンドの首に深々と牙を突き刺して獰猛な唸り声を挙げるフェンリルの姿があった。

 双眸は狂暴そのもので、明らかに理性を失っている。


「アイツ、暴走してるのか……?」


「同じ〈終焉の悪戯〉同士が戦闘したのが原因ね。同族同士で戦闘したことで三体の近郊が崩れたのよ。そのせいで消耗の激しいフェンリルの方が先に暴走したのね」


「あのままだとあの子は崩壊する。つまりここ一帯を吹き飛ばす生きた核兵器ってわけさ」


「なに楽しそうにしてやがるテメェ……!」


「だって滑稽じゃないか。身内同士で喧嘩した挙げ句その代償がすべて一つの弱い器へとのし掛かったんだ。自業自得なんて言葉じゃ片付けられないくらい、滑稽だろう?」


「やっぱテメェはいけ好かねえ。後で覚えとけよ。行くぞ相棒!」


『おっけ、任せてよ!』


 ダーインスレイヴとアイギスを人の姿へと変身させ、フェンリルの方へと直行する。


「待って黒音君、私も行くわ!」


「……いいのか? 千載一遇のチャンスなんだぜ? 今ならアイツは単体だ。邪魔するよう奴もいねえ。差しで戦えるぞ?」


「……どうせ今の私じゃ勝てないわ……それよりも、海里華ちゃんと漓斗が負傷してるんだから、何としてもあれを止めなくちゃ」


「……恩に着る……行くぞ!!」


 まるで狙い通りと言わんばかりに澄ました顔をしている白夜に見送られながら、二人はフェンリルの方へと直行した。


「サンティ、あの狼の口回りだけを石化させろ! 俺がその間にヨルムンガンドを狼から引き離す!」


「だったらスピードとパワーが必要よ。私のラボーテを使って!」


「よし、フィディ、ラボーテは俺と一緒にヨルムンガンドを引き離すぞ! 焔には俺のザンナを貸す。狼が抵抗した場合に時間を稼いでくれ!」


「了解、確かに借り受けたわよ。二人とも、激アツに燃えてくわよ!」


 黒音チームは等間隔にヨルムンガンドの体へと取りつき、焔チームはサンティがフェンリルの口回りを石化させてからフェンリルを足止めする。


「よし、上手く狼の口を拘束したな。後は俺らがこのデカブツを狼から引き離すだけだ。気張ってけよ二人とも!」


 一体全体どれほどの長さがあるのだろうか、黒音は先ほど高速移動した要領でパワーを増幅させ、二体に負けないようにヨルムンガンドの体を引っ張った。


「ぐおぉッ……なんつう重さだッ……!? 気張んねえといけないのは俺の方か!!」


「あぐっ……!? さっきの消耗が激しい……黒音君、そういつまでも持たないよ!」


「分かってる! だがこれ以上はどうしようもパワーが足らねえんだよ!」


 いくら名馬と謳われた神機と六芒星のハーフが一緒だとしても、この規模を動かすにはいくらなんでも要員不足だ。


「せめて後一人……誰でもいい……力を貸してくれ……!」


 珍しく、懇願するように弱音を吐く黒音に、突如重圧がかかる。

 とうとう魔力切れを起こしたのか、幻覚まで見えてきた。

 そこにいるはずもない、深影の姿が見えたのだ。


「誰が勝手に死の危機を迎えていいと言った……? 何を勝手に弱音を吐いていると聞いているのだ!!」


 突如空から降り注いだ無数の黒い手がヨルムンガンドの体を縛り、黒音が引っ張っている方向へと強引に引きずった。

 神機の力を使いながらも、六芒星の力を使いながらも三メートル前後しか動かせなかったそれを、いとも簡単に投げ飛ばした。

 この心臓を鷲掴みにされているようなプレッシャーと、思わず身震いしてしまうどす黒い魔力は、


「深影! なんでお前が……」


「以前訪れたこの場所に、俺のチームの面子のエネルギー反応を感知したのでな。その上、内二つの反応が今にも消えそうなほど弱っている。気になって来てみれば……なんだこの様は!! あの時この俺に宣戦布告してきた威勢はどうした!!」


「こ、こちとら仲間の命が懸かってるんだ。あんな行き当たりばったりみたいな状況とは違うんだよ……まあでもとにかく、助かった」


「助かった、だと? 勘違いするな。貴様が来るのが遅いからこちらから殺しに来てやったのだ!!」


「猛獣も驚きの短気っぷりだな!?」


「白夜、まだ言っていなかったので言っておく。この男は俺のライバル候補だ。もし俺の楽しみを奪うようならば、いくら貴様でも容赦はしない。いいな?」


「まさか、最近噂になってる君と互角に戦った契約者って、そこの黒い人のこと?」


「そうだ。コイツは初めてこの俺を高揚させた。貴様のような掴み所のない性格ではなく、バカがつくほど愚直な熱血野郎だ。俺は初めて巡り会ったのだ。唾を吐きたくなるほどくだらない仲間意識を持っていながら、この俺と張り合い、あまつさえ俺のフリスヴェルグを含めるすべての戦術を封じた奴を!!」


 この場にいる全員が、その言葉に震撼した。

 不知火 深影はチーム〈tutelary〉の中でもっとも残忍無情で、白夜と正反対の契約者だ。

 その名を知らぬ契約者はいないと言われるほどの実力者で、滅多に本気を出さないことでも有名だ。

 その深影がここまで絶賛する契約者を、白夜でさえも見たことがなかった。


「まさか、まさかとは思うけど、モノクロちゃん……君の待ってる人って……」


「悪い深影、今はお前と戦ってる暇はないんだ。あの狼の暴走が続くとここ一帯が吹き飛ぶんだ。俺の仲間を守る為に、見逃してくれ」


「先ほどから貴様何を言っている? 俺は貴様と戦いたいが為にここへ来たのだ」


 視線を落とすと、深影の腰には武器やフリスヴェルグを内蔵している狼の頭をしたアクセサリーがもう元に戻っている。

 つまりいつでも戦闘出来る状態に戻ったと言うわけだ。


「っ……このままじゃ──」


「今ここで貴様や貴様の仲間が死ねば、俺は貴様と決闘する機会が一生なくなるのだ。とっととあのドラゴンを捩じ伏せて、俺の所へ来い」


「深影……! 悪い、恩に着る!」


 深影に後ろから尻を蹴られながらも、黒音はフィディとラボーテを連れてフェンリルと交戦する焔の元へ駆けた。


「きゃあっ!?」


『マスター!! 大事ありませんか!?』


「え、ええ……なんとかね……でもこのドラゴン、暴走してるせいなのか元からなのか、すっごく強い……」


『守護者の面々と戦った後に六芒星と戦うのは……流石に重荷……』


 ザンナの冷静な分析に、焔は思わず苦笑する。

 そうだ、私は黒音に神機を、願いを託されたのだ。

 仲間を守ってほしいと。それなのに、こんな所で諦めていては黒音のライバルでいられなくなる。


「ごめんねザンナちゃん、もう少しだけ持ちこたえて」


『任せて……もっと、やる気出す』


 ダーインスレイヴとクラウ・ソラス。二振りの神機は使用者のエネルギーをみるみるうちに吸い取っていく。

 その能力の圧倒的高さに比例した燃費の悪いタイプだ。

 裏を返せば投資した分は必ず返してくれる。

 だがこう言う長期戦にいたってはこれほど不向きな神機はないだろう。


「ザンナをよこせ焔! 俺も加勢する!」


「黒音君! ラボーテ、いらっしゃい!」


 フィディに騎乗した黒音と、ラボーテに騎乗した焔が、強大な力を持つ魔剣を右手にフェンリルへと突っ込んだ。

 暴走して理性を失った今なら、二つの目標を捌き切れる判断力は持ち合わせていないはずだ。

 二人で叩けば何とか暴走を止められる。


「目を覚ませ! このデカウルフ!」


 フェンリルの口が石化しているのをいいことに、黒音は何の躊躇もなくフェンリルの顔面を回し蹴りする。


「早く鎮静しないと、いつ爆発するかわからないわ!」


「だが、俺らにはコイツを袋叩きにして気絶させるくらいしか方法はねえんだぞ!?」


 それに黒音達のエネルギーも無限ではない。

 チーム〈tutelary〉のメンバーと戦った後に暴走した六芒星を気絶させるなど、二人にとっても至難の業だ。


「フィディ、お前も雷属性のドラゴンだ。この状況どうにか出来ないか!?」


『残念ながら、私は暴走した経験も見たこともありません。そもそもドラゴンが暴走することなど早々ありませんので……』


「黒音、私も協力するわ……!」


「海里華、お前っ……」


 左腕を押さえながらも、何とか尾を打って戦線に入る海里華。

 漓斗もその後ろに続いていた。


「このドラゴンは私が倒すの……こんな所で死なれちゃ、負け越しよ……」


「私は、面を汚された上に貴方に救われると言うのが納得出来ないだけですわ……」


「ありがたいが、今の俺らに選べる選択肢はねえ。ただ攻撃して弱らせるしかないんだ……」


「いっそのこと、そこのかませ犬さんが不意打ちでトドメを刺せば暴走は止められる上、貴方が倒したことになりますわよ?」


「全力で、互いにフェアな状況じゃなきゃ勝ちとは言わないの。私はそんな勝利、絶対に認めないわよ」


 海里華と漓斗を含めて、頭数は七に増えた。

 これだけの戦力があれば、何とかフェンリルを押し込めるはずだ。

 だがその様子を眺める白夜は、その光景にただただ呆れるしかなかった。


「……深影君、本当にあれが君のライバルなのかい?」


「そうだ。アイツこそが俺のライバルになり得る素質を持った契約者だ」


「あれだけの戦力がありながら苦戦しているようなあれが?」


「何度も聞くな。貴様の目は節穴か白夜? アイツは才能の塊だ。似てると思わないか?」


 あえて誰かと言うまでもない。白夜はそれが誰だが、薄々見当がついているからだ。


「……まさか。いくら何でもあり得ないね。今の彼じゃ小指であしらわれるよ」


今の(・・)、奴ならばな。なにせ、俺の足元に及んだばかりだ。だがあの男はこれから恐るべきスピードで成長する。俺は不確定要素が大好きだ」


 初めて見た。深影がこんなにも、楽しそうに笑っている所を。

 今までの戦いを見ていると、本気を出す所か敵に見向きもしていなかった深影だ。

 それがこんなにも、心から楽しそうにしている。


「……僕は二人を拾ってくるよ」


「ああ、必ず取り戻してこい。アイツら二人も黒音と戦う為の大切なピースだ」


「見方はどうであれ、少しは仲間に関心を持ってくれたみたいだね」


 ジブリールとともに夜の街へと消えていった白夜を見送ることなく、深影はずっと黒音がどう言う行動をとるのか興味津々だ。

 これから遠くない未来、自分のライバルとなり得る黒音に。


「理性っつうリミッターを失ってるせいか、どんだけダメージを与えてもまったく手応えがねえ……」


「龍の鱗はやはり強固ですわ……私のレイピアでさえ、かすり傷も与えられないなんて……」


「だったら今度は私に仕切らせて」


「なにか策があるのか?」


 一旦全員がフェンリルから離れ、焔は頭の中で纏めた作戦を矢継ぎ早に話した。


「ええ。まず私が広範囲の炎でフェンリルの鱗を加熱するわ。海里華ちゃんにはその上から出来る限り冷たい水をぶっかけて」


「冷たい水……? 量じゃなくて、温度なの?」


「そうよ。最後は漓斗と黒音の必殺技で決めて」


「なるほど、そう言うことか……よし、その作戦乗った」


 海里華と漓斗は首をかしげたまま、とにかく焔の指示に従った。


「行くわよウリエル、クララ!」


『イエス、マスター!』


『心得たやんね!』


「神機奥義、改〈無敗の紅蒼斬クリムゾン・アンビーダブル・サファイア〉!!」


 右手にはクラウ・ソラスを、左手にはウリエルの濃密な炎で作り出した炎の剣を持ち、焔は二つの刀身をクロスさせてフェンリルに突っ込んだ。

 フェンリルとすれ違う寸前、クロスしていた剣を一気に降り下ろす。

 するとクラウ・ソラスの纏う蒼い炎と、ウリエルの剣が纏う紅い炎が十字に重なってフェンリルの巨躯を一瞬で炎に包んだ。


「海里華、温度が下がる前に早く!」


「ええ、任せて! アクアス、ベリー冷たいので行くわよ!」


『おっけー! 冷え冷えキンキンだよ!』


「凍結寸前の神撃……〈深き海の槍デプス・オーシャン・ロンギヌス〉……追突!!」


 海里華の水瓶から飛び出した大量の水流が、海里華の頭上で太く、長く収束されていく。

 やがて巨大な槍となった水流は、ドリルのように渦巻きながらフェンリルに直撃した。

 そして全員の耳に、確かに届いたのだ。

 ──ピシッ……と言う微かな音が。


「「今よ!!」」


 焔と海里華の声が重なる。その頃には、もう二人とも準備が整っていた。


「何人をも退ける暗闇よ!」


「何人をも信じぬ大地よ!」


「「すべてを打ち砕く刃となれ!! 〈合体魔術(ユニゾン・スペル)〉!! 〈大地の奥底に(デプス・グランド)抱かれし混沌(・オブ・カオス)〉!!」」


 八本のレイピアと一振りの神機が、高密度の魔力と零力を帯びて灰色の蛇となる。

 八首の大蛇を纏める、さらに巨大な大蛇、計九頭の大蛇が、巨大な口を開いて次々とフェンリルを噛み砕いていった。

 一際大きな大蛇が最後の一噛みを決める。


「はぁ……はぁ……流石に、決まったでしょう……」


「あ、ぐ……これで決まってなかったら、もう手の打ちようがないわよ……」


「ほとんどの零力を、費やしましたわ……はぁ……もはや、変身を保っていることも難しいほどに……」


「だが、それ相応の成果は、得られたみたいだぜ……」


 満身創痍の四人の前で、フェンリルの強固なドラゴンの鱗が音を立てて壊れ始めている。

 焔の放った超高熱の斬撃でフェンリルの鱗を熱し、それを海里華の水槍で急激に冷やすことで、大きな熱衝撃を与えた。

 後は消耗した黒音と漓斗の二人でも、簡単に鱗を壊せたと言うわけだ。


「見ろ、壊れた鱗の隙間から龍力が漏れだしてる」


「これで爆発するだけのエネルギーはなくなったわ」


「……俺らだけじゃ無理だった」


 誰が欠けても、この結果には繋がらなかった。

 焔がいなければフェンリルの鱗を熱することは出来なかった。

 海里華がいなければフェンリルの鱗を冷やすことは出来なかった。

 漓斗がいなければ攻撃力が足らずに二人の攻撃が無駄になる所だった。

 この四人でなければ、駄目だったのだ。


「ありがとな、海里華、漓斗」


「べ、別に? 私は自分でデカい口叩いてアイツらに勝てなかったから、落とし前をつけに来ただけよ」


「右に同じく、受け取った金額分働いただけですわ」


「それでも、ありがとな」


 海里華には頭に手をおいて、漓斗には無理矢理手を取って微笑んだ。


「あら、私にはお礼はないんだ?」


「焔も、ありがとな」


「なーんか、とってつけたみたいね?」


「いやいや、そもそもお前がいなけりゃこの作戦自体生まれなかったんだから。結構感謝してるぞ」


「そう? ならいいわ♪」


 三人を後ろで待機させると、黒音は念の為に焔からクラウ・ソラスを借り、フェンリルに接近した。


「……おい、デカウルフ、目が覚めたか?」


『ん……あれ、ここ……ふぇ、ヨルムンガンドはどこっ?』


「引き離したよ。お前がいきなり暴走し出したからな」


『あ、そっか……〈終焉の悪戯〉同士が戦闘したからか……』


 ようやく状況を理解したのか、フェンリルはおすわりの体制でため息をついた。


『今年最大にやらかしちゃったよ……被害はどれくらい?』


「幸い、俺を含める数人がエネルギー切れと軽傷だ」


『よかったぁ……もし誰かを殺めたりなんかしてたら、もう一生立ち直れなかったよ』


「……そろそろ教えてくれよ。なんでお前は俺の名前を知ってた?」


『ふぇ──あ……そう言えば、そうだね』


 ヨルムンガンドとの戦闘が始まる直前、フェンリルは確かに黒音の名前を呼んだ。

 初対面だとしても、フェンリルは甲冑で包み隠された黒音を黒音だと迷わず呼んだのだ。

 この状態では隠すこともはぐらかすことも出来まい。


『……その質問に答える前にね、ひとつだけ聞かせて? あなたは何の為に戦ってるの?』


「俺が戦う理由は……俺の記憶を取り戻す為だ。後はもう何も失わない為だ」


『記憶を取り戻す……? じゃあ私と同じ……何も失わないってのは?』


「記憶も含めて、俺はいろんなモンを失った。大切な幼馴染みとの思い出、心を通わせていた相棒との日々、人間としての日常……そして家族……もうこれ以上、何も失いたくないんだ。だから俺は戦う。失ったものを取り戻す為、今あるものを失わない為に」


『……そっか、あなたの気持ちは十分に伝わったよ。今度は私がそれに答える番だね。フィル、モード"誓約"……』


 フェンリルの頭上に突如黒雲が現れ、それが帯電を始めた。

 たっぷりと一点に集中された極大の雷が、一心にフェンリルへと降り注ぐ。

 双眸を獣のようにぎらつかせ、エメラルドに染まったたてがみと瞳孔は浴びた電流によりさらに輝きを増した。


「なっ……一体化してる上にさらに変身するのか!?」


「六芒星のさらに上……六芒星の中でも限られたドラゴンにしか不可能な究極体のフォルム……」


 稲妻を模した逆立ったポニーテールと、鎧の至る所に刻まれた鎖の模様。

 緑色の鱗が密集した胸当てとスカートの間。露出した腹回りには鎧に刻まれた模様と同じ鎖のタトゥーが描かれている。

 電流を纏う二枚の翼の後ろに直径が少女の身長と同じサイズの輪が現れ、その輪にはそれぞれが色の違う電流を帯電する七つの突起がある。

 七色に煌めく輪を背後に装備し、腰に差していた柄の上下両方に小さな刃をつけた両刃の小刀をを引き抜くと、少女はそれに意識を集中した。

 すると両刃の小刀は突如稲妻を発して巨大化した。

 手のひらサイズの小刀は少女の身長以上に伸び、柄の上下両方についた小さな刃は日本刀の刀身と同じかそれ以上の長さとなった。


「ごめんね、隠してて。これが私の、真の姿だよ」


「お、まえ……なんで……なんで……ッ……」


 目の前にいるのが本当に本人なのか、心がそれを信じたくないと拒絶反応を起こす。


「なんでお前がここにいるんだよッ……梓乃ッ!?」


「嘘、でしょ……雷のドラゴンが、梓乃……?」


 口を押さえ、後ずさる海里華。

 精神的ショックに耐えきれず、意識を失って浮力を失った。


「ちょ、ちょっと! しっかりしてくださいな!」


 墜落しそうな海里華の腋に手を回し、海里華を抱き抱える漓斗。

 漓斗の腕の中で光の粒子を放ちながら一体化を解除した海里華は、身体的にも精神的にも、相当に消耗しているようだった。


「まさか、梓乃がフェンリルだったとはね……どうしてなの梓乃? どうして貴女が契約者になる必要なんて……」


「ほむちゃん……? あは……こんな偶然って……って言うか、ここまで来ると悲劇だね。私の大切な人が皆、人の命の上にしか生きられない契約者になってるだなんて」


 見間違いではないかと甲冑のヘルメットを外した焔の顔が、フェンリルの、梓乃の瞳に映った。


「ほむちゃんには分からないかな。私が小さい頃に両親を失ったのは知ってるよね?」


「ええ、知ってるわ。他でもない貴女から教えられたんだから」


「私ね、小さい頃の記憶がないの。目覚めたらね、いきなりスウェーデンにいたんだよ。ビックリでしょ? 私はそこである女性に拾われた。それが私の、二人目のママだよ」


「二人目のママ……? それは誰ですの?」


「リュッカ・エヴァンス……あの伝説のチーム〈Heretic(異端者)〉のドラゴンだよ」


 静まり返る全員の思考に、突如稲妻が降り注いだ。

 あの〈自然の恵み(フレイヤ)〉が、梓乃の母親?

 何かの間違いであってほしいと願うが、現に梓乃は六芒星の契約者だ。


「その人に拾われた私は小学四年生まで普通の女の子として育てられた。でもいつからかね、ママは私を契約者として育て始めたんだ」


「ちょっと待て、お前、いつから契約者してたんだ?」


「生まれた時からだよ」


「生まれた時、と言うのは具体的にいつのことなの?」


「私がリュッカの家で目覚めた時。だから本当に私が生まれた時だね。私は生まれつき契約者だったんだって」


 そんなことが現実にあり得るのか、例え両親とも契約者だったとしても、六芒星のドラゴンと契約している赤子を生む可能性は皆無に等しい。


「私はママの誇りを守る為に、ママの志を貫く為に、契約者として生きていくことを決めたんだよ。強く、優しくある為に」


「お前自身は……お前自身の願いはないのか?」


「私の、願い……? それは、強く優しく……」


「それはお前の母親の願いだろ。そんな受け売りじゃなく、お前自身が契約者になってまで叶えたい願いってのはないのかよ!」


 いつか、リュッカに説かれていたことを思い出した。

 確かリュッカは、契約者として生きていくことを決断する前に、あんなことを言っていた。


「いいかい梓乃、君の持ってるその不思議な力は、自分の願いを叶える為のものだよ。自分の手で、祈るのではなく、切り開く為の、ね」


「切り開く? でもこの力は……梓乃をいじめるの……」


「いじめる? どうしてだい?」


「この力を持ってると……皆友達がね、梓乃から離れてくの……」


「……人は理解出来ないことを拒む……ママもね、最初は皆に受け入れられなかったんだ。こんな力、誰も持ってないからね」


「ママも、なの……? じゃあ梓乃も……ママみたいに友達に自分のこと理解してもらう……私はママの願いを、引き継ぐ!」


「梓乃……そっか、梓乃はママの願いを……ふふ……ありがとう梓乃。でもね、ママの願いに押し潰されて、自分の心をなくさないでね。梓乃は自分の形で自分の願いを見つけて、梓乃の形でママの願いを守ってね」


「わかった! 梓乃は梓乃の考え方で、ママの願いを守って見せるよ!」


 今の自分は、ただリュッカ・エヴァンスと言う人物が志す願いを真似しているだけだ。

 自分の真の願いを、見つけられていないのだ。


「私は……私の、願いは……」


「俺にはお前と同じで記憶がない。お前は幼い頃の記憶をすべて失ってるが、俺にはここ二年の記憶しか残ってないんだ」


 初めて目覚めた時にいたのはまったくの赤の他人。

 その人に私は母親代わりだと言われて育てられ、契約者としての経験を積んでいった。


「そんな俺にも、目的がある。記憶を失う前の俺が志していたと言う魔王への復讐。俺の願いは記憶を取り戻すこと、志しているのは魔王への復讐だ」


 絶対に不可能と言われた、魔王討伐(ギルティ・キル)を志す黒音。

 死ぬかもしれないその戦いにしかし、黒音は明確な実感を掴んでいないのだ。

 ただ過去の自分が志していたからそれにそって行動しているだけ。

 戦いの中で、何度過去の自分に不信感を抱いたことか。


「ただ人の真似をして、授かった力の責任を背負えないなんざ、命を懸けてる契約者に対しての冒涜だ」


「冒涜……? 私はママの願いを守ってるんじゃなくて……冒涜してたの……?」


「梓乃……失望したぞ。俺は契約者として、同じ継承者として、お前を倒す。行くぞ相棒」


『おっけ、今の私、オツムにきてるよ!』


 両手に握られた神機の刃に、黒音の魔力が灯る。

 もう六芒星と再戦出来るほどの魔力は残っていない。

 だが契約者としての覚悟がない梓乃を、黒音は許しておけないのだ。


「ザンナ、クララ、俺の無理を聞いてくれ」


『任せて……俄然、やる気出た……』


『無敗の力を見せつけるやんね!』


 持てる魔力のほとんどを日本の剣に乗せ、黒音は梓乃の両肩に刃を乗せて一気に降り下ろした。

 梓乃の体に走る刀身が、梓乃の胸にバツ印を刻み込む。


「神機奥義、改〈千の紅刃と蒼刃ティスィチ・バグローヴィ・スィーニィ〉!!」


 焔の聖力を込めた一撃が〈無敵の紅蒼斬〉ならば、黒音はその真逆。

 魔力を込めた一撃が〈千の紅刃と蒼刃〉だ。

 焔の炎属性の力を込めた一撃とは異なり、黒音の場合は〈無属性の可能性〉と言う特性を持って属性の縛りをなくした。

 その為に、二つの神機の相性を高めたのだ。


「お前は……契約者に向いてな──」


「私の願いって……何なんだろう……」


「……バカな、無傷だとッ……!?」


 黒音の必殺の一撃を受けてもなお、梓乃は黒音に言われた言葉を何度も脳内で往復させている。

 確かに手応えはあった。だが梓乃の胸にはかすり傷一つ刻まれていない。


「わう、あれ……魔力の残留……? 今攻撃したの? 集中しすぎてわかんなかった……」


「これが、六芒星なのか……? いや、まだだ!!」


「ちょ、待ってよ!」


 まぐれかもしれない。今のは十分に魔力が乗っていなかったからかもしれない。

 黒音は再び二つの神機に魔力を乗せ、梓乃に切りかかる。


「やめてってば、私達友達でしょっ!?」


 黒音の剣撃をすべて身一つで受け止め、たまに左手でいなす。

 明らかに実力の差がありすぎる。

 暴走したから強いのではなく、暴走する前から強かったのだ。


「俺はお前みたいな奴に、契約者の世界にいてほしくない! どうせならお前は、普通の友達としていたかったんだ!!」


「私だって契約者でいたくなかったよ! どんなに辛かったと思う!? 不思議な力を持っているからって、私は友達にも、近所の人にも、私のママ以外の全員の人に虐げられた!」


 とうとう梓乃が反撃に出た。

 右手に持った神機、ヴァジュラで黒音の剣撃を一太刀で振り払う。

 たったそれだけのことなのに、簡単に黒音が吹き飛ばされた。


「私はママと違って、誰一人として受け入れてもらえなかったんだよ! その気持ちが……その気持ちが分かってたまるかぁッ!!」


 上下二振りの刀身が、怒濤の連撃を浴びせる。

 瞬く間に黒音の纏う甲冑に無数の傷跡が刻まれ、ほんの一瞬でも気を抜けばすぐに押しきられてしまいそうだ。


(ああ……これが梓乃の覚悟なんだ……ただ真似してたんじゃない……壮絶な思いを経験してきたんだ……でも俺は、そんか記憶さえ、ないんだ──)


 ついに魔力が底をつき、強烈な睡魔が黒音を襲う。

 契約者にとってのエネルギーは人間にとっての血液とほぼ同じ。

 つまりずっと血を吸われ続けながら、命を削りあっていると言うことなのだ。

 エネルギーが切れれば手先は痺れるし、睡魔も襲うし、酷い時は昏睡状態に陥って何日も目覚めない時がある。


「ぁ……ぐ……うぉ……っ」


『黒音、しっかりして……っ』


『黒音氏、もっと気張るやんねっ!』


 梓乃とヴァジュラの猛攻に耐えきれず、黒音の手からダーインスレイヴとクラウ・ソラスが弾かれる。

 黒音から手放されたダーインスレイヴとクラウ・ソラスが、人間の姿となって黒音を守るように梓乃と黒音の間に割り込んだ。


「黒音、長く持たない……っ」


「ザンナ氏、ウチがフェンリル氏の攻撃を防御するやんね! ザンナ氏は黒音氏に魔力を注入してやんね!」


「わかった……お願い、クララ……!」


 カールしたミルクティーカラーの長髪と、サファイアの瞳。

 蒼いワンピースの上からシンプルな胸当てと肩当て、そして甲冑のブーツと言う、とことん機動性を追求した最低限の装備だ。

 腰に下げられたクラウ・ソラスの魔剣を鞘から引き抜き、クララはその魔剣を逆さまに持ち替えた。


「無敗の防御に刮目するやんね! 〈無敗の剣壁アンビーダブル・シルド〉!!」


 剣から浮き出た防壁が、梓乃の攻撃を辛うじて防ぐ。

 クララは苦痛そうに顔を歪めながらも、ヴァジュラの刃を弾いた。


「黒音、早く私の魔力を吸って……」


「悪い……ザンナ……今度の休日は……スイーツ三昧だな……」


「その時は、また梓乃と行きたい……」


 ザンナから受け取った魔力で何とか意識を繋ぎ、フィディを引き寄せる。

 フィディも銀髪の少女の姿へと変身し、ザンナとともに梓乃に応戦した。


「ん……ぁ……? 漓斗……?」


「あら、お目覚めですわね」


 漓斗の腕の中で目を覚ました海里華は、次に視界に映った光景に目を見開いた。


「ぁ、黒音っ……!! 焔、アンタならなんとか割り込めないの!?」


「したいのは山々だけど、私もさっきので聖力がほとんど切れてるの……だからクララを貸したんだから」


「残念ながら、私も〈合体魔術〉の時に持てる零力をすべて使い果たしましたの」


 焔は纏う白い甲冑の所々が破損して消失している。

 焔の変身が解除されるのももう時間の問題だ。

 漓斗の純白のドレスは光の粒子が漏れだし、裾の方から徐々に消え始めている。


「あ、アクアス……後どれくらいの聖力が残ってる……?」


『ま、まさかエリちゃん、その体であれに割り込む気!?』


「消耗しきった今の黒音一人にあのドラゴンは重荷すぎるわ……」


 漓斗に体制を支えてもらいながら、海里華は自分の中にある聖力をかき集めた。


『それでも無理だよ! 第一戦闘に加われても今のエリちゃんじゃとても力になれない! それ所か足手まといになっちゃう!』


「じゃあ誰がこの状況を打破するのよ!? ──ぁぐっ……」


「無理なさらない方が身の為ですわ。もう変身も保てていないのに」


「くっ……どうして私は……こんな時ばっかり黒音の力になれないのよ……っ」


 今まで一度として、黒音の力になれた試しがない。

 これ以上迷惑をかけたくないから強くなろうとしても、思うようにいかない。

 出来るのは、ただ祈るのみだ。


「っ……黒音、勝てなくてもいい! 負けてもいいから、とにかく、死なないでッ!!」


「海里華……はは……負けてもいい、か……優しいな……でも……負けたら全部終わりなんだよ……梓乃にしても、お前にしても……契約者(汚れた世界)は似合わなすぎる……」


 瞳を閉じ、すべての感覚をシャットダウンする。

 仮死のような状態の中で、黒音は一つの光を感じる。


「なあアズ……いつかお前が俺に聞いてきたこと、覚えてるか?」


『それって……あなたの願いが何かってこと?』


「ああ、俺も人のこと言えないよな…… 記憶を取り戻すのはお前に提案してもらったこと、魔王を倒すのは記憶を持った以前の俺のこと……記憶を失ってから、俺はまだお前に最初の願いを言ってなかっただろ……」


『そだね、そう言えばまだ聞いてないよ。今なら特別に、なんでも聞いたげる』


「そうか……だったら、力をくれ。大層な力じゃない。海里華や梓乃、焔とか、友達や仲間を守れるだけの力でいい……もう梓乃みたいな子にこんな辛い世界を見せなくて済むだけの力を……俺にくれ……」


『……それをもっと簡潔に言うと?』


「俺に……皆を守らせてくれ……!!」


『ふふ……そっか……皆を守りたいんだね。じゃあ悪魔と契約するしかないかな』


「皆が守れるなら、俺の全部を持っていけ」


『契約成立……あなたのすべてをもらう代わりに私のすべてをあなたにあげる』


 ゆっくりと瞳を開くと、そこにあったのは見るも無惨なほどに傷つけられた神機や〈使い魔〉の姿だった。

 不思議と体は軽くなっており、頭の中もリセットされたように無駄な思考が綺麗さっぱりなくなっている。


「もう終わりなのか……? 少々、買いかぶり過ぎていたのかもしれんな……」


 墜落したコロナと優を両手に抱える白夜は、もう帰ってしまった。

 だが深影だけは依然、この場に残ってライバル候補の行方を見守っている。


「……皆、下がれ。フィディもザンナも休め。クララは焔の所に戻っていいぞ」


「あ……黒音……よかった……っ」


「黒音氏、目が覚めたやんね……」


「マスター……良いの、ですか?」


「ああ、無理もさせたし、心配もかけた。もう休んでくれ」


 全員の頭に順に手をおき、軽く微笑む。

 黒音の笑みに体の力が抜けたのか、全員がふにゃふにゃと崩れ去った。


「わか……た……後は、お願い……」


「焔氏……クララ、頑張ったやんね……」


「マスター、御武運を祈っております……」


 三人がこの場から消えると、黒音は素手のまま梓乃と再び対峙した。


「梓乃、お前の悲しみはよく理解した。でももう、十分じゃないか?」


「十分……? 記憶もない黒音君が……私の気持ちを理解したとでも言うの……?」


「違う。いくら傷ついたからって、他の人を傷つけるのはお門違いだ」


「口だけならなんとでも言えるよ……だったら腕尽くで私に分からせてみてよ。黒音君が正しいのかどうかを!!」


「お前を否定したのは謝る。俺自身、記憶を失ってからまだ自分で願いを決めてなかったからな」


「ほら、やっぱりね……誰も私の気持ちを理解してはくれない……私はフィルとセリューがいればそれでいい……」


 梓乃の体と梓乃の背後の輪からとめどなく電流が溢れる。

 溢れだした電流はすべてヴァジュラへと注がれ、梓乃は必殺の構えをとった。


「神機奥義……〈雷神咆哮(インドラ・ブレス)〉──」


 梓乃の背後にある輪が梓乃の真正面に現れ、その中心に強烈な電流が帯電される。

 風を切って高速回転する輪が十分に電流を蓄えて、梓乃はヴァジュラを大きく振りかぶり、輪の中心に蓄えれた電流に向かって一気に投げた。

 槍投げのように一直線に放たれたヴァジュラは、電流を蓄えた輪を通って電流の矢となる。

 輪を突き抜けたヴァジュラは〈竜の咆哮〉のように強大なエネルギーを持って、黒音へと突き進んだ。


「黒音ッ!! 避けて──ッ!!」


 背後から海里華のつんざくような悲鳴が響き、一瞬にして視界が眩い光に包まれる。

 不思議と怖くはなかった。だって、自分はこんな所で終わるはずはないと確信していたから。


「アズッ!! 俺達の力を見せるぞッ!!」


『任せてッ!! 盛大に行くよ黒音ッ!!』


 二人が息を合わせると同時に、黒音の纏う黒い甲冑に刻まれた蒼いラインの結合部が大きく開いた。

 すべてのパーツが細かく分裂し、蒼い防壁が梓乃とヴァジュラの神機奥義を受け止める。


「なっ、あり得ないっ……私の最大必殺技が、止められたッ!?」


 蒼いラインが金色に染まると、黒い甲冑が薄紫色の光を帯びる。

 背中の黒い羽にも薄紫色の光が帯び、形状そのものを変化させた。

 形状は天使の翼そのもので、その羽一枚一枚がフィディのような鋼の翼へと変身している。

 やがて変化が一通り終わる頃には、梓乃の放った神機奥義は完全に消失していた。


「ふ……これだから不確定要素は飽きないのだ」


 甲冑は光を帯び、甲冑の結合部は金色に染まっている。

 短剣の刃が密集したような鋼の翼は、外見に似合わず柔軟な動きで風を打った。


「まさかあれ、リミットブレイクの片鱗……? 嘘でしょ……? あんなに消耗してたのに、ここにきてとんでもない才能を開花させたわね……」


「す、凄い……黒音の魔力が、半端ないスピードで増幅してる……」


「火事場の馬鹿力、と言うやつですわね。ですがまさか、その馬鹿力が〈限界突破〉の片鱗とは……」


 契約者には、絶対に越えられない壁が二つある。

 己の限界を貫くものと、完全を極めるもの。

 己の限界を貫くものは、それぞれ契約者に設定されたリミッターを解除した時にだけ得られる力だ。

 戦闘力が二、三倍に膨れ上がるのはザラ。

 死なない為、壊れない為に設定していたリミッターを取り払うのだ。

 その契約者の本来持てる力を限界を越えて発揮する。

 それがリミットブレイクだ。

 黒音が今発動しているのはその片鱗。

 くすぶっていた力がほんの少しだけ見え隠れしている、極めて不安定な状態。

 しかし不安定な状態でさえ、リミットブレイクの威力は凄まじい。

 先ほどまで風前の灯だった黒音の魔力は普段の全開を軽く通り越し、優と戦っていた時に発揮していた力とも比にならない。


「これなら、行ける……梓乃、俺はお前のすべてを受け止める!!」


「誰も分かってくれない……誰も受け入れてくれない……だったらいっそ……すべてを消し飛ばす!!」


 ぱっと見れば両者のエネルギー量は互角。

 戦闘力も互角と見ていい。この勝負の勝敗を分けるのは、どちらの願いと根性が勝るか。


「来やがれ、〈破滅の杖(レーヴァテイン)〉!!」


 黒音に呼び寄せられたそれは、盾の形をしていた。

 九つの錠がはめ込まれた盾は、黒音の左腕に装着された。

 白銀の円盤に九つの錠がはめ込まれた盾の名は、レーヴァテイン。

 武器系の神機、剣系の神機の中でも史上最悪と謳われる魔剣だ。

 黒音が鎖の刻印が刻まれた一つ目の錠の鍵穴に、レーヴァテインと同時に出現した白銀の鍵を差し込む。

 鍵穴に差し込まれた鍵には異質な魔力が宿り、黒音はその鍵で一つ目の鍵穴に魔力を注入した。

 魔力の宿った鍵を右に捻ると、突如止めどなく魔力が溢れた。

 強大な魔力の発生源は、勿論鍵の差し込まれた鍵穴からだ。

 注入した魔力が何十倍にもなって返って来た。

 溢れだした魔力は細長い形となり、黒音の右手に集合する。

 

「しかし驚いたぜ……まさか本体がこの剣で、最初に現れたこの盾は本体を収納するケースみたいな役割なんだな」


「私もその魔剣の構造は知らない。なにせ、フィル達〈終焉の悪戯〉は全員その魔剣の構造を教えられていないから」


「だろうな。構造を知ってたらブレーキの意味がねえだろ」


 魔力の終息が収まり、その本体が姿を現した。

 日本刀のような滑らかな反り具合と、従来の長剣よりも長めの刀身。

 燃え盛る炎のような刃紋は、創造主の性格が滲み出ている。

 広い平地には、アイスランド語でLævateinn(レーヴァテイン)と刻まれていた。

 常に狡猾な性格で、ずば抜けた知能と勝負師の才能を持って神を騙してきたとされる終焉の神。

 神々の黄昏を望み、歯車を狂わせることでしか生きていくことの出来ない、切なき神の名はロキ。

 相手のことを考えず、ただ騙して嘲笑うだけのロキは、自分の創造した命に関してはどこまでも考えていた。

 だからこそ造り出されたのがこの剣、レーヴァテインだ。


「持てる者には無意味……持たざる者には真価を……〈終焉の悪戯(ロキ・ザ・ミスチフ)〉の〈最終個体(クローズナンバー)〉……梓乃、お前ならこれが何か分かるんじゃないか?」


「レーヴァテイン……フィルの産みの親が造り出したと言われる魔神殺しの剣……」


「そう、これはお前ら魔神が暴走した時にとお前らの産みの親がブレーキとして造った神機だ。これでお前を止める!!」


 レーヴァテインのへこんだ部分に鍵をはめ込むと、黒音は梓乃の真正面に突っ込んだ。


「なっ……特攻……!?」


 最初の攻撃は流れを作る為にも、相手の予想を上回ることが大切だ。

 だがその予想に止まり、虚を突けなければ流れは持っていかれる。

 だからと言って愚直に真正面に攻め込むのは、諸刃の剣に他ない。

 しかしそれが見事相手の虚を突くことが出来れば、最良最低限で懐に入ることが出来る。


(だからって、じり貧手前の魔力と体力で普通真正面から突っ込む!?)


 黒音は実質二回もの戦闘を挟んでいる。

 一度目はチーム〈tutelary〉のメンバー二人。

 二度目は人の姿に変身する前のフェンリル。

 三度目は何十倍にもパワーアップしたフェンリルこと梓乃だ。

 チーム〈tutelary〉だけでも満身創痍になっていてもおかしくない。

 それに加えて長期戦となったフェンリルとの爆発防衛戦。

 立っている所か生きていることが不思議な死線を潜っている。

 それを踏まえて、無策と思われても仕方のない動き方。


「レーヴァテイン、神機奥義!!」


「なっ……まさかヒットアンドアウェイ……!?」


 レーヴァテインを逆手に持ち替え、コインを弾くような手つきで切っ先を摘まんだ。

 ほんの一瞬のタイムラグをおいて、切っ先を摘まんでいた指を弾いた。


「食らいやがれ!! 〈白銀の逆太刀アルジェント・リバース・スパーダ〉!!」


 切っ先に溜め込まれた威力が、一気に放たれる。

 途中で加速する斬撃をしかし、梓乃は白刃取りで受け止めた。


「そう来ると思ったよ!! 神機奥義!!」


「二つ目ですって!? 本来神機で可能な必殺技は一つだけのはず……二つ目があっても、それは他の技と組み合わせて初めて出来るもの……他の技と組み合わせもなしに二つ目など、あり得ませんわっ……!?」


 型破り、と言う域を超えている。

 今度は左手に持ち替え、単純に斜めへ降り下ろした。

 当然梓乃はヴァジュラで受け止めたが、そこからが二つ目の神機奥義、真骨頂だった。


「ふぇ、あれっ、レーヴァテインが、ないッ!?」


 ヴァジュラで受け止めたはずのレーヴァテインが、いつの間にか黒音の左手から消失していたのだ。

 そして突如、左の横腹に痛みを感じた。


「う、そ……なんでレーヴァテインが……私の左側に……っ」


「詰めが甘いぜ……〈白銀の消滅アルジェント・バニシング〉……!!」


 ヴァジュラで受け止めたはずのレーヴァテイン。

 しかしヴァジュラが受け止めたのはレーヴァテインの峰の方だ。

 そしてヴァジュラが受け止めたと思われたレーヴァテインはヴァジュラの刃にぶつかったことで回転し、一回転したレーヴァテインを右足で蹴ることで梓乃の左側の脇腹に切り込んだ。

 蹴っただけなのに何故梓乃の鎧を突き抜けて脇腹に切り込めたのか。

 それがレーヴァテインの特性と言うわけだ。


「ふ……ふふふ……詰めが甘いって……? そんな神機の性能に頼りきった戦い方の方が……極甘だよッ!!」


 ヴァジュラの柄を口にくわえると、梓乃は背中の輪から大量の電流を放出した。


「こうなれば私の独占場!! 〈雷電領域(ボルテクス・ゾーン)〉!!」


 黒音と梓乃のいる空間だけを、電流の檻が囲った。

 そしてそれは、黒音が蜘蛛の巣にかかったことを意味する。


「マズいッ……梓乃は肉体を電流に変えられる……あの空間の中じゃ、梓乃は自由自在に異動出来る……!!」


「そ、それって……無制限に瞬間移動出来るってこと!?」


「それだけではありませんわ……恐らくあの空間は自由に動き回るだけではありません……多分──」


 梓乃の攻撃をレーヴァテインで受け止めた黒音が、力負けして後ろに押される。

 そして電流の壁に触れた瞬間、黒音は感電するでもなく、膝を折った。


「なん、だこれ……? 力が、吸われるッ!?」


 今の今まで、誰も見たことのないヴァジュラの特性(・・)

 闇を許さぬ聖なる稲妻は、闇が近づくことを絶対に許さない。

 悪魔と死神に限り、インドラの神機は真の力を発揮する。


「吸われてるんじゃないよ。打ち消されてるの。このヴァジュラはね、標準の性能も破格なんだけど、それを半減させちゃうくらい特性が限定的なの。だからこそ、真の力を発揮出来た時はどの神機よりも高い性能を発揮する」


 魔を打ち消す檻にはりつけにされ、黒音は初めて思い知らされる。


「あんまり甘く見ないでよ。私は魔神殺しの剣なんかでやられるほど、柔じゃないよ」


 梓乃は消耗する所かテンションを上げる一方。

 対して黒音は連戦の疲れもあり、序盤こそ神機奥義で押していたものの、そう何度も通用する相手ではない。

 実際、切り込んだはずの横腹はもう完治している。

 いくら浅かったとは言え、自然治癒のスピードがあまりにも早すぎる。


「レーヴァ、テイン……っ」


 初めて神を呪った。実際には初めてではない。

 記憶を失う前に、何度も呪っただろう。

 努力すれば、死ぬ気で食らいつけば、勝てない勝負はないと思っていた。

 だから記憶を失った今でも、魔王に挑もうとしている。

 だが気づいてしまった。

 天才と凡人が同じ量の努力をして、勝つのはどちらかと聞かれれば無論、天才なのだ。


『それは違います……』


(……誰だ、お前……どっから俺に、話しかけてる……)


『私は白銀……破滅の杖です。例えする努力が同じでも、才能の差があったとしても……必ずしも天才が勝つとは限らないと、教えてあげましょう』


 急激なスピードで打ち消されていく魔力のせいで意識が朦朧とする中で耳にした、幻聴のような声。

 それが初めて聞くレーヴァテインの声だと、後々になって気づくのだった。

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